今日の1枚(197)
前回に続いて「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズ、アルヘンタ編の2枚目を聴きます。こちらも2曲がカップリングされており、
①シューベルト/交響曲第9番ハ長調「ザ・グレート」
②ファリャ/バレエ音楽「恋は魔術師」
ところでアルヘンタは未だこれからという時に亡くなりましたが、死因は大好きだった自動車のエンジンを密室状態で蒸かしたまま眠り込んだことによる一酸化炭素中毒だった由。事故と言っても不注意から来るもので、コメントのしようもありません。
デッカは彼の指揮でウィーン・フィルとブラームス交響曲全集を録音する直前、段取りは全て済んでいたため、急遽クーベリックを代役として全集を完成させたのでした。
さて2枚目、①は1枚目のラヴェルと同じく、オーケストラは Orchestre des Cento Soli 。ラヴェルと異なるのはレッキとしたステレオ盤であること。音質もかなり良いもので、チョッとした驚きでした。
ザ・グレートの番号は様々な表記がありますが、このCDでは昔ながらの第9番が採用されており、それに従っています。
冒頭のホルンの音色は如何にもラテン系のホルンで、私が子供の頃に聴いたパリ音楽院管弦楽団のホルンを思わず思い出してしまいました。最早現在では聴けなくなったメロウな音色が楽しめます。
繰り返しは、第3楽章主部の前半と、同じくトリオ部の前半のみ実行し、他は省略。これが当時では常識的な扱いでしたし、私は現在でも全て実行するようなスタイルは好みじゃありません。従ってOKですね。
②はモノラル録音で、オーケストラはパリ音楽院管弦楽団。歌が入りますが、アナ・マリア・イリアルテ Ana Maria Iriarte という人。
ところでNML配信の表記には「抜粋」と書かれていますが、聴いてみれば判るように、これは全曲カットされることなく収録されています。恐らくオリジナルのEMI盤にそう表記されているのでしょう。
そこで謎が出てきます。実はこの録音、NMLの補刊第1巻に初登場したもので、初出は欧コロンビアの3枚組6面のSP盤 LFX 980/2 でした。そしてこのセットは第3曲(魔法)、第6曲(漁夫の物語)、第16曲(終曲)がカットされたものだった様です。そもそもこの作品、改訂稿では全13曲となっていて、終曲が第16曲なのは初稿ですから、第16曲がカットというのは初稿による演奏だったということかも知れません。
いずれにしてもこのSP録音は後にLP(CC 1004)でも再発されましたし、日本でも昭和30年に日本コロンビアから発売された記録が残っています。その録音を聴いたことが無いので何とも言えませんが、
(1)当初は全曲録音だったが、SP盤の収録時間の関係で3曲がカットされた。
(2)今回リリースされたものはSPとは別物で、同じ演奏者による再録音が行われた(この際は改訂稿が使われた)。
ということが考えられます。実際に音を聴いてみると、モノラルではあるものの音質は極めて良好で、SPからのダビングとは思えません。
まぁ、データが見られない以上は想像するしかありませんが、謎は謎として残しておく方が楽しいかも・・・。演奏自体はスペインの土臭さというより、気品すら感じさせる仕上がりになっていると思いました。
アルヘンタの録音では、この他にデッカにベルリオーズの幻想交響曲、ロンドン響との「エスパーニャ」と題したスペインをテーマにした作品集があって、何れもデッカの「ザ・クラシカル・サウンド」でCD化されています。
私はどちらもゲットして手元にありますが、ユニヴァーサル・グループは未だNMLに参加していませんので、当面はCDを聴いて楽しむことにしましょう。
参照楽譜
①オイレンブルク No.410
②チェスター J.W.C. 41 (改訂版)
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