ケンタッキー・オークスはラヴリー・マリア

5月最初の金曜日、愈々チャーチル・ダウンズ競馬場のクラシックがやってきました。土曜日は世界が注目するケンタッキー・ダービーですが、その前日にはケンタッキー・オークスが行われました。
この日はG戦6鞍、GⅠも2鞍組まれており、この季節はアメリカ競馬の祭典となります。オークスは土曜日のメインですが、ここではレース順に紹介して行きましょう。

最初は第6レースとして行われたエッジウッド・ステークス Edgewood S (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。恐らく今年新設されたG戦で、今年からプログラムは更に豪華になる趣向です。firm の芝コースに8頭が登録していましたが、1番人気になる筈だったGⅠ馬サンセット・グロウ Sunset Glow が取り消してしまったため7頭立て。入れ替わって3対2の1番人気には、前走フロリダ・オークス(芝GⅢ)に勝ってG戦2連勝を目指すクォリティー・ロックス Quality Rocks が支持されました。
スタート・ダッシュ良く飛び出したのは4番人気(4対1)のフェザード Feathered 、これを3番人気(7対2)のレディー・ズズ Lady Zuzu が追走し、クォリティー・ロックスは4番手から3番手に上がって機を窺います。しかし馬場が良いこともあって逃げ馬の脚色は衰えず、結局は2番手に上がった本命馬を尻目に2馬身差で逃げ切ってしまいました。2馬身4分の3差でレディー・ズズも3着に粘り、所謂前残りの競馬です。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のフェザードは、去年夏、2戦目のサラトガで初勝利を挙げて以来の2勝目。去年はフリゼッテ・ステークス(GⅠ)3着、BCジュヴェナイル4着、スターレット・ステークス(GⅠ)2着とG戦でも好走し、今期はガルフストリームのアローワンス戦4着、前走ファンタジー・ステークス(GⅢ)7着と成績は下降気味でした。今回は芝コース初挑戦でのG戦初勝利。今後はどの路線を歩むのか、悩ましい所でしょう。

続いては第7レースのラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。去年からGⅠに昇格した古馬牝馬の一戦です。fast の馬場に9頭立て。どの馬が勝ってもGⅠ初勝利というメンバーでしたが、前走ロイヤル・デルタ・ステークス(GⅡ、以前はGⅠだったこともあるレース)を制したシーア・ドラマ Sheer Drama が2対1の1番人気。
飛び出したのは5番人気(7対1)のスイート・ウイスキー Sweet Whisky で、後続を引き離しての思い切った逃げ。流石にペースが速かったか、スイート・ウイスキーは第4コーナーで馬群に飲み込まれると、前半6番手で待機した4番人気(5対1)のモーリー・モーガン Molly Morgan が内ラチ一杯を衝いて抜け出すと、4番手追走から外を回った本命シーア・ドラマの追撃を4分の3馬身抑えての逆転劇でした。2番手を追走し、ゴール寸前で本命馬に頭差交わされた2番人気(7対2)のゴールド・メダル・ダンサー Gold Medal Dancer が3着。
デール・ロマンス厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のモーリー・モーガンは、去年のこのレースで2着だった6歳馬で、去年は譜ルール・ド・リ・ステークスとチルッキ・ステークスとGⅡ戦には2勝していました。今期初戦となった前走ロイヤル・デルタ・ステークスでは本命シーア・ドラマの3着しており、ここで雪辱を果たしたことにもなります。

チャーチル・ダウンズ競馬場のクラシック・ウィーク初日、3つ目のG戦は第8レースのアリシェバ・ステークス Alysheba S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。1頭が取り消して9頭立て。22日前にキーンランドでベン・アリ・ステークス(GⅢ)を5馬身差で圧勝したプロトニコ Protonico が7対5の1番人気。
レースはブービー人気(30対1)のデンズ・レガシー Den’s Legacy が逃げ、プロトニコは2番手でこれをピタリとマーク。第4コーナーで逃げ馬を交わしたプロトニコに、3番手を進んだ6番人気(19対1)のノーブル・バード Noble Bird が外から並び掛け、直線は2頭の長い叩き合い。一旦はノーブル・バードが頭差を付けましたが、本命馬が二の足を使って差し換えし、並んだところがゴール。写真判定の結果、頭差でプロトニコが接戦を制していました。3馬身4分の1差離れた3着には3番人気(7対1)のネックン・ネック Neck’n Neck 。
トッド・プレッチャー厩舎、このレース3勝目となるジョン・ヴェラスケス騎乗のプロトニコは、チャーチル・ダウンズは去年秋のクラーク・ハンデ(GⅠ)2着以来のこと。次走は6月13日に行われるスティーヴン・フォスター・ステークスでGⅠを目指すことになりそうです。

