日本フィル・第299回横浜定期演奏会

昨日の土曜日、余り気乗りしないものの折角会員ですから日フィルの横浜定期に出掛けました。プログラムはこんな具合。シェークスピア生誕450年に引っ掛けたプログラムでしょうか。

チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
グリーグ/ピアノ協奏曲
     ~休憩~
プロコフィエフ/バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より
 指揮/西本智実
 ピアノ/田部京子
 コンサートマスター/物集女純子
 フォアシュピーラー/斎藤政和
 ソロ・チェロ/菊地知也

演奏家の人気とは良く判らないもので、この演奏会は早々とチケットが完売になっていました。人気の指揮者とピアニストの共演ですから当然なのでしょうが、ラザレフでもインキネンでも完売になることのないシリーズ、世の中は不思議に満ちています。頼まれればチケットを譲りたいくらい。
ということで単に記録だけにする積りでしたが、演奏会は行ってみなければ、聴いてみなければ判らないものです。大変な収穫がありましたヨ。

冒頭のチャイコフスキーはコンサート・オープナー。これほどの作品になるとオーケストラ側で創ってしまうのでしょう、シンバルの福島喜裕の名人技が最大の聴きどころ。
続くグリーグは田部京子のピアニズムを久し振りに堪能。人気者だけに歓声も一入でした。確かに素敵なグリーグに耳を洗われる想い。

そしてビックリはプロコフィエフです。普通プロコのロメジュリと言えば組曲を指し、指揮者によって組曲から難曲かを適宜組み合わせるのが普通のプログラムでしょう。
今回もテッキリそのスタイルと思い込み、事前のプレトークもパスして席に着いたのですが、改めてプログラムを開いてみると、何とバレエ全曲版から西本が自ら選曲・構成した「西本智実版」での演奏とのこと。シマッタ、甘く見ていたかも。

なるほど休憩が終わると楽譜係が運んできた譜面は、あのカーマスの電話帳みたいな2冊。組曲じゃないんだ!!

プロコフィエフのロメオとジュリエット全曲盤は、個人的にはマゼールがクリーヴランド管に就任早々に録音したLPで初めて接しました。それを聴き、組曲版とは全く異なる音楽に驚愕したものです。
その後ヤマハにカーマスの全曲譜が並んでいるのを見つけ、値段もロクに見ずに買ってしまったものです。それ以来マゼール盤を聴くとき以外には開くことが無かった分厚いスコア、長い間本棚で埃を被っていましたね。それを引っ張り出すときが来た。

今回西本が選曲・構成したのは次の通り。
第1幕
 第7曲 大公の宣言
 第10曲 少女ジュリエット
 第11曲 客人たちの登場
 第12曲 仮面
 第13曲 騎士たちの踊り
 第16曲 マドリガル
 第19曲 バルコニーの情景
 第21曲 愛の踊り
第2幕
 第35曲 ロメオはマーキュシオの死の報復を誓う
 第36曲 第2幕の終曲
第3幕
 第46曲 ジュリエットの寝室
第4幕
 第51曲 ジュリエットの葬式
 第52曲 ジュリエットの死

組曲でも取り上げられているピースも含まれていますが、組曲版とはほとんど違う音楽として良いでしょう。第一に楽器編成も異なります。特に金管がそうで、組曲はホルン4、トランペット3(うち1本はコルネット)で済みますが、前曲ではホルン6本、トランペット3本+コルネットが必要。
実際ホルンは6人がズラリと並びましたし、トランペットの1番はオットー、コルネットは橋本氏が見事にソロを吹いていました。最初の有名な大公の宣言にしても、ホルンは組曲なら4本だけなのに対し、今回は第2小節目から5番と6番も加わって轟音を轟かせるのでした。

西本の判断で変更した個所もあったようで、第35曲から第36曲に繋がる個所の和音連打は、楽譜では組曲版と同じ15発ですが、今回はもっと減らして(4~5発でしたっけ)いましたネ。

いつものロメジュリを聴く積りだった客席も戸惑った様子。“エッ、今のがロメオとジュリエット?”という感じで、最後の拍手もタイミングを失した感じ。私としては実に痛快な思いで西本版を楽しみました。

拍手を制してアンコールが告げられましたが、簡単な解説を添えて演奏されたのは、第1幕第18曲のガヴォット。西本さんは古典交響曲とは80パーセント同じ、と紹介していましたが、実際には20パーセントしか同じ部分は無く、シンフォニーより3倍も長いもの。
これを譜面は伏せ、暗譜で振っていましたから、西本氏のこの作品に対する思い入れの深さが判ろうというもの。演奏時間も2時間半に近く、指揮者の熱意が選んだプログラムに納得です。

ロシアのバレエ音楽を得意とする指揮者を、改めて見直した演奏会でした。

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