2017ベルモント競馬フェスティヴァル3日目

木曜日から3日間続いてきたベルモント・パーク競馬場の競馬祭り、最終日の6月10日は三冠レースの最終戦ベルモント・ステークスをフィナーレに据え、一日G戦9鞍の正に祭典です。
当日の朝早々とエピカリスがベルモント出走を断念したので、ここはレース順に一つづつ取り上げていくことにしました。

最初は第3レースとして行われたブルックリン・インヴィテーショナル Brooklyn Invitational (GⅡ、4歳上、12ハロン)。かつては古馬最高峰のレースでしたが、今は数あるGⅡ戦の一つ、何とか招待レースにして出走馬を確保するのが現実のようです。それでも2頭が取り消して6頭立て、チリ産馬で前走トライアル(フラット・アウト・ステークス、一般ステークス、11ハロン)を11馬身差で圧勝したトゥー・ブルータス Tu Brutus が1対2の断然1番人気。
そのトゥー・ブルータスがスタートから先頭に立って逃げ切りを図りましたが、先ず3番手を進んだ4番人気(9対1)のサニー・リッジ Sunny Ridge が仕掛けて本命馬を外から捉えて直線。しかし2番手を追走していた3番人気(4対1)のウォー・ストーリー War Story が更に外から追い上げ、サニー・リッジを2馬身半捉えてマラソンを制しました。更に2馬身差でトゥー・ブルータスが3着。
ホルヘ・ナヴァロ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のウォー・ストーリーは、これがG戦初勝利となる5歳せん馬。3歳時にはルイジアナ・ダービー(GⅡ)3着からケンタッキー・ダービーに挑んで16着。去年もBCクラシックに出走して8着の後、アケダクトで一般ステークス(クイーンズ・カントリー・ステークス)に勝っていました。前走4月のチャールズ・タウン・クラシック(GⅡ)3着からの好走です。

第4レースは、この日6鞍組まれているGⅠ戦の第1弾、エイコーン・ステークス Acorn S (GⅠ、3歳牝、8ハロン)。1頭が取り消して7頭立てとなり、ここはケンタッキー・オークスを鮮やかに差し切って以来となるエイベル・タスマン Abel Tasman が2対1の1番人気。オークスがフロックではなかったことを証明したいところでしょう。
6番人気(11対1)のフロリダ・ファビュラス Florida Fabulous が逃げ、エイベル・タスマンは指定席の最後方待機。2番手に付けた4番人気(6対1)のベンナー・アイランド Benner Island が前を捉えて直線に向くとほぼ同時、内を通って徐々に進出してきた本命馬が直線では内ラチ沿いに抜け出し、5番手から伸びる2番人気(僅差の2対1)のソルティー Salty との競り合いを制して人気に応えました。4馬身半差でベンナー・アイランドが3着。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のエイベル・タスマンに付いてはケンタッキー・オークス・レポートをご覧ください。2歳時のスターレット・ステークスを含め、これが三つ目のGⅠ制覇。決してオークスはフロックではなかったと断言できましょう。次は夏のサラトガでアラバマ・ステークス(GⅠ)、GⅠ戦3連勝を目指します。

第5レースのオグデン・フィップス・ステークス Ogden Phipps S (GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)は、BCディスタッフへの優先出走権が与えられる古馬牝馬GⅠ戦。7頭立てながら、去年の3歳牝馬チャンピオンのソングバード Songbird がシーズン初戦を迎えるとあって1対5の圧倒的1番人気。
いつものようにスタートから主導権を取ったソングバード、第4コーナーで2番手でマークした3番人気(7対1)のペイド・アップ・サブスクライバー Paid Up Subscriber に内から交わされてスタンドがどよめく場面もありましたが、直線では問題なくこれを競り落とし、最後は1馬身差を付けて女王の貫禄を見せ付けました。5番手を進んだ4番人気(9対1)のハイウエイ・スター Highway Star が2馬身半差の3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、又もマイク・スミスが騎乗したソングバードは、これが何とG戦8勝目。何しろ負けたのは去年のBCディスタッフで女王ビホールダー Beholder の2着のみ。13戦12勝、このあとのローテーションがどうであろうとも、最大目標はBCです。獲得した優先出走権は問題にはなりません。

