ヴァリアン師の快進撃
ハロウィーン前日の木曜日、フランスのサン=クルー競馬場でG戦が3鞍行われました。馬場は soft ですが、天候には恵まれて快晴だったようです。
最初は未だ歴史の浅いクリテリウム・インターナショナル Criterium International (GⅠ、2歳牡牝、1600メートル)。フランス風にアンテルナシオナルと読むべきでしょうか? 9頭が出走し、メンバー中唯一の牝馬ながら前走トーマス・ブライアン賞(GⅢ)を圧勝したアーレア・ヤクタ Alea Iacta が6対5の1番人気。
レースは、4頭が参戦した英国馬の1頭マスター・アプレンティス Master Apprentice が逃げ、アーレア・ヤクタは先行から絶好の位置で勝負所を迎えましたが、意外や前走の伸びを欠き、5着敗退に終わってしまいました。やはりGⅠ戦での牡馬相手は荷が重かったのでしょうか。
優勝は中団に待機し、残り1ハロンで突き抜けた2番人気(19対5)のヴェール・ド・グレース Vert de Grece 、後方から追い込んだ2着ジョニー・バーンズ Johnny Barnes (109対10、5番人気)に4馬身差を付ける圧勝でした。英国馬のワン・ツー・フィニッシュ。4分の3馬身差3着には235対10(7番人気)のドイツ馬シャーロック Sherlock がやはり後方から追い込んでいます。
勝ったヴェール・ド・グレース、前走は8月カラーのフューチュリティー・ステークス(GⅡ)でグレンイーグルス Gleneagles の2着でしたが、その時小欄はヴァート・ド・グレースと表記しました。しかしここはフランス風にヴェール・ド・グレースと訂正しておきましょう。馬名は「ギリシャの緑野」とでも言う意味でしょうが、父ファーグラス Verglas からの連想でしょう。父と同じ芦毛馬。
同馬を管理するのはロジャー・ヴァリアン師。今期は秋になって絶好調、アンドレア・アトゼニ騎手とのコンビでセントレジャーをキングストン・ヒル Kingston Hill で、翌日にはモイグレア・スタッド・ステークスをカーソリー・グランス Cursory Glance で、そして先月もベラード Belardo でデューハースト・ステークスとGⅠ戦を次々と制覇、師の快進撃は止まりません。今回は日本でもお馴染みのウンベルト・リスポリが手綱を取っていました。これはあくまでもオーナーとの関係。
実はヴェール・ド・グレースは前走までジョセフ・マーフィー厩舎が管理していましたが、オーナーが代わったのを機に転厩、2走前にレパーズタウンで初勝利を挙げ、これで4戦2勝2着2回となります。このレースはダラカニ Dalakhani 、バゴ Bago と短い歴史ながら2頭の凱旋門賞馬を出しており、ヴェール・ド・グレースも来年の2000ギニーに20対1のオッズが出されました。3代母は愛1000ギニー馬トラステッド・パートナー Trusted Partner と、文句ないクラシック・ファミリーでもあります。
続いてはフロール賞 Prix de Flore (GⅢ、3歳上牝、2100メートル)。12頭が出走し、未だレース経験の浅い5歳馬フェイト Fate が29対10の1番人気。
ハネーサックル・ローズ Honeysuckle Rose が逃げましたが、ペースが速かったのか追い込み馬同士での決着。後方を進んだ本命フェイトが、これも後方から伸びた5番人気(67対10)のボカユーヴァ Bocaiuva にハナ差で優勝。3着も頭差で中団を進んだ2番人気(39対10)のスパークリング・ビーム Sparkling Beam と、3頭の写真判定に持ち込まれる接戦でした。
勝馬を管理するアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ師は、管理馬をブリーダーズ・カップに参戦させているため渡米中。ステファン・パスキエが騎乗していました。
フェイトは4歳デビューの奥手で、その年は3戦1勝でコリダ賞(GⅡ)2着。今年は4月にロンシャンの条件戦(very soft の10ハロン)に勝ち、2年連続で挑戦したコリダ賞は12頭立ての最下位。そのあと休養し、前走サン=クルーのリステッド戦(ダリア賞)ではスパークリング・ビームの3着していました。今回は結果3着のスパークリング・ビームより人気になっていたのは、叩かれての良化が期待されていたためでしょう。
最後はパース賞 Prix Perth (GⅢ、3歳上、1600メートル)。13頭と頭数が揃い、条件戦ながらファーブル厩舎で2連勝中のロード・オブ・ザ・ランド Lord of the Land が4対1の1番人気。
フロール賞は追い込み馬同士で決着しましたが、こちらは何と11番人気(217対10)のフラミンゴ・スター Flamingo Star の逃げ切り勝ち。1馬身4分の1差で9番人気(135対10)のピントゥリッチオ Pinturicchio が後方から2着に追い込み、2番手を進んだ6番人気(112対10)のヴィソリーナ Visoriyna が3着と大荒れでした。ロード・オブ・ザ・ランドは中団待機も全く伸びず11着大敗、2番人気ケンホープ Kenhope も12着、3番人気ダライーナ Dalayna も8着と、人気馬は総崩れです。
勝ったフラミンゴ・スターは、ドイツのワルデマール・ヒックスト厩舎、アレクサンダー・ピエチュ騎乗の4歳馬で、前走ドイツのGⅢを3馬身差で圧勝しての挑戦、人気の盲点だったのでしょう。ジョッキーによれば、重馬場は滅法強いとのことでした。
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