今日の1枚(37)

残り少なくなってきたベイヌム・セットから、今日は極めて録音状態の良い1枚です。

①ベートーヴェン/「エグモント」序曲 作品84
②ヴェルディ/歌劇「ドン・カルロ」~王衣の中で一人淋しく眠ろう
③ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲二長調作品61

データは、
①1954年10月11日 ニューヨークの Assembly Hall of the United States での収録。
②1956年4月18日、バスの独唱はボリス・クリストフ
③1958年3月19日、ヴァイオリン独奏はジノ・フランチェスカッティ

どれも録音年代が新しく、普通の鑑賞には全く問題がありません。ただし放送音源としてはまだモノラルが主力だった時代で、ステレオ録音ではありません。

①はデータにもあるように、1954年の北米ツアーでの演奏です。6枚目のディスクに収められているラヴェルと同じ日の収録ですが、録音状態は遥かにこちらが上。編成の規模によるものでしょうか、テープの保存状態故でしょうか。
ベートーヴェンの「エグモント」はオランダ独立を描いたゲーテの原作に拠っていますので、オランダでは国歌並みの扱いを受けてきました。
コンセルトへボウ管弦楽団の戦後最初の演奏会(1945年7月29日)でも冒頭でベイヌムが指揮したのもエグモント。戦後初の海外ツアー、ニューヨークでの公演も「エグモント」で開始されたのです。これはその時の記録。

②はベイヌムとしては珍しい歌劇のアリア伴奏。チェロの独奏はティボール・ド・マヒュラ Tibor de Machula 、当時の首席チェリストでしょうね。
戦前からコンセルトへボウの運営面を担ってきたルドルフ・メンゲルベルク(3枚目のディスク参照)の60才を祝ったガラ・コンサートが、1952年2月2日に行われました。このコンサートの成功が、現在まで続いている「ルドルフ・メンゲルベルク基金」の基礎になったのだそうです。
この基金の資金集めに定期的に開催されているガラ。名歌手クリストフが何曲かのアリアを披露したのもガラ・コンサートで、でした。これはその時の録音です。

③のソロを務めるフランチェスカッティには解説の必要はありません。10歳でベートーヴェンの協奏曲を弾いてデビューした名手。
これは1958年のコンサートですが、この後直ぐに1960年の出演契約を結ぶ積りでしたが、この時既にギャラが極めて高くなっており、実現したのは1962年だったとか。
財政に苦労している日本のオーケストラではよく聞く話ですが、コンセルトへボウですら高くて呼べないソリスト。フランチェスカッティ畏るべしです。
ベートーヴェンの協奏曲は三楽章全てにカデンツァがありますが、第1・3楽章のものはクライスラー作でしょう。(カデンツァの譜面を持っていないので確信はありませんが)
②と③では、聴衆が終わるのを待ち切れずに拍手を始めてしまいます。ライヴ録音の醍醐味かも知れません。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.44
②カーマス 6746(ヴォーカル・スコア)
③ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.45

 

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