今日の1枚(98)

今朝の東京は、昨夜の雨が嘘のように晴れ渡りました。正に清明の一日。あまりの清々しさにウグイスも啼き出すほど。今年二度目のウグイス遭遇でした。
(あまりの気持ち良さに朝のドライブをしてきましたが、それは別途)

さてテスタメントが復刻しているフルトヴェングラー、今日は2枚目です。STB-1141 、ワーグナー名曲集。

①ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
②ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
③ワーグナー/ジークフリート牧歌
④ワーグナー/楽劇「神々の黄昏」夜明けとジークフリートのラインへの旅
⑤ワーグナー/楽劇「神々の黄昏」ジークフリートの葬送行進曲
①のみルツェルン音楽祭管弦楽団、他は全てウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。
データは、

①1947年8月30日 ルツェルン、クンストハウス
②1949年2月17日と22日 ウィーン、ムジークフェラインザール
③1949年2月16日と17日 ウィーン、ムジークフェラインザール
④1949年2月23日 ウィーン、ムジークフェラインザール
⑤1950年1月31日 ウィーン、ムジークフェラインザール
プロデューサーは全て Walter Legge 、エンジニアは①から④が Douglas Larter 、⑤のみ Anthony Griffith ということになっています。
これと良く似た内容のディスクは「今日の1枚(78)」で取り上げていますが、曲目はダブるものの同一音源は一つもありません。しかしながら全てが正規スタジオ録音。即ちフルトヴェングラーが複数回録音しているということ。

①は昨日取り上げたメニューインとのベートーヴェンの翌日に行われた録音です。何故か一般発売されることなくEMIの倉庫に眠っていたものをテスタメントが発掘、当盤が初出の貴重なものです。
記録によるとフルトヴェングラー/ルツェルン祝祭管は2年後の1949年9月15日にもこの曲を正規録音。これ又お蔵入りしている由で、何故このようなことになったのかは不明なのだそうです。

実際に聴いてみると演奏は最後のウィーン録音より優れていると思いますし、録音も遜色ありません。オーケストラの性能もウィーンよりルツェルンが上。益々未発売だったことが不思議に思われます。
なお1947年8月のルツェルン音楽祭にはフルトヴェングラーは3回登場し、8月20日、27日、30日にコンサートが行われています。

20日はブラームスのドイツ・レクイエム(シュワルツコプフとホッター)、27日がベートーヴェン(レオノーレ3番とピアノ協奏曲1番、ソロはアッシェンバッハ)とブラームス(第1交響曲)、そして30日にローエングリン前奏曲とメニューインをソロにしたベートーヴェンが演奏されたのです(メインはブラームス1番)。
即ちテスタメント盤のローエングリンは演奏会当日のスタジオ録音。

②~④はウィーンでの同じセッションでの録音。
②も何故か一般には未発売だったそうで、レッゲが発売を主張したもののフルトヴェングラーが許可しなかった由。
これも(78)で取り上げた1952年録音より勝る部分はあっても、決して劣るものではありません。録音も優秀。
最後の1小節のティンパニをトレモロで続けているのが1952年録音と違うところで、もちろんワーグナーのスコアではトレモロの指示はありません。

③はフルトヴェングラーの唯一の正規スタジオ録音。弦楽器も複数で演奏している拡大版によるものです。

④も1954年のものとほぼ同一水準の演奏・録音。ただ、144・145ページの ff に突入する箇所でSP面の繋ぎが上手く行かず、ズッコケる感じがあるのが難点。
冒頭の夜明けの音楽、1954年録音が64ページの6小節目からスタートするのに対し、当盤は1小節前のティンパニだけ演奏しています。即ち1小節分長い演奏。接続箇所や終止部は両盤とも同じ。

⑤も②~④と同時に録音されています(1949年2月23日)が、何故か現在でも未発売。このテスタメント盤に収録されているのは二度目の1950年録音です。
(78)に入っているのは実に三度目の録音ですが、1950年と1954年はかなり感じが違う演奏になっています。

テスタメント盤は他の曲と同様に推進力があり、覇気に満ちたフルトヴェングラーを聴くことが出来ますが、後年の録音はより悲劇的。恐らくフルトヴェングラー自身が近づいた死を意識したのではないでしょうか。
コーダのアレンジ等は両録音とも同じ版を使用。
当盤の素晴らしいブックレットも Alan Sanders の執筆。

参照楽譜
①オイレンブルク No.904(歌劇全曲版)
②オイレンブルク No.903(歌劇全曲版)
③オイレンブルク No.810
④オイレンブルク No.910(楽劇全曲版・第1分冊)
⑤オイレンブルク No.811

 

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