今日の1枚(204)
暫く間が空きましたが、また音盤に戻ります。今回は「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズの5人目、ヴァーツラフ・ターリッヒを聴きましょう。
EMIのシリーズにターリッヒが登場するのは不思議な感じがしますが、敢えて他社の録音を集めた以上は偉大なマエストロとして落とせないからでもありましょう。ターリッヒは承知の様にチェコ・スプラフォンのアーティストで、年代からしても全てがモノラル録音、またほとんどがチェコ・フィルを指揮した音源ということになります。
例によって2枚組、最初の1枚に収められているのは以下のラインナップです。
①スメタナ/連作交響詩「わが祖国」~シャールカ
②ドヴォルザーク/交響詩「水の精」
③弦楽セレナード
④歌劇「利口な牝狐の物語」組曲(ターリッヒ編)
最初に触れたように、全てチェコ・フィルとのモノラル録音。実は①には1929年にHMVに録れたSP盤があるのですが、NMLの配信を聴くとこれではなく、後に再録音した新盤の方と確認できました。
ターリッヒのスプラフォン録音は近年「ターリッヒ・スペシャル・エディション」としてリマスターされています。私はターリッヒが大好きなので、17点全てを買ってしまいましたが、そこには詳しいデータが記載されています。
シャールカはシリーズ6によれば1954年6月10~12日、6月21日、7月2~3日の6日間に分け、連作交響詩「我が祖国」全曲の一環として収録されたもの。演奏会場はプラハのルドルフィナム Rudolfinum 、ディレクターは Ladislav Sip 、エンジニアが Frantisek Burda とクレジットされています。長年親しまれてきた名盤で、特に付け加えることも無いでしょう。因みにスプラフォンのシリーズでは1929年の録音も復刻されています。
②は1949年7月14日にプラハのドモヴィナ・スタジオ Domovina Studio で録音されたSP盤。ディレクターは Jan Seidel という人で、エンジニアは①と同じ Frantisek Burda 。SPの初出はスプラフォン、685/7 の3枚6面でした。
125小節目のホルンは前の小節からのタイではなく、区切ってアクセントが付けられていること。346小節目のチェロの音型が344小節に合わせて変更されているのが特徴です。
③は1954年2月19日から21日までの3日間、やはりプラハの Domovian Studio での録音で、Jan Seidel と Frantisek Burda のコンビ、ターリッヒでは最も新しい録音と言えるでしょう。英コロンビアのSPで DB 3681/4 の4枚組がWERMに記載されていますが、録音年代から見ると別録音ではないかと思われます。この辺りの経緯はブックレットを読めないので不明。
④も1954年4月12日と13日に Rudolfinum のドヴォルザーク・ホールで録音された新しいLP録音。同じく Jan Seidel と Frantisek Burda のコンビですが、発売記録はWERMには載っていませんでした。
「利口な牝狐の物語」組曲は最近、ベーレンライター・プラハからフランティシェク・イーレク版が出版されましたが、ターリッヒ版は全く別のもの。以前にヤマハでユニヴァーサル版(?)の指揮者用スコアを見掛けたことがありましたが、高価だったため買わず終い。現在では見当たらず、チョッと後悔しています。
演奏・録音共この時代を代表する優秀なもので、ターリッヒ時代のチェコ・フィルのレヴェルの高さを思い知らされる録音。
参照楽譜
①オイレンブルク Np.473
②アルティア H.2377
③マスターズ・ミュージック S 0061
④無し
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