今日の1枚(245)

今日取り上げるのはメチャメチャ録音の良い音源で、ブログに手を染めていなければ一生出会うことが無かっただろう、と思われるもの。
アルス Ars Produktion という決して新しくはないレーベルで、DSD 録音と謳われている1枚。所謂ハイブリッド盤で、SACDで楽しむのが本筋でしょうが、NMLでもその音質の良さが十分楽しめます。

ARS 38158 の品番。フルートとハープのための協奏作品がメインで、フルートはマリア・セシリア・ムニョス Maria Cecillia Munoz ハープがサラ・オブライエン Sara O’Brien 、バックはバーゼル室内管弦楽団。収録されているのは、
2014年3月7日から9日まで、ミュールハイムの Martinskirche での録音、とクレジットされています。リリースされたばかりの新録音。

①ヘンツェ/イ・センティメンティ・ディ・カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ I Sentimenti di Carl Philipp Emanuel Bach
②カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ/フルート協奏曲ニ短調 Wq.22, H.484/1
③モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲

アルス・プロダクションは1987年創立、マンフレートとアンネッテのシューマッハー夫妻が運営しているということで、居酒屋感覚のレーベルでしょうか。旦那のマンフレートはトーンマイスターの資格を持ったエンジニアで、夫人のアンネッテがプロデューサーとのこと。
デュッセルドルフ近郊のラーティンゲンが本拠地で、日本の生噛りなクラシック・ファンには手が出ないようなコアなレパートリーを誇ります。モーツァルトの一つ年下でピアノ製造会社を設立したプレイエルの全集録音など、売れるのかと心配してしまう様なレパートリーでしょう。
鶴見や晴海でセンセーションを巻き起こしたシューマン・クァルテットの記念すべき初アルバムを録音したのもこのレーベルでした。

現在では260点ほどが配信されていますが、今朝新着ホヤホヤの当盤を聴いてビックリ、音質の良さに唖然としました。ソロ楽器はもちろん、少人数で演奏するバーゼル室内管も存在感充分に収録されています。
バッハの終楽章コーダでは低弦の弦と弓が擦れて発生する擦過音が生々しく捉えられていて、バロック音楽であることを忘れるほど。モーツァルト冒頭の低弦も弓使いが判るほどリアルだし、2本のオーボエも一本一本の動きがスコアを見なくても判るほどです。

演奏者に付いての知識はありませんが、フルートを演奏するムニョスはアルゼンチン生まれの若い女性。2010年にフルートのコンクールでは最も権威あるとされる北京ニコレ国際フルート・コンクールで優勝した人だそうで、主にドイツとスイスが活動の場。未だ日本には登場していないと思います。

http://mariaceciliamunoz.com/

ハープのオブライエンは良く判りませんが、名前からするとアイルランド人でしょうか。ダウントン・アビーに出てくる配役じゃありませんよ。ホームページを見ると、何とコンセルトヘボウのハーピストだったそうで、巧いわけだ。

http://www.sarahobrien.net/en/home

オーケストラ(Kammerorchester Basle)はパウル・ザッハーが主催していた団体(Basler Kemmerorchestra)とは別だそうですが、精神はザッハーを継承しているそうな。配信では Yuki Kasai 指揮とありますが、この日本人女性はヴァイオリニストで、この団体のコンサート・マスターです。オケのホームページにあるメンバー表で確認。

http://www.kammerorchesterbasel.ch/orchester/besetzung/

①はヘンツェがカール・フィリップ・エマヌエル・バッハのファンタジー-ソナタ(ヴァイオリンとピアノ)をフルートとハープ、弦合奏にアレンジしたもので、モーツァルト作品と組み合わせて演奏する際に書いた機会音楽。ショット社のこれまでの演奏歴を見ても、未だ日本では演奏されていないようです。
②は、オリジナルはチェンバロ協奏曲。ヴォトカン番号はジャンル別に振ったもので、1番から47番までは全てチェンバロ用(複数のチェンバロも含め)ですからね。譜面は Thomi-Berg Musikverlag から出版されていて、それによるとユリウス・レーデルがフルート用にアレンジしたもののようです。

http://thomi-berg.de/neu_aktuell/news_bilder/Bach_CPE2014.pdf

③は天下の名曲。モーツァルトはフルートとハープが大嫌いだったというのが信じられません。
①③とフルートのみの②とでは録音バランスが微妙に異なり、ハープが加わるためか①③はややマイクに近めの印象。モーツァルトのカデンツァではハープのアクション音も微かに聴かれますが、音楽を阻害することが無いのが真に音楽的。これを完全に除去すれば却ってリアル感を殺ぐことになりますから、シューマッハー氏の職人技を堪能できる1枚と言えそうです。

 

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