スプリング・コンサートのサプライズ

先週末に東京を留守にしたのは家内の取材旅行の鞄持ちとして京都に出掛けたからですが、京都に行くからにはオーケストラも聴かなくちゃ。なぁ~んちゃってネ。
ということで世界一の観光都市・京都は桜だけじゃなく、もう一つの看板である京都市交響楽団がスプリング・コンサートを開催していました。こんなプログラムです。

アンダーソン/舞踏会の美女
宮川彬良編曲/ファンタジック!「白雪姫」~歌とほほえみを・ハイホー・いつか王子様が~
デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
~休憩~
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」第1楽章「海とシンドバッドの船」
ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル/ボレロ
指揮/広上淳一
コンサートマスター/渡邊穣
プロジェクト・マッピング製作/ART COMPLEX

実はこのコンサート、感想などは一切書かず、留守にした理由も秘密にしておく積りでした。でもね、出掛けてみるもの。行かなくては体験できないサプライズが待ち構えていました。記録のためにもやはり書いておくべきと考え直した次第。

プログラムそのものは上記の通りクラシック初心者にも十分楽しめる内容。実際私共の後列の皆さんはクラシックのコンサートは初めてのようで、ボレロは名前は知っている、という話題で盛り上がっていましたからね。
今回は最近流行のプロジェクト・マッピング付きで楽しんでもらうという企画で、所謂P席には観客を入れず、オルガン席一杯に色彩鮮やかな映像が映し出されていました。全作品ではなく、宮川編曲とパヴァーヌは通常の演奏。
魔法使いの弟子では箒のようなキャラが登場し、オルガンが水浸しになる仕掛け。恰もディズニー映画の一場面を見る様な楽しさでした。これなら耳に馴染の無いデュカス作品も退屈しなかったでしょう。

曲が進むに連れて光の洪水もクレッシェンドするボレロは、演奏も圧巻。“これまで聴いたボレロの中でも最高!”という賛辞が彼方此方から聞こえてきました。初心者の皆さんもこれには大興奮だったようで、拍手喝采も一気に爆発、広上/京響の名演が、また多くのクラシック・ファンを生み出したことは間違いなさそうです。

もちろんアンコールもあって、広上氏が客席に“皆さんも手拍子をお願いします”と声を掛け、もちろんパパ・シュトラウスのラデッキー行進曲。マエストロの的確な指示に客席の拍手もきちんとフォルテとピアノを叩き分け、指揮者が親指を立てる「グッド」の合図も飛び出しました。
会場も大いに沸き、オーケストラ・メンバーも引き揚げ始めてからが本当のサプライズ。オーケストラのメンバーにも知らされていなかった段取りに入ります。

マイクを持った広上氏が帰り支度を始めた客席に“チョッと待ってください”。氏は4月1日に広上/京都市響が第46回サントリー音楽賞を受賞したことを報告し、何より彼等を支えるファンと関係者一同への感謝の辞を述べます。その内容はこちら。

http://www.suntory.co.jp/news/2015/sfa0001.html

その感謝の印として、この日は広上自身が準備された(電子)ピアノを披露。曲は、以前に京響が滋賀公演を行った際に、そのためにだけ作曲されたアンコール曲で菅野祐悟が書いたピアノ曲「感謝」。
“指が錆び付いているから恥ずかしいなぁ~”と言いながら弾き始めた鍵盤は、さすがの腕前。学生時代にはショパンをさらっと弾いていたというだけあって、正にサプライズのアンコール、「感謝」でした。

実は京響は先般ミュージック・ペンクラブ音楽賞も受賞したばかりで、広上淳一が首席指揮者に就任してからの同団の躍進は目覚ましいばかり。スピーチにもあったように、広上にとっても生涯忘れることの無い充実した時間となっているのです。
彼の身上である地道な努力の積み重ねの結果、この日の演奏も恐らく日本のオーケストラが到達し得た最高のレヴェルの演奏を満喫できました。来月はヨーロッパ公演、月2回の定期開催と話題が尽きない京響ですが、客席には外国からの聴き手も多く見られ、その名声は愈々海外にも響き渡ることになるでしょう。
京響の今、聴くべし。

 

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