今日の1枚(198)

NMLで配信中のEMI盤「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズ、二人目はアルトゥーロ・トスカニーニです。恐らくアイウエオ順に並んでいるのでしょう。
トスカニーニについては3年前まで更新していた「今日の1枚」で連続して取り上げてきましたが、EMIから出た2枚組は全てこれまで紹介してこなかった演奏です。そこがこのシリーズの特色でもありましょう。

2枚組なので1枚づつ聴くことにして、1枚目は以下のラインナップ。いずれも手兵だったNBC交響楽団を指揮したものです。

①ベルリオーズ/序曲「宗教裁判官」
②ブラームス/交響曲第4番
③ドヴォルザーク/交響的変奏曲
④プッチーニ/歌劇「マノン・レスコー」第3幕間奏曲

ザット見て驚きますが、ブラームス以外は“そんな録音があったのかァ~”と思うものばかり。そのブラームスも以前に取り上げたRCA録音とは異なる音源でした。データが無いので、これらが録音された経緯は判りません。
聴いた限りの印象では、どれも巨匠晩年(1950年代)のものではなさそうで、音質はやや古さが感じられます。しかし聴き辛いものは無く、慣れてしまえばトスカニーニを満喫するに十分なモノばかり。新しい発見に感動してしまいました。

①はNBCの公開演奏会の一つでしょう、最後には拍手が入ります。トスカニーニのベルリオーズではこれまで知らなかったレパートリーで、気迫漲る名演。

②は上記の様に1951年録音を「今日の1枚」(162)で取り上げましたが、それとは明らかに別テイク。録音はやや落ちますが、演奏のレヴェルは同様に高いもの。前回の注目点として、
(1)コントラファゴットを第1楽章でも使用していること
(2)第4楽章のトロンボーンを1拍後にずらせていること
を挙げましたが、今回のものは(1)はスコア通りコントラファゴットは使わず、(2)は同様の処置を施しています。これで二つの録音が別物であることが判ります。最後に拍手。

③もトスカニーニのレパートリーとしては初めて聴きました。交響的変奏曲は現在では余り演奏される機会が無いようですが、ドヴォルザークの時代には人気曲の一つでした。個人的には大好きな作品で、これがトスカニーニで聴けるのは大きな喜びです。
主題と27の変奏にコーダが付くという20分弱の曲ですが、変奏毎にトラックを付けていないので、全体を一気に聴けるのが便利。配信ではトラックとトラックの間に僅かな空白を生じてしまうので(現時点では技術的に解決できない由)、これは有難いですね。

演奏も、特にフィナーレの推進力は凄まじく、何度か訪れるクライマックスは真にスリリング。何故この曲が演奏会から遠ざかってしまったのか不思議なほど。テンポも極めて速く、恐らく演奏時間20分を切るのは新記録じゃないでしょうか。
因みにNMLではマーツァル、クチャル、サージェント、マッケラス、オルソップ、ネーメ・ヤルヴィ、ガンゼンハウザーが聴けますが、どれも20分以上かかります。

これも最後に拍手がありますが、取って付けたような古い音質。

④トスカニーニはプッチーニを余り評価していなかったので、これも珍しい部類でしょう。確か「ラ・ボエーム」の第3幕以外は下品だ、と言って憚らなかったと記憶します。
音質には少し古さを感じますが、トスカニーニがいくつか手を入れている個所があるのが面白い所。

その第一は、練習番号「2」の1小節前のハープの下降音型を逆に上向に変えてしまいます。これで一層感情が高まる印象。
第二に、練習番号「3」から「4」までの movendo e crescendo 、12小節間に亘ってコントラバスのアウフタクト連続にティンパニを加えて強調しているのは、如何にもトスカニーニ。プッチーニに“これで少しは良くなっただろう”と言っているみたいでした。

これもライヴと思われますが、拍手はカットされていました。

参照楽譜
①オイレンブルク No.618
②フィルハーモニア No.133
③オイレンブルク No.1304
④リコルディ P.R. 113 (歌劇全曲版)

 

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