日本フィル・第302回横浜定期演奏会

あの震災から3年半、予定されていた演奏会が帰ってきました。そう、インキネンが振る横浜定期、2011年の4月にはドビュッシーとラヴェル作品が並ぶフレンチ・プログラムが予定されていたのでした。
しかし御存知のように、原発事故に過敏に反応した海外、特にフィンランドは国を挙げて同国人に日本訪問の自粛を要請。インキネンも本人の希望とは違った形で断念を余儀なくされ、広上淳一が演奏曲目を変更せずに指揮したのでしたね。

その時の詳しい内容は拙ブログにも書きましたから、ここでは省略します。ただ、当初予定のト長調のピアノ協奏曲が今回は左手に代わった上で前半から後半に移動し、前半がドビュッシー、後半がラヴェルで纏まることになりました。その結果のプログラムがこれ。

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/交響詩「海」
     ~休憩~
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲
ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
 指揮/ピエタリ・インキネン
 ピアノ/舘野泉
 コンサートマスター/木野雅之
 フォアシュピーラー/千葉清加
 ソロ・チェロ/菊地知也

当然ながらインキネンと日フィルの関係は3年半前より一層深化、マエストロの意図は以心伝心でオケに伝わるようになってきました。インキネンのフランス物はやや珍しい部類でしょうが、シベリウスやマーラーに対するアプローチとは基本的に変りがありません。
ヴァイオリニスト出身ということもあり、メンバーの話では本番に強いタイプ。ラザレフのようにリハーサルでは徹底的に仕上げず、本番でのオケの変わり身を期待する指揮者なのだそうです。

ドビュッシーやラヴェルの様な「雰囲気」が命のフランス音楽にとっては、これが良い方向に作用。インキネンとしては遅め感のあるテンポで、音色の微妙な色合いの移ろいが見事に表現されていました。
最近はナマ演奏の機会が減っているようにも感じられるこれらの名曲。改めて素晴らしい作品であることに想いを馳せてしまいます。
ドビュッシーは前回と同じ真鍋のソロがホールを蕩けさせ、クロタルの澄んだ響きがみなとみらいホールに消えて行くのでした。

海の表現も真に自然なもの。第3楽章の金管によるファンファーレは、広上と同じく復活させての演奏でした。最弱音から最強音までのダイナミクスの差は、ナマで聴いてこその体験でしょう。

後半最初のラヴェル左手。舘野氏は久し振りに聴きました。舞台との往復は辛そうにも見えましたが、ピアノに座れば昔通りの豊かなピアニズム。テクニックを表には出さず、あくまでも人間的で温かみのある音色が氏の魅力でしょう。
インキネン/日フィルも明るく透明、加えて温かみのある柔らかいトーンでソリストを包み込む印象。ヘルシンキ在住の舘野氏とインキネン、プログラムにも紹介があったように、「フィンランドの魂を共有する2人の、シンパシーに満ちた共演」を楽しみました。

客席の熱心な拍手に応え、舘野氏のアンコールはカッチーニのアヴェ・マリアを吉松隆のアレンジで。この名曲も吉松の手に掛かると、まるでテレビの純愛ドラマのテーマ音楽のよう。アレンジの効果を思い切り表現したアンコールでした。

そしてメインのダフニスとクローエ第2番は圧巻。特に最後の全員の踊りでは、これまで抑え気味だったテンポを思い切り上げ、いやが上にも大団円を盛り上げます。
ラザレフの重厚感とは違った透明感、これが首席客演指揮者インキネンが日本フィルに持ち込む最大の効果でしょう。であれば、やはりフランス音楽はもっと頻繁に取り上げて欲しいもの。

このオーケストラは、当時ドイツ音楽一辺倒だった音楽界に新風を吹き込むのが設立の趣旨の一つでもありました。定番でも良い、オーケストラには幅広いレパートリーと、多彩な曲目編成が求められていると思います。

 

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