GⅠ戦は一息入れ、第6レースは芝の短距離戦、ジャイプル・インヴィテーショナル Jaipur Invitational (芝GⅢ、4歳上、6ハロン)。firm の馬場に10頭が出走し、前走チャーチル・ダウンズのターフ・スプリント(GⅢ)を制したグリーン・マスク Green Mask が2対1の1番人気。
レースは2番人気(7対2)で去年このレースをレコードで制したピュア・センセーション Pure Sensation が逃げましたが、好スタートから後方3番手にまで下げていた3番人気(4対1)のディスコ・パートナー Disco Partner が内ラチ沿いに進出、直線では後退する馬を巧みに捌いて突き抜けると、5番手から伸びる本命グリーン・マスクを半馬身抑えての優勝です。7番手から追い込んだ9番人気(18対1)のホールディング・ゴールド Holding Gold が更に半馬身差の3着に入り、ピュア・センセーションは4着で連覇成らず。勝時計1分5秒67は、何と去年ピュア・センセーションが出した1分6秒76を1秒近くも更新する世界レコードというオマケ付きでした。
クリストフ・クレメント厩舎、イラッド・オルティス騎乗のディスコ・パートナーは、去年の2着馬。クレメント師はピュア・センセーションの調教師であり、別の馬で連覇したことになります。G戦は初勝利となる5歳牡馬で、今期は4月に同じベルモントの一般ステークス(エルーシヴ・クオリティー・ステークス)に勝って始動し、ステークス2連勝。

第7レースは、3歳限定の短距離戦ウッディー・スティーヴンス・ステークス Woody Stephens S (GⅡ、3歳、7ハロン)。11頭が出走し、サンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)12着からの巻き返しで前走ラザロ・バレラ・ステークス(GⅢ)を制したアメリカン・アンセム American Anthem が9対5の1番人気。
2番人気(4対1)リクルーティング・レディー Recruiting Ready の逃げを4番手で追走したアメリカン・アンセム、5番手から連れて伸びる8番人気(30対1)のジュゼッペ・ザ・グレート Giuseppe the Great に3馬身4分の1差を付けて堂々人気に応えました。逃げたリクルーティング・レディーが粘って2馬身半差の3着。
勝利コンビはボブ・バファート師とマイク・スミス騎手。この日はエイコーンに続くG戦勝ちで、スミス騎手はソングバードも含めてG戦ハットトリック完成となりました。アメリカン・アンセムもG戦2連勝、3歳の短距離チャンピオンを目指します。

そして第8レースがジャスト・ア・ゲイム・ステークス Just a Game S (芝GⅠ、4歳上牝、8ハロン)。7頭が出走し、前走ダービー当日にチャーチル・ダウンズ・ディスタッフ・ターフ・マイル(芝GⅡ)を制したロカ・ロホ Roca Rojo が2対1の1番人気。
5番人気(8対1)のサッシー・リトル・リラ Sassy Little Lila が逃げ、ロカ・ロホは後方2番手。しかし本命馬の更に後、最後方に付けていた2番人気(3対1)のアントノー Antonoe の末脚が切れ、逃げ粘るサッシー・リトル・リラを4分の3馬身捉えて鮮やかに差し切り勝ちを決めました。3番手を進んだ4番人気(3対1)のディッキンソン Dickinson がハナ差の3着。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のアントノーは、去年までフランスで走っていた4歳馬。2歳時にはデビューから2連勝でオマール賞(G4Ⅲ)を制してクラシック候補に上がりましたが、仏1000ギニー12着を含めてその後は勝鞍に恵まれませんでした。今年4月にキーンランドでアメリカ・デビューとなるアローワンス戦に勝っての2連勝で、GⅠ戦初勝利。ジャドモント・ファームがアメリカで期待する芝古馬牝馬路線を代表する1頭になるでしょう。

続いてもGⅠ戦のメトロポリタン・ハンデキャップ Metropolitan H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。これもBCへの優先出走権対象レースで、12頭立て。2歳時にGⅠ戦に勝ち、今期もローン・スター・パークでスティーヴ・セクストン・マイル(GⅢ)の圧勝を含めて2連勝中のモー・スピリット Mor Spirit が5対2の1番人気。
前走はスタートからゴールまで独走だつたモー・スピリット、今回は逃げる2番人気(3対1)シャープ・アズテカ Sharp Azteca を2番手でマークし、楽にこれを捉えるとそのままシャープ・アズテカを6馬身4分の1差引き離す圧勝劇でした。7番手から伸びた6番人気(15対1)のトミー・マチョ Tommy Macho が更に3馬身4分の1差で3着。
又してもボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のチームはこのひ3つ目のG戦。スミス騎手は一日G戦4勝の快挙です。2歳時に勝ったロス・アラミトス・フューチュリティーに続く二つ目のGⅠとなったモー・スピリット、今年のBCダート・マイルに最も近い存在となったことは間違いないでしょう。

