読売日響・第459回定期演奏会

季節が逆戻りしたような寒さと雨の中、池袋は東京芸術劇場に向かいました。読売日響の4月定期です。サントリーホール改修の間、定期はここで行われます。席はほぼサントリーと同じような場所、1階L列24番、列の右端なので落ち着きますわ。
それにしても、これは凄い体験でした。恐るべしスクロヴァチェフスキ、そんなことは百も承知ですが、改めて、参った!!!

コンサートまでの経過はコミュニティに散々書いたので繰り返しません。ホールに着くと先ずシンバルとドラの存在を確認。何が起きるか! 更にコントラバスが下手、というかいつもと逆、第1ヴァイオリンの後ろに並んでいます。おぉ、今日は対抗配置だ。

それは1曲目、ベートーヴェンの大フーガで納得しましたね。大きなフーガは3っつありますが、その第3のものはテーマを両ヴァイオリンが分け合う形になっています。判っちゃいるけど何とか・・・で、こうして実際に音に出してみると、その効果は絶大なのでありました。
弦楽四重奏での演奏をいくつか聴いていますが、今回のように第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを両翼に置くのは、私が知っているのは古典四重奏団だけですね。彼等は特に「対抗配置」という意識ではないと思いますが、ふと、思い当たったので記しておくのです。
この日の弦楽合奏では何箇所かでソロになるところがありましたが、ワインガルトナー版ではこのようになっていましたっけ。チョッと楽譜を見たくなりました。もしかするとスクロヴァ先生の工夫なのでは・・・と。

ブルックナーの第4交響曲。
これはナマ・録音を問わず、私が体験した最高の第4でした。ブルックナーというと金管の威力で圧倒し、響きが混濁するに任せるのを良しとする風潮がありますが、それとは全く逆です。極めて精緻、その響きは殆ど室内楽の世界です。
では大ホールでは物足りないのでは、という懸念は無用。鳴るべき所は“地も割れよ”と言わんばかりに轟々と響く。

つまりは、スクロヴァチェフスキの表現が極めて立体的である、ということ。とにかく一つのパートが主であり、他は副、ということがないのです。ブルックナーが書いた全ての音符が聴こえる。そんなこたぁ~あり得ない、と思うでしょうが、そうなんだから驚くのですよ。エッ、こんな体位旋律があったのか、思わず楽譜を見直してしまいます。

究極は、やはりドラの使用でしょうね。第4楽章のコーダ、徐々にオーケストラが音量を上げていく過程でのこと。短調の暗い響きが、和声を変えながら明るい長調に移るところです。
その暗さの底で、ドラが2度、幽かに打たれるのです。ドラが止むと、響きは明るく、輝かしさを加えていく。この対称と転換の見事さ。その立体感。
こんなブルックナー第4、聴いたことない。ミスターSによると、CDでも同じことをしているそうです。録音で聴いても、マエストロが全ての音を聴こえるように精緻なバランスを達成していることは分かります。あの録音はレコード故の魔術ではないのですね。実際に聴いてみて納得します。
しかしライヴの妙、世界に冠たる読売日響の圧倒的なソノリティーは、彼のレコード演奏を遥かに凌駕する出来映え。
スクロヴァチェフスキを超えるものはスクロヴァチェフスキしか無い。

この日のコンサートマスターは藤原浜雄、フォアシュピーラーは鈴木理恵子でした。理恵子さんは、プレアデスの時は車椅子で登場されましたが、今日は松葉杖でした。徐々に回復されているのでしょう。

 

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