第9レースは芝の短距離戦、トゥイン・スパイアーズ・ターフ・スプリント Twin Spires Turf Sprint (芝GⅢ、4歳上、5ハロン)。2頭が取り消して10頭立て。アメリカでは5ハロンのG戦は珍しく、7対2の1番人気に支持されたグッド・ディード Good Deed は、この距離のスペシャリストとでも呼べるような存在。6歳馬ですが、5歳時以外は全て一般ステークスに勝っており、3歳時にはオークス・デイのGⅢ戦エイト・ベルズ。ステークスで2着になった経歴もあります。
レースは外枠発走の馬が好スタートで、10番枠発走の5番人気(5対1)パワー・アラート Power Alert の逃げ切り勝ち。5番手を進んだ大外枠発走の4番人気(9対2)アンドラフテッド Undrafted がゴール前で追い上げ、勝馬とは4分の3馬身差の2着。同じく4分の3馬身差の3着にも11番枠スタートから2番手を追走していた2番人気(4対1)のサムシング・エクストラ Something Extra が3着に入り、グッド・ディードは6番手追走から追い上げるも4着まで。勝時計55秒17はコース・レコードを更新する好タイムで、外枠発走から先行した馬の勝負になりました。
ブライアン・リンチ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のパワー・アラートは、短距離馬には定評があるオーストラリア出身の5歳せん馬。去年はオーストラリアで短距離のハンデ戦を中心に走ってきましたが、アメリカに転戦してからは12月のガルフストリームで5ハロンのアローワンス戦、3月の一般ステークス(シルクス・ラン・ステークス)と連勝し、前走キーンランドのシェイカー・タウン・ステークス(芝GⅢ)では4着でした。アメリカでグレードアップしたスプリンター、これからも芝の短距離で先行力を活かしたレースが出来れば、更に活躍の場は広がるでしょう。

オークスの一つ前は、第10レースのエイト・ベルズ・ステークス Eight Belles S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。オークスの距離は長過ぎるというメンバー、1頭が取り消して11頭立て。サンタ・アニタで一般ステークスを2連勝してきたエンシャンティング・レディー Enchanting Lady が5対2の1番人気。
3番枠から出た6番人気(8対1)のエカティーズ・フィートン Ekati’s Phaeton と、9番枠発走の7番人気(16対1)スーパー・サックス Super Saks のハナ争い。これを4番手で追走した3番人気(5対1)のプロミス・ミー・シルヴァー Promise Me Silver が第4コーナーでは2番手まで上がり、直線で外から並び掛けると、後方4番手から追い込む同じ3番人気のコールバック Callback に1馬身4分の1差を付けて優勝。最後方から一気に追い込んだ9番人気(39対1)のスキャット・ミーンズ・ゴー Scat Means Go が頭差で3着に入り、人気のエンシャンティング・レディーは後方2番手を進むも伸びを欠いて9着敗退に終わりました。
ブレット・カルホウン厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のプロミス・ミー・シルヴァーは、これがG戦初挑戦ながらここまで8戦全勝。これまで6つの異なった競馬場で一般ステークスなど快進撃を続けており、チャーチル・ダウンズは初体験でした。前走はオークローン・パークの一般ステークス(インスタント・レーシング・ステークス)に勝っており、連勝記録がどこまで伸びるかに注目です。

そして愈々ケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。フル・ゲート14頭の所に15頭が登録していましたが、ポイント上位の14頭から取り消す馬は無く、ピース・アンド・ウォー Peace and War が除外となっての14頭立て。サンタ・アニタ・オークスの覇者ステラー・ウインド Stellar Wind が3対1の1番人気に支持されていました。
本命のステラー・ウインドはやや出遅れ気味のスタートから後方待機。スタートが良かった2番人気のカンド・コマンド Condo Command が先手を取ります。しかし直線に向くと2番手を追走していた9番人気(21対1)のアンジェラ・ルネー Angela Renee が逃げ馬を捉えて先頭に立ったところ、前半4番手から手応え良く2番手で直線に入った5番人気(6対1)のラヴリー・マリア Lovely Maria が一気に抜け出し、3番手追走を良く粘った11番人気(26対1)のシュック・アップ Shook Up に2馬身4分の3差を付ける完勝でした。1馬身差で後方11番手から追い込んだ3番人気(5対1)のアイム・ア・チャッターボックス I’m a Chatterbox が3着に飛び込み、本命ステラー・ウインドも後方から伸びたものの4着に終わっています。
勝ったラヴリー・マリアと3着アイム・ア・チャッターボックスは、共にラリー・ジョーンズ師の管理馬で、師は2008年のプラウド・スペル Proud Spell 、2012年のビリーヴ・ユー・キャン Believe You Can に続き3度目のケンタッキー・オークス制覇。オーナーで政治家のブレトン・ジョーンズ氏も同じ馬で3度目のオークスとなります。勝利騎手カーウィン・クラークは今年56歳の大ヴェテランで、GⅠレースそのものも先月アシュランド・ステークスをラヴリー・マリアで制したのが初制覇でした。クラークがレース後感涙に咽んだのは当然の光景です。

最後に、先週キャンセルを紹介したローン・スター・パーク競馬場のテキサス・マイル・ステークスが昨日に延期されましたが、GⅢが剥奪されたため、当欄では取り上げないことにしました。

 

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