読売日響・第580回サントリーホール名曲シリーズ

先月に続いて3月も読響のサントリー名曲を聴いてきました。オケというよりエヴァ・メイの美声を、特にバセットホルンと絡むティートのアリアを聴くためです。全てモーツァルト作品によるコンサートで、以下のプログラム。

モーツァルト/交響曲第38番ニ長調K504「プラハ」
モーツァルト/演奏会用アリア「あわれ、ここはいずこ」K369
モーツァルト/演奏会用アリア「うるわしい恋人よ、さようなら」K528
~休憩~
モーツァルト/歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲
モーツァルト/歌劇「皇帝ティートの慈悲」~“夢に見し花嫁姿”
モーツァルト/歌劇「イドメネオ」~“オレステとアイアスの苦しみを”
モーツァルト/交響曲第35番ニ長調K385「ハフナー」
指揮/ジェラール・コルステン
ソプラノ/エヴァ・メイ
コンサートマスター/長原幸太
バセットホルン/藤井洋子

そもそもメイ/コルステン夫妻による演奏会は2011年の3月に予定されていたものですが、あの大震災によって定期は中止になっていたもの。その定期は来週聴きますが、イタリア・フランス歌劇を中心にしたサントリー名曲は震災前だったので無事に行われました。
当初は11年3月の定期にもメイが登場してモーツァルトを歌う予定でしたが、確かチューリッヒだったかの某有名指揮者が横槍を入れ、ドン・ジョヴァンニのために彼女を強引に連れ去った経緯がありました。従って今回はその雪辱戦と言う意味もあります。
4年振りに聴いたメイ、相変わらずシャンとして姿で堂々たる存在感を示してくれました。髪が銀髪というのか、18世紀に存在していても不思議ではないほど貫録があるのにも感心。

前半のアリアをナマで聴く機会は少ないので何かと比較することは出来ませんが、ややセーヴした印象。K369 Misera, dove son? はメタスタージオの台本(エツィオ)により、ウィーン移住直前に書かれたもの。レシタティーヴォ風(シーン)に始まり、アリアは前半がアンダンテ、後半をアレグロで盛り上げる典型的なスタイル。
続くK528 Bella mia fiamma はウィーン時代、ドン・ジョヴァンニ直後に作曲されたもので、前作の雰囲気を多分に残したアリア。ヨメルリのオペラ「なだめられたチェレーレ」から採られた由で、これもレシタティーヴォと緩急2部から成るアリアで構成される典型的な構成です。

この2曲で前半を終え、後半はティートの序曲から。短い序曲が終わるとクラリネットの二人は舞台を降り、係員が指揮者の横に譜面台と椅子をセットします。この光景を見て、“ははぁ~ん、バセットホルンは歌手の横で吹くんだ!”と納得。ひょっとすると譜面台と椅子はメイのために置かれたのかと早合点した人もいるかも・・・。
準備が整った所でメイ、藤井、コルステンの3人が登場。期待のアリアが始まります。これは前半の2曲とは人が違ったように見事な歌唱。音量的にも表現的にも一ランクアップした歌唱を披露します。ティートでバセットホルンが使われるのはこのアリアだけ、音楽も如何にもモーツァルトで、私は大好きな歌の一つ。バセットホルンを前面に出して歌うという演出に大満足の7分間でした。

バセットホルンが役目を終えると譜面台と椅子は撤去。クラリネットが使われないイドメネオのアリアに続きます。この辺りの楽器編成も楽員の出入りに合わせて考えられたものでしょう。エレクトラの激しい心情を歌ったドラマティックなアリア、ここで客席も一気に爆発します。
大歓声と拍手に応え、アンコールは「後宮よりの逃走」からブロントヒェンの軽快なアリア「何という喜び、何という楽しみ」。メイはブロンテというよりはコンスタンツェ歌いでしょうが、これは意外なプレゼント。客席は更に沸きます。

4年前に空振りに終わったメイのモーツァルトを聴けて満足ですが、最初と最後に交響曲を振ったコルステンにはやや不満。所謂ノン・ヴィブラートを取り入れ、アグレッシヴな今流行のモーツァルトで、何とも落ち着かない演奏。歌の伴奏ではほとんど気になりませんが、オーケストラ作品では指揮者としての限界を感じてしまいました。

最後にプログラム誌について。
9ページに取り上げられた作品の楽器編成が掲載されていますが、これが間違いだらけ。ティート序曲ではクラリネット2、トランペット2、ティンパニが落ちていますから、序曲が終わって二人のクラリネットが舞台を降りた意味が判りませんよね。
更にイドメネオでもホルンは2ではなく4だし、こちらもトランペットとティンパニが欠落していました。細かいことにツッコミを入れるな、と非難されるかもしれませんが、初歩的なミスでお粗末と言わざるを得ません。

 

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