ファウンドのサプライズ

ニューマーケットのギニー開催が終わった翌日、昨日はアイルランドのカラー競馬場でG戦が2鞍行われました。馬場は soft to heavy 、直線は heavy と極めて重い状態。

先ずはアサシ・ステークス Athasi S (GⅢ、3歳上牝、7ハロン)。以前は3歳馬に限定されていたため愛1000ギニー、乃至はオークスのトライアル的な意味がありましたが、現在は古馬にも開放されており、その意味合いは薄れた感があります。
それでも最近5年間では3歳馬が4勝しており、3歳馬にとってはクラシックに向かうだけの素質があるか否かを試す機会でもありましょう。今年は1頭が取り消して6頭立て。その半数が3歳馬でした。

ほとんどの競馬ファンが驚いたのは、前日の1000ギニーの本命と目されてきたファウンド Found が出走してきたこと。クラシックを蹴ってまで臨んでくるGⅢ戦とも思えません。当然ながら5対4の1番人気でしたが、単勝2倍を切らなかった(オッズ・オン)のは、やはりローテーションを疑問視する向きがあったからでしょうか。
2番人気(4対1)の5歳馬アライヴ・アライヴ・オー Alive Alive Oh が逃げ、ムーア騎乗のファウンドは5番手に待機。馬場の中央を通って先頭に立った時はそのまま楽勝かに見えましたが、前半4番手に付けていた離れた最低人気(25対1)のアイヴィー・ガーデンズ Iveagh Gardens が内から馬群を割って抜け出し、並ぶ間も無くファウンドを2馬身切って捨てるサプライズ。3馬身差で最後方を進んだ5番人気(8対1)のアヴェニュー・ガブリエル Avenue Gabriel が3着です。

先ず大波乱を演出したアイヴィー・ガーデンズは、4歳馬ながらこれが未だ6戦目。2歳時はネイヴァンのデビュー戦で2着しただけ。3歳の3月にカラーで初勝利を挙げた後はずっと競馬に使われず、10月になって漸くドイツ(ハノーヴァー)に遠征してリステッド戦で2着。続いて11月にはフランスの地方競馬(フォンテンブロー)に遠征し、リステッド戦に出走したものの11着と大敗し、3歳シーズンを終えます。そして今年、前走パーク・エクスプレス・ステークス(GⅢ)で初めてG戦に挑戦しましたが、12頭立ての8着。どう考えてもクラシックで本命になる馬に勝てるとは思いませんからね。
同馬を管理するのはチャールズ・オブライエン。同じ名前でもファウンドのエイダン・オブライエンとは姻戚関係はありません。騎乗したのは42歳のナイアル・マクローンというジョッキーで、余り平場のG戦には縁の無い方です。これまでアイヴィー・ガーデンズが走ってきたコースは、全て不良馬場。3歳の夏場を全休したのは、恐らく馬場が硬くなるからだったのでしょう。重馬場限定の競走馬というタイプと思われます。今後も良馬場でこの馬が走るのを見ることは無いと見て良いかも・・・。

さて敗れたファウンド、どうやら1000ギニーを回避したのは調教が予定通りに進まなかったことが原因のようですが、敢えてその翌日にここを使ったのは、愛1000ギニーに出走する前に一叩きしたかったから、という判断のようです。目標はあくまで英オークスですが、この日の敗戦でオッズは4対1から6対1に下がりました。この結果、1000ギニーを制したレガティッシモ Legatissimo が3対1の1番人気に上がっています。
エイダン・オブライエン師は失望しているのかと思いきや、結果は満足とのこと。彼女の走りを見ても明らかに馬場に脚を取られていましたし、スムーズに先頭に立った瞬発力は健在。ここはあくまでも調教代わりの試走と見るべきでしょう。

そしてもう一鞍はムーアスブリッジ・ステークス Mooresbridge S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン)。こちらは4歳馬2頭、6歳馬2頭と、4頭立ての寂しいメンバー。前走レパーズタウンのリステッド戦に勝った4歳のファシネイティング・ロック Fascinating Rock が2対5の1番人気。前のファウンドのオッズを遥かに上回る信頼度でした。
先ず3番人気(10対3)のユーフレイシア Euphrasia が逃げ、ファシネイティング・ロックは2番手追走。難なく先頭に立った本命馬、最後方から仕掛ける2番人気(7対2)の6歳馬パリッシュ・ホール Parish Hall を1馬身4分の3差抑えて人気に応えました。3番手追走の4番人気(12対1)ワルツィング・マチルダ Waltzing Matilda が2馬身差で3着。

デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のファシネイティング・ロックは、去年G戦を含めて3連勝して英ダービーに挑戦するも8着。続く愛ダービー5着で3歳シーズンを終えていました。4歳で復帰して2連勝、スマーレン騎手は手応えを感じたようで、近い将来にはGⅠ路線に戻りたいとコメント。
ウェルド師も同馬の気性面での成長を強調し、去年よりリラックスして走っていることを好調の要因に挙げていました。但し固い馬場は嫌うタイプの馬で、馬場が重くなったGⅠ戦こそ、この馬の狙い目でしょう。

 

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