今日の1枚(206)

次の「20世紀の偉大な指揮者たち」は、EMIの代表的アーチストだったエイドリアン・ボールトです。何れも友人でもあったエルガー、ヴォーン=ウィリアムス、ホルストのチャンピオン、英国音楽の伝道者としても有名ですが、レパートリーは極めて広く、単なる英国音楽の紹介者に留まりません。
マーラーの第3交響曲、ベルクの「ヴォツェック」の英国初演を指揮するなどドイツ音楽にも定評がありました。
私事ながら、新婚旅行で1978年にロンドンに滞在した際、チェリビダッケ指揮ロンドン交響楽団だったか、ザンデルリンク指揮BBC交響楽団だったかの演奏会がマチネーで、その夜はボールト指揮のロンドン・フィル。マチネーを聴いて夜もというのは、と考えて聴かずじまいでした。メインはチャイコフスキーの第5交響曲でしたが、この巨匠をナマで聴かなかったことを大いに後悔しています。

さて2枚組の1枚目は以下のもの。

①ベルリオーズ/序曲「ロブ・ロイ」
②フランク/交響曲ニ短調
③チャイコフスキー/組曲第3番~第4曲「主題と変奏」
④ウォルトン/序曲「ポーツマス・ポイント」

①③④は全てロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との録音で、②のみオーケストラ名がロンドン・オーケストラ・ソサエティとなっています。ロンドンのオーケストラは複雑で、ウェーバーやベルリオーズも会員になっているロンドン・オーケストラ・ソサエティーはロンドン・フィルやロイヤル・フィルとは別物と思います。今年のプロムス、オルソップの会の時に紹介した記憶がありますので、そちらも見て下さい。
ボールトの音盤に付いては良く判りませんが、ここに収められているのは全てステレオ。EMIのカタログには載っていないと思います。当シリーズはEMIからリリースされたものですが、数ある英国作曲家の作品以外の音源を集めた所が、EMIの拘りだったのかも知れません。

①はNMLでも別途配信されているニクサ=ウェストミンスターの1956年ステレオ録音集第2集に含まれている音源と同じもので、そちらでは1956年8月28日と29日にロンドンの Walthamstow Assembly Hall で録音されたと記録されています。NMLではFHR(フェニックス・ハンズ・レコード)のレーベル名で配信中。
この序曲は滅多に演奏されませんが、交響曲「イタリアのハロルド」と全く同じテーマが出てくるのでビックリさせられます。ヴァイオリンは対抗配置のようです。

②も同じくNMLで配信中の Chesky レーベルの音源と同じでしょう。堂々たる演奏で、第3楽章の最後で登場する第2楽章の主題は、アウフ・タクトの3拍目を改竄せず、スコア通りに演奏しているのが如何にも原典主義者ボールトらしいところ。これはファーストの隣にセカンドが位置するアメリカ式の配置。

③もステレオ録音ですが、②と違ってヴァイオリンが対抗配置に置かれていることが聴き取れます。基本的にボールト/ロンドン・フィルはこの配置で演奏していたようですね。第9変奏と第10変奏の間にあるヴァイオリン・ソロはもちろんコンサートマスターでしょうが、名前はクレジットされていません。
また第10変奏の53小節から57小節の木管による合奏部分は、チャイコフスキーも認めているようにカットしての演奏。最後のポロネーズのリピート個所は全て忠実に実行していました。

④は、この2枚組に含まれている唯一の英国作品。全てステレオのため、初出の記録はWERMの対象外です。

参照楽譜
①カーマス・ベルリオーズ全集 Np.1219
②ペータース Nr.629
③オイレンブルク No.1368
④オックスフォード・ユニヴァーシティー・プレス

 

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