今日の1枚(6)

今日はクリスマス第1日。ということはワーグナーのジークフリート牧歌が初演された日だ、と思いつくのは余程のクラシック、いやワーグナーおたくでしょうが。
今日の1枚はワーグナーじゃなくてシュトラウスです。昨日のヨハン・ヨゼフに絡めてリヒャルト・シュトラウス。

①R.シュトラウス/「薔薇の騎士」組曲
②R.シュトラウス/「サロメ」サロメの踊り
③R.シュトラウス/「カプリッチョ」六重奏序曲
④R.シュトラウス/「カプリッチョ」間奏曲(月光の音楽)
⑤R.シュトラウス/「カプリッチョ」終幕の場

ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏、⑤のみフェリシティ・ロットがソプラノで加わります。
シャンドスが録音したヤルヴィによるシュトラウス作品集の一環。各巻ともにロットが参加したシリーズの1枚です。
CHAN 8758 、もちろんディジタル録音によるステレオ。

録音日時は、①と②が1988年2月5日から9日まで、③④⑤は1988年8月16-18日。録音場所も別々で、前者がグラスゴウのシティー・ホール、後者はダンディー Dundee にあるケアード・ホール Caird Hall とクレジットされています。
プロデューサーは Brian Couzens 、エンジニアが Ralph Couzens といういつものシャンドス・コンビ。

①②とカプリッチョではオーケストラ編成にかなり差がありますから、当然の選択でしょう。演奏全体のイメージも若干異なっていますが、統一はよく取れている録音です。
「薔薇の騎士」組曲というのは意外に録音が少なく、シュトラウス自身が編んだ物以外によるものもありますから、この録音は存外貴重なものでしょうか。
ブージーから出ているスコア通りのストレートな演奏です。

「サロメ」は元々オペラそのものでも「七枚のヴェールの踊り」だけ独立したスコアになっていますから、楽譜上の問題はありません。

注釈が要るのは「カプリッチョ」。このヤルヴィ盤は、③では弦楽六重奏(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが夫々2人づつ)の序奏に続いて、舞台上(舞台裏?)で奏される第1場の音楽も続けて演奏されています。
第1場の部分はいかにも舞台裏で演奏しているように、マイクから遠く離れての収録。この場面で歌われる(というより語られる)フラマンとオリヴィエの声楽部分は録音されていません。六重奏のオケだけ。

④はスコアの上でも管弦楽のみで独立していますから問題なし。
全曲スコアの325ページ、練習番号258からスコアにして10ページ分が譜面どおり収録されています。

問題は⑤。この場面、指揮者により録音により収録箇所に微妙な違いがありますが、ヤルヴィの選択は、スコアの338ページ、練習番号265の1小節目の f からオペラの最後までが通して収録されています。この部分でのカットは一切ありません。
ただし、バス歌手が歌う家令の一言だけはカット。

以上、スコアを参照しながら聴く場合は、場所さえチャンと押さえておけば何も問題ない作りになっています。
録音はシャンドス独特の残響をたっぷり収録したもので、オーケストラの細部よりは全体のリッチな響きを主眼にしたもの。この辺が好き嫌いの分かれ目でしょうかね。
例えば、サロメの踊りにおけるチェレスタの音など全く聴こえてきません。もしかするとこの楽器を省略して演奏しているのではないかと疑われるほど。
(尤も、ナマ演奏でもチェレスタなんて聴こえませんけどね・・・)

演奏はヤルヴィのどちらかと言えば「ものに拘らない」タイプ。けれど、何度も繰り返して聴いてみると、譜面の pp と ppp とか、mf と f の差異をキチンと演奏していて、聴く度に味わいを増してくるディスクです。
これなど、より上位のマスタリングや素材、SACDなどで聴いてみれば、演奏の真価は遥かに高いことが認識されるはず。そういう意味では、やや残念な感がしないでもないディスク。

なお、カプリッチョの弦楽六重奏は演奏者の名前がクレジットされていて、
ヴァイオリン Edwin Palling と Andrew Martin
ヴィオラ John Harrington と Ian Budd
チェロは Timothy Walden と Jeremy Fletcher
です。

参照楽譜
薔薇の騎士 ブージー&ホークス HPS1208
サロメ ブージー&ホークス No.65
カプリッチョ ブージー&ホークス 歌劇全曲の総譜

 

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