今日の1枚(142)
手元にあるメンゲルベルクのCD、最後の1枚はチャイコフスキーです。前回に続きテレフンケン原盤をナクソスがCD化したセッション録音。
なおナクソスはこの他にも何点かヒストリカルとしてメンゲルベルクを発売していますが、私が買ったのはブラームスとチャイコフスキーのみでした。
①チャイコフスキー/交響曲第6番
②チャイコフスキー/弦楽セレナーデ
当盤の品番は 8.110885 で、2004年の新譜。
録音データは、①が1941年4月22日、②は1938年11月7日。もちろんコンセルトへボウでの収録で、当盤の復刻プロデューサーは Mark Obert-Thorn 、ブラームスとは別のエンジニアです。
ブックレットの解説はブラームスと同じ Ian Julier 、英語解説のみ。
SP盤初出は、①がテレフンケンの SK 3176/80 の5枚10面、一方②は SK 2901/3 の3枚6面でした。当盤ジャケットにはマトリクス番号も表記されていますが、それは省略。
これまた当時としては優秀録音で、特に低音部の物々しさはライヴ録音では聴かれなかったレヴェルのもの。特に悲愴の冒頭は戦前のオーディオ・ファンから大歓迎されたのではないでしょうか。
チャイコフスキーは、ベートーヴェン、マーラー、リヒャルト・シュトラウスと並んでメンゲルベルクが最も得意とした作曲家で、テンポ・ルバートが独特です。詳細についてはイチイチ書けません。
それでもいくつか気の付いたことをメモすると、
①では、第1楽章・第2主題のアーティキュレーションに注目。スコア通りに演奏すれば“ファミレ・シラファラ・・・”と下降するのですが、メンゲルベルクは最初の音をほぼ2倍に引き伸ばす。その結果、“ファーミレ・シラファラ・・・”と聴こえます。
この主題が出るときは、全てではないものの常に同じ処理。
あと第1楽章では、160小節のファゴットをバス・クラリネットに変更。これは誰が始めたことか不明ですが、既にメンゲルベルクもフルトヴェングラーも実行していたことが確認できます。
第2楽章の繰り返し。中間部の前半だけは何故か省略されます。
第4楽章では、残念ながら練習記号K以降のホルンのゲシュトプフ奏法がほとんど聴き取れません。まるで音を出していないようにも聴こえますが、さすがのテレフンケンの最新技術をもってしても収録不可能だったのでしょうか。
一箇所だけ登場する銅鑼の音は、ロシア風というよりは中国風に聴こえるのも微笑ましい感じがします。
②はカットが目立つ録音。列記すると、
第1楽章の序奏、30小節の後半から32小節の前半までの2小節分。
第2楽章はスコア通りですが、第3楽章は5~8、113~116、121~127、148~151小節の4か所をカット。
更に大胆なのは第4楽章で、132~167、200~215、232~259、344~363、416~420、430~437小節の6か所に鋏を入れています。
これだけカットが続くと、スコアを見ながら聴くのはストレスが溜まります。あらかじめ楽譜に目印を付けておかないと、精神衛生上よくありませんね。それならスコアなど見ずに聴くのが利口でしょう。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.64
②オイレンブルク No.857
以上、手元のメンゲルベルクには楽譜に拘りながら一通り耳を通しました。丁度2010年も大詰めを迎えましたから、これで今年の「今日の1枚」は終わることにします。
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