新たなオブライエン厩舎のクラシック候補

水曜日にチェスター競馬場で開幕した春開催、以前はG戦が5鞍組まれていましたが、その中からチェシャー・オークスとディー・ステークスがリステッド戦に降格し、現在は3鞍がGⅢに留まっています。

5月7日の昨日はその二日目、2鞍のG戦が行われました。英国北部は雨も多く、馬場は soft 。最初のハックスレー・ステークス Huxley S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン75ヤード)は2頭が取り消しての5頭立て。ここ10年は1番人気が好成績を残しているこのレース、今年の1番人気(6対4)は去年ロイヤル・アスコットでGⅢ(ターセンテナリー・ステークス)に勝っているキャノック・チェイズ Cannock Chase 、スタウト厩舎・ムーア騎乗の4歳馬です。
レースは3番人気(4対1)のマーヴェリック・ウェイヴ Marverick Wave が逃げ、キャノック・チェイズは3番手追走。ご存知のようにチェスター競馬場は英国では小回りコースで、本命馬が一旦は逃げ馬を交わしましたが、小回りの利を活かしたマーヴェリック・ウェイヴ、再び先頭を奪い返すとキャノック・チェイズを半馬身巻き返しての逆転劇でした。首差で2番人気(2対1)のエア・パトロール Air Patrol が3着、こちらも小回りが走り難そうな内容です。

ジョン・ゴスデン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗のマーヴェリック・ウェイヴは、これが今期既に4戦目。去年の秋から前走まではずっとポリトラック・コースを使われており、芝は久し振りでした。今年はリングフィールドのハンデ戦に勝ち、ウインター・ダービー・トライアルが5着、そして前走チェスターのハンデ戦にも優勝。2連勝でG戦初勝利となる4歳馬です。

続いてはダービーのトライアルとして知られるチェスター・ヴァース Chester Vase (GⅢ、3歳牡せん、1マイル4ハロン66ヤード)。小回りコースが却ってトリッキーなエプサムにも応用でき、本番の適性を見極めるのにも好都合と考えられているトライアルですね。6頭が出走し、最近8年で5頭の勝馬を送り出しているエイダン・オブライエン厩舎のハンス・ホルバイン Hans Holbein が7対4の1番人気。一昨年のルーラー・オブ・ザ・ワールド Ruler of the World と同じコースを辿るかが見所でしょう。
事前にジョセフ・オブライエンから“きっちり仕上がっているので、行く馬がいなければ思い切って前で”というアドヴァイスを受けていたライアン・ムーア、スタートから本命馬を先頭に立たせます。相手と目される馬たちが後方に待機する中、全く危な気の無いレース内容で、後方から追い込む3番人気(11対2)のストーム・ザ・スターズ Storm The Stars に1馬身4分の3差を付けて作戦通りの逃げ切り勝ち。3着にも半馬身差で最後方から4番人気のメドラーノ Medrano が追い込みました。

勝ったハンス・ホルバインは、去年9月にゴウラン・パークでデビューして4着。2歳戦はこの1戦のみで、今期はコークの10ハロンで2着、前走レパーズタウンの10ハロンで初勝利を挙げていました。ここまでの3戦は全てジョセフ・オブライエンが騎乗してきましたが、ここでは初めてライアン・ムーアが跨っています。ムーアも同馬の能力の高さを確認、ダービーのオッズはレース前の40対1から25対1に上がりました。血統も愛セントレジャー馬サン・フロンティエー Sans Frontieres の弟と長距離タイプ、オブライエン厩舎の新たなダービー候補誕生です。
オブライエン厩舎のクラシック候補と言えば、前日のチェシャー・オークス Cheshire Oaks (リステッド、3歳牝、1マイル3ハロン79ヤード)を6馬身差で圧勝したダイアモンズアンドルビーズ Diamondsandrubies という馬もエイダン・オブライエン厩舎・ライアン・ムーア騎乗のコンビ。この馬にはオークスに12対1のオッズが出されました(レース前は25対1)。もちろん同じクールモア所有で厩舎の異なる1000ギニー馬レガティッシモ Legatissimo もオークスに向かうでしょう。ムーアはオブライエン師の主戦騎手ですから陣営の馬を選択しますが、ダービーにしてもオークスにしてもムーアがどれを選ぶかが、今年のクラシックの最大の話題になりそうです。

 

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