今年最初のGⅠは名血コールバックが制す

1月最後のアメリカ競馬は、フロリダのタンパ・ベイとカリフォルニアのサンタ・アニタでG戦5鞍。サンタ・アニタでは今年最初のGⅠ戦も行われました。

先ずタンパ・ベイ競馬場から、最初はエンデヴァー・ステークス Endeavour S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場に3頭が取り消して11頭立て。同じタンパ・ベイで去年のフロリダ・オークス(芝GⅢ)に勝ったテスタ・ロッシ Testa Rossi が9対5の1番人気。
レースはブービー人気(66対1)のノーティー・ホリデイ Naughty Holiday が逃げ、1番枠発走のテスタ・ロッシは7番手の内で待機。3番手に付けていた最低人気(68対1)のロッツ・オー・レックス Lots o’ Lex が直線で先頭に立ちあわやと思わせましたが、4番手から外を通った2番人気(2対1)のハード・ノット・トゥ・ライク Hard Not to Like がこれを交わし、更に外から追い上げるテスタ・ロッシを4分の3馬身抑えて先頭でゴール。首差でロッツ・オー・レックスが3着に粘りました。
しかし直ぐに本命馬に騎乗していたイラッド・オルティス騎手が、勝馬のジョン・ヴェラスケス騎手に対してゴール前の進路に対して異議申し立て。パトロール・フィルムが何度も放映されましたが、ゴール直前でハード・ノット・トゥー・ライクが外に大きく膨れてテスタ・ロッシの進路に侵入、オルティス騎手が思わず馬を止め、立て直した時には既に遅かったことが確認されました。この結果、1着と2着が入れ替わり、優勝はテスタ・ロッシが繰り上がります。
チャド・ブラウン厩舎のテスタ・ロッシは、2歳時にはフランスで走り5戦3勝した4歳馬。2歳の8月にブラウン師の元に転厩し、その年の10月にはアメリカ・デビュー戦のミス・グリロ・ステークス(芝GⅢ)に快勝していました。BCジュヴェナイル・ターフでも2着し、前記の様に翌年のフロリダ・オークスでG戦2勝目。しかし4月のアシュランド・ステークス(GⅠ)では人気になりながら故障もあって4着敗退。故障明けの前走、11月のミセス・リヴィア・ステークス(芝GⅡ)も人気で7着敗退してからの巻き返しとなりました。

タンパ・ベイのもう一鞍は、3歳馬のサム・F・デーヴィス・ステークス Sam F. Davis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。ケンタッキー・ダービーへのポイント対象ではありませんが、次のステップとなるタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)がダービー50ポイント。そこに向かう重要なトライアルで、fast の馬場に12頭が参戦してきました。デビュー戦に勝ったばかりのオーシャン・ナイト Ocean Knight が、その内容の良さから8対5の1番人気。
先ずは内枠を利して7対2のカタリナ・レッド Catalina Red が逃げましたが、直ぐに28対1の伏兵ディヴァイニング・ロッド Divining Rod がこれを交わして逃げ、オーシャン・ナイトは先行グループの後、6番手で待機。直線、ディヴァイニング・ロッドが良く粘りましたが、オーシャン・ナイトが外から並び掛け、最後は首差ながらも叩き合いを制して人気に応えました。3着は5馬身差が開いて7対2のマイ・ジョニー・ビー・グッド My Johnny Be Good の順。
キアラン・マクローリン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のオーシャン・ナイトは、去年12月にアケダクトの6ハロン戦で2着以下に4馬身以上の差を付けてデビュー勝ち。これが2走目、もちろんステークスもG戦も初挑戦で無敗を守りました。当然ながらタンパ・ベイ・タービーに向かうものと思われます。なお、騎乗したオルティスはタンパ・ベイそのものが初騎乗とのことで、エンデヴァーに続いてこの日のG戦ダブル達成です。

