2015クラシック馬のプロフィール(3)

英ギニーの2頭に続き、今回と次回は仏ギニー勝馬の血統プロフィールを取り上げます。最初はまんまと仏2000ギニーを逃げ切ったメイク・ビリーヴ Make Believe から。

ファイサル王子が所有するメイク・ビリーヴは、父マクフィー Makfi 、母ロージーズ・ポージー Rosie’s Posy 、母の父スアーヴ・ダンサー Suave Dancer という血統。2012年2月19日生まれ、G戦勝利はクラシックが最初という馬です。
父マクフィーは2010年の当日記でもその血統を詳しく紹介した英2000ギニー馬で、プロフィールはそちらも参考にして下さい。メイク・ビリーヴはマクフィーの初年度産駒に当たります。

早速牝系に入り、先ず母ロージーズ・ポージー(1999年 鹿毛)はバリー・ヒルズ師が管理した馬ですが、オーナーが三度も移ったという変わり種。走ったのは2歳から3歳までで、2歳時は2戦1勝、バース競馬場のデビュー戦に勝っています。
3歳時にも4度走りましたが勝てるまでに至らず、特に最後の2戦は共に最下位でしたし、その前のレースもブービーと、競走馬としてはほとんど見るべきものの無いままに繁殖に上がります。その産駒を例によって生年順に列記すると、

2004年 クラウン・オブ・ローズ Crown of Rose 鹿毛 牝 父トゥーブーグ Tobougg 未出走
2005年 ジェネラス・ソート Generous Thoutht 鹿毛 牡 父カドー・ジェネルー Cadeaux Genereux 8戦3勝2着2回3着1回 2歳時にポンテクラフトとドンカスター、3歳時にはニューマーケットで勝ち、G戦はジャージー・ステークス(GⅢ)に一度だけ挑戦するも7着
2007年 デュバウィ・ハイツ Dubawi Heights 鹿毛 牝 父デュバウィ Dubawi 15戦5戦2着4回3着1回のGⅠ2勝馬で、詳細は後述
2008年 ウェルシュ・ダンサー Welsh Dancer 鹿毛 せん 父デュバウィ 18戦未勝利2着2回
2009年 レッド・コースト Red Coast 鹿毛 牡 父ケイプ・クロス Cape Cross 日本の中央競馬で2戦未勝利 日本ではレッドコーストの名で出走
2010年 ヘイジー・デイズ Hazy Days 鹿毛 せん 父グリーン・デザート Green Desert 17戦未勝利、入着も無し
2012年 メイク・ビリーヴ
2013年 エスティクマール Estikmaal 鹿毛 牡 父オアシス・ドリーム Oasis Dream 未出走 今年の2歳馬

以上、2007年のデュバウィ・ハイツと今年の仏2000ギニー馬以外は取り立てて名前を挙げるほどの馬は出ていません。
そのデュバウィ・ハイツは2歳時にイギリスで6戦し勝てませんでしたが、未勝利のまま臨んだ8月のラウザー・ステークス(GⅡ)で2着、10月のロックフェル・ステークス(GⅡ)では6着した経験もあります。
ロックフェルを最後に3歳からはアメリカに転厩したデュバウィ・ハイツ、4歳時に漸く才能が開花し、ウイルシャー・ハンデ(GⅢ)、ゲイムリー・ステークス(GⅠ)、イエロー・リボン・ステークス(GⅠ)とG戦に3勝し、その年のBCフィリー・アンド・メア・ターフ6着を最後に引退します。

何と繁殖に上がったのは日本で、その初産駒はリーチザハイツ(鹿毛 牝 父ディープインパクト)と命名され、早ければ今年の2歳戦からデビューすることになります。その後はハーツクライ、キングカメハメハと交配されている由。母馬の日本での登録はドバウィハイツとなっていますから、これで検索してください。

