今日の1枚(203)
クリュイタンスの2枚目も様々な音源から集めたもので、特に統一感は感じられないディスク。
①シューマン/「マンフレッド」序曲
②ベルリオーズ/幻想交響曲
③ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
④ムソルグスキー/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」~戴冠式の場
クリュイタンスはラテン系の指揮者ながらドイツ音楽にも造詣が深く、ベルリン・フィルやウィーン・フィルを指揮し、それらとの録音も残しました。①はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したモノラル録音で、私は初めて聴きました。
同じシューマンの第3交響曲もベルリン・フィルと録音していて、そちらのCDは手元にあります。恐らく同じころのテイクで、資料はありませんがLPではカップリングされていたのではないでしょうか。第3交響曲のデータは、
1957年2月2・4・5日、ベルリンのグリュネヴァルト教会での録音。プロデューサーは Fritz Ganss 、エンジニアが Horst Lindner とクレジットされています。序曲と交響曲を聴き比べてみましたが、雰囲気はほとんど同じ。これとほぼ同じ次期の録音でしょう。1957年のモノラルですから、ステレオ前夜。
クリュイタンスとベルリン・フィルはこのあとベートーヴェンの交響曲全集に着手し、第6番以外は全てステレオで収録しています。完成した所で唯一モノラルだった第6をステレオで再録音し、それが一般にベルリン・フィルによる最初のベートーヴェン交響曲全集として世に出たのでした。因みにこの全集もNMLで聴くことが出来ます。
マンフレッド序曲はフルトヴェングラーとは違ってスコアには一切手を入れず、オリジナルのオーケストレーションでの録音。EMIらしくホール後方で聴く感じに捉えられています。
クリュイタンスは幻想交響曲をモノラル(フランス国立管)とステレオ(フィルハーモニア)の2種類残していますが、何れも手兵との録音ではありません。ここで聴ける②はパリ音楽院管弦楽団とのステレオ、しかもライヴ録音で、恐らく日本公演の音源でしょう。
手元にCDが無いので判りませんが、1964年5月の大阪公演(1日、フェスティバル・ホール)か、東京公演(10日、東京文化会館)の放送録音でしょう。よくこういうものが残っていたという印象で、録音も当時としては優秀です。繰り返しは全て省略、第3楽章のオーボエは舞台裏ではなく、オケの中で吹かれているように聴こえました。日本の聴衆の静かなことも驚き。
③はパリ国立歌劇場管弦楽団とのステレオ録音で、同じコンビによる同曲がテスタメントからも出ています。テスタメント盤のデータは、1959年6月、パリのサル・ワグラムでの収録で、プロデューサーは Rene Challan 、エンジニアは Walter Ruhlmann となっています。
ところがこの2つを聴いてみると、全く別の音源であることが判ります。終結が大音量で終わる編曲版を使用しているのは同じですが、弦楽器の配置が違いますね。テスタメント盤は普通にアメリカ指揮の配置ですが、「20世紀の大指揮者たち」シリーズの方はバイロイト方式。低弦は下手に位置し、ヴァイオリンは第1も第2も中央から聴こえてきます。2種類の録音があることを初めて知りました。
クリュイタンスはヴィーラント・ワーグナーに乞われてバイロイトに登場しましたが、若きソプラノでワーグナーの「良い人」でもあったアニア・シリアと恋仲になり、3角関係の縺れからバイロイトは数年で辞退することになったそうな。テスタメント盤の解説、マイク・アッシュマン Mile Ashman のライナー・ノーツで知って吃驚仰天したものです。
④はパリ音楽院管弦楽団を指揮したステレオ録音の抜粋で、主役はボリス・クリストフ Boris Christoff (バス)、チラっと登場するテノール役はジョン・ラニガン John Lanigan 。合唱はソフィア国立歌劇場合唱団です。これもデータが無いのでこれ以上は判りませんが、この録音は確かEMIのグレート・レコーディング・シリーズで復活した記憶があり、いずれNMLで全曲盤が聴けるようになると思います。
四方八方から鐘の音が響く個所、やや籠り気味の録音ですが、現在の電子音に似た音の鐘が登場するのを面白く聴きました。
参照楽譜
①オイレンブルク No.646
②オイレンブルク No.422
③オイレンブルク No.904(歌劇全曲版)
④ソヴィエト国立出版所 No.26868(歌劇全曲版)
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