一方のサンタ・アニタ競馬場からは3鞍。短距離対決のパロス・ヴァーデス・ステークス Palos Verdes S (GⅡ、4歳上、6ハロン)は fast の馬場に6頭立て。一昨年のBCスプリント覇者シークレット・サークル Secret Circle と、前走ミッドナイト・リュート・ステークス(GⅢ)でこれを破り2連勝中の快速馬ディスティンクティヴ・パッション Distinctiv Passion が2対1で人気を分け合います。
レースはそのディスティンクティヴ・パッション、にビング・クロスビー・ステークス(GⅠ)勝馬のビッグ・マカー Big Macher 、シークレット・サークルの3頭がハナを争い、4番手以下は5馬身以上引き離される展開。直線、逃げるディスティンクティヴ・パッションを捻じ伏せてシークレット・サークルが先頭に立ちましたが、離れた4番手を進んだ4番人気(5対1)のコンクェスト・トゥー・ステップ Conquest Two Step が一気に差を詰め、シークレット・サークルを1馬身4分の1差し切っての逆転劇。更に2馬身4分の1差で去年のパロス・ヴァーデス勝馬で3番人気(3対1)のワイルド・デュード Wild Dude が3着に入りました。
マーク・カッセ厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のコンクェスト・トゥー・ステップは、前走GⅠのマリブー・ステークスでチャンピオン馬シェアド・ビリーフ Shared Belief に首差2着まで詰め寄った馬。その時は72対1の大穴的存在でしたが、ステークスはこれが初勝利。勝たれて見れば成長著しい4歳馬と言えそうです。

二つ目は芝のマイル戦、アルカディア・ステークス Arcadia S (芝GⅡ、4歳上、8ハロン)。以前GⅠ戦だったことのあるアルカディア・ハンデと紛らわしいレース名ですが、それとは別のレースです。firm の馬場に2頭が取り消して7頭立て。去年はチャンピオン・ホース相手に善戦し、前走シービスケット・ハンデ(芝GⅡ)を制したカイグンKaigun が6対5の1番人気。
5番人気(13対1)のエル・ニーニョ・テリブル El Nino Terrible が逃げ、4番人気(5対1)のアヴェンザーリ Avanzare がこれをピタリとマーク、カイグンは後方2~3番手からの追い込みに掛けます。第4コーナーで逃げ馬を捉えたアヴェンザーリがスパートすると、後方から徐々に外を回って追い込む2番人気(3対1)のザー・アプルーヴァル Za Approval に1馬身4分の1差を付けて優勝。4分の3馬身差で並んだ2番人気(3対1)のホーム・ラン・キッテン Home Run Kitten が3着に入り、内から抜けようとしたカイグンは瞬発力を欠いて4着に終わりました。
トーマス・プロクター厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のアヴェンザーリは、去年夏のアーリントンでワシントン・パーク・ハンデ(GⅢ)に勝った馬。本来は芝コースを中心に走っていた5歳せん馬で、ワシントン・パークは初のポリトラック・コースを逃げ切ったもの。ここで本業でもある芝コースを制し、G戦2勝目を挙げました。

最後が、アメリカ競馬今年最初のGⅠとなるラス・ヴァージェネス・ステークス Las Virgenes S (GⅠ、3歳牝、8ハロン)。1頭が取り消して9頭立て。前走ロス・アラミトス競馬場のスターレット・ステークス(GⅠ)で2歳牝馬チャンピオン、テイク・チャージ・ブランディ Take Charge Brandi に逃げて3着と健闘したメイベリーン Maybellene が2対1で1番人気に支持されていました。
先ず7番枠からスタートした2番人気(5対2)のコールバック Callback が先手を取り、メイベリーンは無理せず3番手から。快調に飛ばしたコールバックはそのまま先頭をキープし、最後は5番手からジワジワと差を詰める4番人気(7対1)のライト・ザ・シティー Light the City に半馬身差を保っての逃げ切り勝ち。確かに最後は半馬身まで詰め寄られましたが、この差は何処まで行っても縮まらないという印象です。3馬身半差で5番人気(11対1)のアチーヴズ・レガシー Achieve’s Legacy が後方2番手から3着に追い込み、人気のメイベリーンはズルズル後退して8着敗退。
このレース4勝目となるボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のコールバックは、去年12月にロス・アラミトスで2戦目で初勝利。1月3日にはサンタ・イネズ・ステークス(GⅡ)でセデュア Seduire の2着していた馬。名門スペンドスリフト・ファームが所有する高馬で、叔父にケンタッキー・ダービー馬スーパー・セイヴァー Super Saver を持つ良血。父はストリート・センス Street Sense で、ラス・ヴァージェネスは産駒のワン・ツー・フィニッシュでもありました。ストリート・センスは、日本でもエルム・ステークス(GⅢ)を制したフリートストリートでお馴染みでしょう。
バファート師にとっては必ずしも満足の行く結果ではなく、本命のメイベリーンが敗れたことで狙ったワン・ツー・フィニッシュは不発。勝ったコールバックは今回初めてブリンカーを外したのが奏功したようで、次走は4月4日のサンタ・アニタ・オークス(GⅠ)が有力となりそう。

 

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