続いて2代母マイ・ブランチ My Branch (1993年 鹿毛 父ディスタント・レラティヴ Distant Relative)。彼女もバリー・ヒルズ厩舎に所属し、2歳時は8戦して3勝。2戦目の7月にライポンの5ハロン戦で初勝利した他、ドンカスターで17頭立てのナーザリー戦と、エアのリステッド戦ファースト・オブ・クライド・ステークスに優勝、追い込みを得意とし、チーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ)ではブルー・ダスター Blue Duster の2着と健闘します。2歳時の最後は、前出デュバウィ・ハイツも14年後に出走することになるロックフェル・ステークスで3着でした。
3歳時も8戦したマイ・ブランチ、シーズン初戦の1000ギニーが4着、続く愛1000ギニーでも3着と入線して気を吐きましたが、7ハロンに戻ってから2戦続けて凡走。5戦目の9月にドンカスターのリステッド戦(京都セプター・ステークス、7ハロン)に勝って4勝目を挙げます。ニューマーケットのチャレンジ・ステークス(GⅢ)は3着。
4歳時も現役に留まりましたが、5戦して未勝利。2戦目にヘイドックのリステッド戦で4着したのと、3戦目にニューマーケットのクライテリオン・ステークス(GⅢ)でやはり4着したのが最も良い内容で、このシーズンを最後に繁殖に上がります。

マイ・ブランチの産駒では、2004年にGⅠの短距離戦ヘイドック・スプリント・カップを制したタンテ・ローズ Tante Rose に尽きるでしょう。この年はクラシック世代を終えた馬たちが参戦できるように古馬路線を充実させた年で、これに呼応する様にタンテ・ローズも4歳牝馬として現役に留まり、3戦全勝で短距離の頂点に立ったのでした。
因みに彼女は2・3歳時はその娘や孫娘同様バリー・ヒルズ師が管理していましたが、皮肉なことに才能が開花したのは4歳になってロージャー・チャールトン厩舎に転じてからのことです。

先を急ぎましょう。3代母ペイ・ザ・バンク Pay The Bank (1987年 鹿毛 父ハイ・トップ High Top)は8戦して2歳時に1勝した馬。勝ったのは短距離ですが、父のスタミナを受け継いで1マイル2ハロンまでのスタミナを持っていたと、レースホース誌は評しています。
4代母ゼブラ・グラス Zebra Grass (1977年 鹿毛 父ラン・ザ・ガントレット Run The Gantlet)も6戦2勝、5代母アシュ・ローン Ash Lawn (1965年 鹿毛 父シャーロッツヴィル Charlotsville)も5戦1勝と何れも勝馬で、アシュ・ローンはチェリー・ヒントン・ステークス(現在のGⅢ、当時パターン・レース・システムは導入されていません)2着の実績もあります。

些か駆け足気味になりましたが、5代母アシュ・ローンの別の娘スマッシュ Smash がロッキンジ・ステークス(現在はGⅠ)に勝ったブロークン・ハーテッド Broken Hearted の母になったことも付け加えておきましょう。

メイク・ビリーヴの牝系ではもう一代、6代母クリスタル・パレス Crystal Palace (1956年 鹿毛 父ソーラー・スリッパー Solar Slipper)にも言及する必要があります。
クリスタル・パレスの産駒では何と言っても2000ギニーとダービーの2冠、加えてエクリプス・ステークス、キングジョージ、コロネーション・カップ、プリンス・オブ・ウェールズ・ステークスと、現在のGⅠ格レースに6勝した名馬が挙げられます。

更にクリスタル・パレスの娘ではアシュ・ローンの他にも、①豪州でヴィクトリア・ダービー馬スタイリッシュ・センチュリー Stylish Century の4代母となったルミナ Lumina 、
②セントレジャー馬ライト・カヴァリー Light Cavalry と1000ギニー馬フェアリー・フットステップス Fairy Footsteps の兄妹を産んだグラス・スリッパー Glass Slipper 、
③フィリーズ・マイル勝馬クリスタル・ミュージック Crystal Music の2代母となったクリスタル・ファウンテン Crystal Fountain などの名繁殖牝馬が続出。
またフェアリー・フットステップも、愛2000ギニー、クィーン・エリザベスⅡ世ステークス、ムーラン・ド・ロンシャン賞に勝ったマイルの強豪デザート・プリンス Desert Prince の2代母となっており、このファミリーの華麗なクラシック馬を彩ってきましたし、将来はデュバウィ・ハイツから日本のクラシック馬も続くのではないかと期待されましょう。

ファミリー・ナンバーは1-s、ウェブ Web 系と呼ばれる牝系です。

 

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