ベルモント・ステークスの一つ前、第10レースとして行われたのがマンハッタン・ステークス Manhattan S (芝GⅠ、4歳上、10ハロン)。9頭が参戦し、イギリスからアメリカに転じてきた去年のエクリプス・ステークス(GⅠ)3着のタイム・テスト Time Test が6対5の1番人気。英国ではGⅡ戦に2勝、ジャドモント・スタッドの所有馬で前走フォート・マーシー・ステークス(芝GⅢ)でも2着しており、ここはアメリカでの初勝利が期待されます。
逃げたのは最低人気(69対1)のアプリケイター Applicator 、これを4番手で追走していた8番人気(27対1)のアセンド Ascend が交わして先頭に立つと、そのあと5番手でマークしていた本命馬の追撃を1馬身4分の1差退けるサプライズとなりました。7番手から伸びた5番人気(8対1)のサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy が首差の3着。
グレアム・モーション厩舎、ホセ・オルティス騎乗のアセンドは、何とこれがG戦初挑戦でいきなりのGⅠ戦制覇。去年の最終戦キーンランドのアローワンス戦に勝ち、今期初戦でステークス初挑戦の一般ステークス(ヘンリー・S・クラーク、ステークス、ローレル)にも勝って、3連勝とした5歳せん馬。勝馬の成長度も大したものながら、ここは本命で敗れたタイム・テストへの失望の方が大きかったかも。

そして愈々ベルモント・ステークス Belmont S (GⅠ、3歳、12ハロン)。今年はケンタッキー・ダービー馬もプリークネス勝馬も回避し、日本から遠征したエピカリスにはチャンスと言われていました。しかしご存知のように、レース前の調教で脚部不安が見つかり、競馬場の獣医が勧告したこともあって取り消し、結局11頭がゲートインしました。混戦の中から5対2の1番人気に支持されたのは、ダービー10着のアイリッシュ・ウォー・クライ Irish War Cry で、ダービーのトライアルの一つウッド・メモリアル・ステークス(GⅡ)を勝っていた馬です。
そのアイリッシュ・ウォー・クライがスタートからハナに立って逃げ切る作戦でしたが、4番手を進んだ2番人気(5対1)のタプリット Tapwrit が第4コーナーで外から本命馬に並び掛けると、直線は2頭のマッチ・レース。最後タプリットがアイリッシュ・ウォー・クライに2馬身差を付けて最後のクラシックを制覇しました。5番手を進んだ8番人気(12対1)で勝馬と同厩のパッチ Patch が3着に入り、最低人気(23対1)のハリウッド・ハンサム Hollywood Handsome は途中、ジェルー騎手の鐙が外れたため競争を中止しています。
勝ったタプリットは、トッド・プレッチャー厩舎、ホセ・オルティス騎乗。プレッチャー師は2013年のパレス・マリス Palace Malice に続く2度目のベルモント・ステークスとなり、オルティス騎手は三冠レースでの初勝利となりました。母アビーリング・ゾフィー Appealing Zophie も2歳時にGⅠのスピナウェイ・ステークスに勝っており、母子揃ってのGⅠ馬となります。タプリットはタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)に勝ってクラシック路線に乗り、ブルー・グラス・ステークス(GⅡ)5着から挑んだケンタッキー・ダービーが、アイリッシュ・ウォー・クライに先着して6着。プリークネスは回避してベルモントに臨むローテーションでした。

さて昨日はチャーチル・ダウンズ競馬場でもG戦一鞍、ミント・ジュレップ・ステークス Mint Julep S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)が行われました。firm の馬場に1頭が取り消して6頭立てとなり、ダービー・デイのチャーチル・ディスタッフ・ターフ・マイル(芝GⅡ)で2着したビリーヴ・イン・バーティー Believe in Bertie が3対5の1番人気。
そのビリーヴ・イン・バーティーが逃げましたが、4番手を進んだ3番人気(5対1)のダナ・ブルーハ Dona Bruja が伸び、本命馬を1馬身半捉えて優勝。5馬身4分の1の大差が付いて、2番手を追走していた4番人気(9対1)のスカイ・マイ・スカイ Sky My Sky が3着に入っています。
イグナシオ・コレアス厩舎、デクラン・キャノン騎乗のダナ・ブルーハは、これがアメリカ・デビューとなる5歳馬。出身地のアルゼンチンではラ・プラタ金杯(芝GⅠ、2000メートル)を含めてG戦に4勝、10戦8勝2着2回と言う強豪で、南北アメリカでGⅠ馬となったことになります。

 

 

 

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