今日の1枚(244)

今日も新しいレーベルから紹介しましょう。1981年にニューヨークで設立されたインディーズで、ブリッジ・レコーズ Bridge Records 。毎年の様にグラーミー賞にノミネートされるレーベルで、今年も三つの部門(室内楽、ソロ、現代音楽)にノミネートされていました。
今朝も11点の新着アルバムがリストアップされていて目移りがしますが、ウェーバーのクラリネット協奏曲を聴くことにしましょう。実は5人の作曲家によるアメリカ現代作品版のクァルテット・プラス(エッシャー弦楽四重奏団に夫々ピアノ、クラリネット、サクソフォン、歌などが加わる編成)という1枚も気になりましたが、どれも初めて聴く作曲家で感想の書き様もありません。

ブリッジ・レコーズの本領はやはり現代音楽で、特にアメリカの作品が中心です。ジョージ・クラムやエリオット・カーターはジャンル別に特集アルバムが作成されていて、今年もクラムの1枚がグラミー賞現代音楽部門にノミネートされていました。
もっと一般的なジャンルでもカタログが充実してきており、シェリングやミルシテインなどのヒストリカル・アルバムも出ています。現時点では300点ほどがNMLでも配信されていますが、今後の展開が楽しみ。我々にも親しいミロ・クァルテットや松山冴花の録音、去年パシフィカ四重奏団が日本でも紹介してくれたシュラミット・ランの作品集も聴けるので、これからもお世話になることが多くなりそうなレーベルですね。
これまでのようにレコード・ショップでCDを漁っているのでは中々手の出ないアルバムがほとんどですが、配信で気軽に聴けるのが有難い所。少し前までは大手レコード会社が一部の高名演奏家を独占し、有名曲だけを録音していれば成り立っていた業界ですが、我々も意識を改め、新しい世界に耳を開かねばなりますまい。

ブリッジ・レコーズのホームページは以下。

http://www.bridgerecords.com/

今朝選んだのは BCD 9416 というアルバムで、

①ウェーバー/クラリネット協奏曲第1番へ短調作品73
②ウェーバー/クラリネット協奏曲第2番変ホ長調作品74
③ウェーバー/クラリネット・コンチェルティーノ ハ短調作品26

演奏はアレクサンダー・フィッターシュタイン Alexander Fiterstein のソロ、マーティン・ウェスト Martin West 指揮サン・フランシスコ・バレエ管弦楽団によるもの。
配信のデータでは、2011年3月、カリフォルニア州サン・ラファエルのスカイウォーカー・スタジオでの収録とあります。

私は何れも初めて名前を目にする音楽家達ですが、ソロのフィッターシュタインはカール・ニールセン国際クラリネット・コンクールの優勝者。日本では東フィルとサントリーホールで共演したことがあるそうです。あるいは実際に聴かれた方もあるでしょう。
オーケストラは名前の通りバレエ劇場のオケで、サンフランシスコ・バレエはアメリカでは著名な団体だそうで、彼らのDVDも出ています。

如何にもスタジオ収録らしく、比較的マイクに近い演奏。ソロもオーケストラも余り残響を伴わず、自然な広がりで捉えられている好録音。ディジタル特有の固さは微塵も無く、クラリネットの暖かさが感じられました。
ウェーバーの協奏曲は久し振りに聴きましたが、協奏曲というより歌劇のアリアのよう。協奏曲は共に急緩急の3楽章ですから、一種の歌劇アリア集を聴いていると思えば良いでしょう。特に最後の小協奏曲はアダージョ→アンダンテ→アレグロという三部構成がアリアそっくり。3曲ともカデンツァはありませんが、書かれたソロ・パートを聴くだけで十分にフィッターシュタインのテクニックと音楽性が楽しめます。
オイレンブルク版のスコアとは多少異なる部分もありますが、こういう曲では固いことは言わない言わない。

 

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