今年もクァルテット・プラス

結成20周年記念コンサートシリーズを続けてきたクァルテット・エクセルシオ、昨日は晴海でその最終回を迎えました。総合プログラムには明記されていませんでしたが、第一生命ホールで続けてきた「クァルテット+(プラス)」という企画は、確か5回目になると記憶します。
今年のプログラムは、これ。

ハイドン/弦楽四重奏曲第38番変ホ長調作品33-2「冗談」
シューベルト/ピアノ五重奏曲イ長調作品114「ます」
~休憩~
チャイコフスキー/弦楽六重奏曲二短調作品70「フィレンツェの想い出」
クァルテット・エクセルシオ
ピアノ/小坂圭太
コントラバス/石川滋
ヴィオラ/柳瀬省太
チェロ/遠藤真理

来年の予定表を見ると、来年の第一生命ホールではエクは「アラウンド・モーツァルト」第1回として登場するようで、どうやらクァルテット・プラスは今回が最終回と言うことになるのでしょうか。
これまではギター、ハープ、ピアノなど一人のゲストを迎えてのプラスでしたが、今回はそういう意味もあって4人のゲストという豪華版。客席も大賑わいで、室内楽フェストのような雰囲気に包まれていました。

前回、エクの演奏会を紹介したのは2月1日の「弦楽四重奏の旅・第2回」でしたが、その間も何度か彼らの演奏を聴いてきました。一々ブログには書かなかったのですが、その間の活動で私が見聞きしたものは、

2月21日 NPO法人エク・プロジェクト社員総会が文京シビックセンタースカイホールで開催され、総会に先立ってヤナーチェクの「内緒の手紙」を演奏。

2月26日 小田急線の鶴川にある和光大学ポプリホール鶴川で「室内楽を楽しむ会」主催の演奏会。ここではハイドンの「冗談」、ヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」、ドヴォルザークの「アメリカ」を演奏。アンコールはドヴォルザークの糸杉から1曲が選ばれました。
私は鶴川そのものが初めての地で、チョッとした国内観光旅行を楽しんだ気分。駅北口から僅かの立地にある当ホールは地下にあるという珍しいものでしたが、音響も中々に良く、特にヤナーチェクが素晴らしかった、というのが当日のファンの共通した意見でした。

3月6日には、前年末に受賞が決まった第16回ホテルオークラ音楽賞授賞式と記念演奏会が、当然ながらホテルホークラ「曙の間」で行われ、モーツァルト、ボロディン、ドヴォルザークの抜粋を演奏。同時に受賞された郷古廉氏とショーソンを共演という珍しい聴きモノも。
授賞式の後はホテル内のレストランで特別ディナーを味わう、というオマケ付もありました。

更に流石に私は遠慮しましたが、3月11日には河村尚子のショパン・プロジェクトに共演するため、水戸芸術館でショパンの第2協奏曲の弦楽四重奏版というコンサートもありました。出掛けた知人によると、演奏会と偕楽園の梅(五分咲きだった由)を堪能したとか。
この間も学校のアウトリーチ、サントリーホール室内楽アカデミーでの指導など、これまで継続してきたクァルテット・エクセルシオの多面的な活動はいつも通り続けられていたのでした。

ということでクァルテット・プラス。最初は鶴川でも聴いたばかりの冗談、エクのハイドンはサプライズ満載というより、オーソドックスなあくまでも伝統的スタイルに準拠したものと言えるでしょう。ここは食前酒の趣。

続く「ます」は誰でも知っている名曲ではあるものの、意外にナマでは聴く機会に恵まれない一品。クァルテット・プラスとは言いながらセカンド(山田百子)はお休みで、替ってコントラバスとピアノが加わるという「変則的」五重奏。ピアノはまだしも、コントラバス奏者を用意しなければならないというのが比較的演奏されない理由でしょう。
従って最近ではオーケストラ奏者たちの室内楽活動の一環で取り上げられたり、室内楽フェストのような臨時編成で演奏されることが多いようです。その意味でもエク・マイナス1・プラス2、というのは余り見られないチャンス。今回は読響の名手・石川滋氏と、何でも来いの名手・小坂圭太氏を迎えての「ます」。久し振りに本格的シューベルトを楽しみました。
特にピアノの響きが丸く、かつ豊か。正にシューベルトにはピッタリの響きで、ウィーンの春爛漫といった風情でした。これだけの「ます」はそう聴けるものではないでしょう。

後半のチャイコフスキーは、これまた大作。セカンドの山田が再びステージに戻り、これも読響ソロの柳瀬省太氏に躍進著しい遠藤真理氏を加えた六重奏が熱い合奏を披露しました。ヴィオラは柳瀬氏が1番で吉田さんが2番、チェロは遠藤さん1番で大友氏が2番で支えるという構成。
特に第1楽章はファースト・ヴァイオリンをソロとするコンチェルトのような演奏に成りがちですが、今回はあくまでもアンサンブル重視の室内楽スタイル。このジャンルはブラームスの2曲、ドヴォルザークに作品がある程度で、弦楽六重奏と言うジャンルを聴くこと時代が珍しい機会と言えそう。

この前ナマで聴いたのは何時のことだったか思い出せないほど昔ですが、今回久し振りに聴いてみて何ともカッコいい作品であることに感嘆。普通の弦楽四重奏に二人加わっただけですが、4+2=6どころか、響きは8人にも10人にも聴こえてくるところがチャイコフスキーの凄い所。
前の日に「眠れる森の美女」を聴きましたが、この二つはビフテキと豚カツを並べたようなもの。腹一杯のチャイコフスキーに我が耳も悲鳴を上げていました。特に終楽章のコーダ、6人の気合が相乗効果を呼んでテンポは更にヒートアップ、ナマ演奏の本番ならではのスリルを楽しみます。

クァルテット・エクセルシオは通常の四重奏のレパートリーはもちろん、今回のプラス企画や現代音楽を取り上げるラボ・シリーズ、更にアウトリーチや学生との交流と、とかく内向きな活動に閉ざされると考えられ勝ちな室内楽の枠を外していく団体。その外向きな姿勢は演奏にも表れていて、肩肘張った堅苦しさとは無縁なのが特徴でしょう。
プラス・シリーズは今回で一区切りのようですが、新たな発想で四重奏プラスのプログラムを組んで行ってもらいたいもの。世界には未だ未だ人知れず眠っている四重奏の佳曲が存在します。彼らによるその発掘も、次の20年の大きな楽しみ。

 

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