お試し

昨日、初めて川崎のラゾーナなる商域に足を踏み入れました。
ミューザに出掛けるので、様子を見に行ったわけです。土曜日の夕方、人でごった返しており、一通り見て回るに止めました。何処にも立ち寄らず、まぁ、ラゾーナの「お試し」です。

来年の夏にはここで時間潰しをしなければならなくなるでしょうから、それまでは様子見ですな。それにしても「観光地」という印象でした。
ミューザは、ウィーン・ヴァイオリン・クァルテットという団体の公演。ギュンター・ザイフェルトをリーダーとするウィーン・フィルのアンサンブルです。
ミューザが始めたアンサンブル・シリーズ2006の第1回目。

このシリーズは全部で4回からなり、このあとはベルリン・フィル八重奏団、小川典子&田部京子ピアノデュオ、ウィハン弦楽四重奏団と続きます。
ピアノデュオと弦楽四重奏がお目当てですが、セット券なら割安だし、ベルリンのアンサンブルでは聴きたかったベートーヴェンのセプテットがあったので、まとめて買ってしまいました。
席は2階4列目20・21。中央よりやや左寄りですが、1回券の争奪戦に参加するよりは気が楽です。

というわけで、ウィーン・ヴァイオリン・クァルテットというのは本命ではなく、「お試し」という軽い気持ちで聴いてきました。音楽もそういう内容のものです。
「ヴァイオリン・クァルテット」などというタイトルはおかしいのですが、正しくは Wiener Geigen Quartet といいます。臨時編成ではなく、こういう団体名として活動しているようです。
メンバーはギュンター・ザイフェルト、弟のエックハルト・ザイフェルト、プラハ生まれのミラン・セテナ、ジャズの経験も豊富なヨーゼフ・ピツェックです。
ピツェックはコントラバス、他の3人はヴァイオリン・プレイヤーですが、エックハルトはヴィオラが中心、アレンジによってはヴァイオリンに持ち替えるというスタイルです。
肩の凝らないウィーンのダンス音楽が中心ですから、聴けば大変楽しいものです。アンコールも4曲、ミニ・ウィーンフィルを楽しんできました。

彼らは楽器というより音楽が巧いのです。もちろん楽器演奏も巧いのですが、音楽を心から楽しみます。全員立って演奏しますが、ワルツやダンスは弾くが如く踊るが如く、楽しい2時間でした。
ミューザで過ごすと、改めてホールの良さに感服します。最初の印象の通り、最高級のオーディオ・システムを堪能しているような感覚。

例えば、コントラバス1本が鳴るだけで、2階の床面が振動する。その快いボディー・ソニック。どこまでも柔らかく、それでいて細部はシャープに響く。ここは1階で聴いたこともありますが、2階より上の方がお薦めです。特に室内楽では2階が理想的だと思います。
今日はそのことの「お試し」。次回以降が大いに楽しみです。

ところで今日はもう一つの「お試し」に出掛けます。ズバリ、テイスティング・コンサート。
日本フィルは来春、定期演奏会を東京オペラシティ・コンサートホールに移します。定期会員の継続を開始する前に、実際にホールを体験してもらおうという良心的な企画。チケット代金もたったの2000円です。
私共が試しに選んだ座席は、1階9列20・21、サントリーでの定席とほぼ同じ場所にしました。
曲目も小さなものから大きなものまで、先日の定期で聴いたばかりの「惑星」からジュピターもあります。まだ残響が耳に残っている状態で、ホールの聴き比べも楽しめます。指揮はもちろん、名誉指揮者・ロッホランです。
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ということで行ってきました。サントリーホールはいよいよ窮地に追い込まれましたね。
東京オペラシティコンサートホールで聴く日本フィルは、例えば古びた名画を洗い直し、全ての汚れや埃を取り去った状態、と申し上げたらよろしいでしょうか。
楽器のクリヤーな音色、透明感、全総の迫力、全てがグレードアップして聴こえます。これこそが日本フィルの実力です。
サントリーの2000人を越えるホールでなければ興行が打てない海外有名ブランド・オケが気の毒になるくらいです。
これまでもここでいくつか国内オケを聴いてきましたが、今日の日本フィルのような感動はなかったように思います。
演奏者との一体感が違うのです。一緒に聴いてきた家内の感想では、“自分も一緒に演奏したような感動”と、言っていました。

コンサートそのものはホール事務局長とヴィオラ・新井氏とのプレトークで始まり、梶川悦子さんの司会と通訳、マエストロ・ロッホランの解説と感想で進められました。
マエストロが“このホールをスコットランドに持って帰りたい”という感想は、さもありなん、と思わせるもの。実に暖かみのあるサウンドが聴衆全体を包み込んでしまうのでした。

演奏されたのは、休憩を置かず、
ヴェルディ/「運命の力」序曲
ヴォーン=ウイリアムズ/「グリーンスリーヴス」による幻想曲
ベートーヴェン/交響曲第6番~第4・5楽章
マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
ヘンデル=ハーティ/組曲「水上の音楽」~エアー
ホルスト/組曲「惑星」~ジュピター

でした。個人的にはヘンデルが素晴らしかった。昨今はピリオド系の栄養失調版ヘンデルしか聴けませんが、久し振りに聴くハーティ版のエアー、胸が一杯になってしまった。
確かに嘗てはホルンに難があった日本のオケですが、今日の最後のホルン四重奏の見事だったこと。他のピースも聴きたい!!!

アンコールはエルガー「愛の挨拶」。再度カーテンコールに登場したマエストロ、ズボンのポケットを引っ張り出して“もう、持ち合わせありません”。
会場、爆笑のうちにテイスティング・コンサートを終えました。

終演後何人か旧知の顔に出会いましたが、共通していたのはホールの良さを讃えていた事と、いつもの日本フィルより良い音がしたね、という感想でした。サントリーホールの工事が終わっても、ここで定期続けてもいいんじゃないかしら。

 

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