2015クラシック馬のプロフィール(6)
クラシック勝馬の血統紹介、愈々後半戦に入ります。ダービーとオークスはクラシックの中でも最高峰とされ、プレミエ・クラシックと呼ばれますが、その第一弾は先の日曜日に行われた仏ダービーを制したニュー・ベイ New Bay です。
4戦目で最高のタイトルを獲得しましたが、G戦だけでなくステークスに勝ったのも初めて。前走の仏2000ギニー2着で一躍表舞台に登場し、しかも1番人気の支持を得ての優勝と言う快挙でした。
ニュー・ベイは父デュバウィ Dubawi 、母シナモン・ベイ Cinnamon Bay 、母の父ザミンダー Zaminder という血統。デュバウィの6年目の産駒で、その点だけを見れば長距離馬というよりマイラーというイメージになると思いますが、スタミナに富んだ牝系であることを見ていきましょう。
先ずデュバウィに関しては、去年の2000ギニー馬ナイト・オブ・サンダー Night of Thunder の項でかなり詳しく取り上げました。2014クラシック馬のプロフィール(1)をお読みください。
ということで早速牝系に入ります。しかしこの牝系も当シリーズで既に取り上げたファミリーで、ニュー・ベイの3代母が去年の愛2000ギニー馬でマイル・チャンピオンとなったキングマン Kingman の3代母と同じなのですね。従って本稿も2代母までを紹介すれば、後は去年の繰り返しと言うことになります。
母シナモン・ベイ(2004年 栗毛)は、ニュー・ベイ同様ハーリッド・アブダッラー所有、アンドレ・ファーブル調教の馬で、2歳から3歳まで7戦3勝2着2回という成績でした。
2歳デビュー戦で2着し、2戦目にシャンティーの1600メートルで初勝利。2歳は2戦のみで、3歳時は一般戦、リステッド戦(アンジェヴィル賞)と何れもシャンティーの1600メートル戦を連勝、果敢に仏オークスに挑戦します。しかしクラシックは14頭立ての10着、続くメゾン=ラフィットのリステッド戦(パガテル賞)も8頭立て4着に敗れ、サッさと引退してしまいました。
繁殖に入ってからの成績は、
2009年 マーゲイト Margate 牝 父ミッゼン・マスト Mizzen Mast アブダッラー所有、英国でチャールズ・ヒルズ師が管理し、2戦1勝。勝鞍は2戦目リングフィールドの8ハロン。
2010年 アイオワ・フォールズ Iowa Falls 鹿毛 牝 父ダンジリ Dansili アブダッラー所有、アンドレ・ファーブル厩舎。1600メートルから1900メートルまでに3戦して未勝利、入着も無し。
2012年 ニュー・ベイ
2013年 スパイス・トレイル Spice Trail 牝 父シャゼリゼ Champs Elysees 未出走。
ここまで見た限りでは、母も兄弟も勝鞍は全て1マイル。デュバウィ産駒ということを考慮すれば、ニュー・ベイはマイラーと決め付けてしまうかもしれません。
2代母はトレリス・ベイ Trellis Bay (1996年 鹿毛 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells)。ここでヨーロッパ最強の長距離血統サドラーズ・ウェルズが注入されることになります。
彼女もアブダッラー氏の所有馬で、調教したのはロジャー・チャールトン。6戦1勝の成績ですが、走ったのは10ハロンから16ハロンというステイヤーで、唯一となった勝鞍も12ハロンでのものでした。
トレリス・ベイの産駒で最も活躍したのは、シナモン・ベイの2歳上に当たるベラミー・ケイ Bellamy Cay (2002年 鹿毛 牡 父クリス Kris)。G戦はモーリス・ド・ニエィユ賞(GⅡ、2800メートル)とデドーヴィル賞(GⅢ、2400メートル)に勝ち、仏セントレジャーでも2着した文句無いステイヤーです。
そして3代母にバハミアン Bahamian (1985年 栗毛 父ミル・リーフ Mill Reef)が登場します。冒頭に紹介したように、バハミアンは去年のプロフィールで取り上げたキングマンと同じ。繰り返しになりますから、こちらを参照してください。
http://merrywillow.com/?p=3340
余談ですが、キングマンは英2000ギニーではかなり信頼度の高い本命と目されていましたが、結果は2着。この時勝ったのがデュバウィ産駒のナイト・オブ・サンダーだったというのも因縁めいていて面白いところ。複雑に入り組んだミステリーのようなストーリーです。
さてキングマンの項ではバハミアンの娘ではウェミス・バイト Wemyss Bight とコラライン Coraline を取り上げましたが、これにトレリス・ベイを追加すれば、この牝系の最新記事になる訳です。
ところで去年のプロフィールでは5代母ソルバス Sorbus まで取り上げましたが、今回はこれに若干付け加えましょう。
ソルバスの母、即ちニュー・ベイの5代母はセンサーシップ Censorship (1969年 栗毛 父プリンス・ジョン prince John)で、アメリカで10戦2勝し、4歳の時にアイルランドに売却されました。
更に遡ると、6代母シックスペンス Sixpence (1951年 栗毛 父バリオーガン Ballyogan)はチーヴリー・パーク・ステークス、フェニックス・ステークスと現在のGⅠに相当するレースに勝った馬で、サンタ・アニタ・ダービーとハリウッド・ダービー勝馬のフォー・アンド・トゥエンティー Four-and-Twenty の母となり、シェラ・マドレ・ハンデ(現在のGⅠ)勝馬ディプロマット・エージェント Diplomat Agent の2代母でもあります。
また7代母ダミアンズ(1942年)からは、愛1000ギニーのモア・ソー More So 、愛ダービーのウィーヴァーズ・ホール Weaver’s Hall も出ているクラシックに強い牝系と言えましょうか。
ファミリー・ナンバーは19。デヴィルズ・オールド・ウッドコック・メア Devil’s Old Woodcock Mare を基礎とする牝系です。
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