ニューマーケット・ホートン・ミーティング

昨日の土曜日、ニューマーケット競馬場でホートン開催が行われました。今年のニューマーケットを締め括る開催、英国競馬としても最後の大きな開催です。
日程的に10月第1週のロンシャンと最終週のアメリカ・ブリーダーズカップ・ウィークに挟まれて近年ではやや影が薄くなった感がありますが、二日間の開催の二日目は全7レースのうち6レースがパターン・レース、残りの一つも伝統あるハンデ戦、セザレウィッチ・ハンデですから、英国競馬ファンとてしては見逃せません。
レース順に紹介すると、
チャレンジ・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)は当初の登録から2頭取り消して15頭立て。7ハロンというやや中途半端な距離ながら、好メンバーが揃いました。
勝ったのは1番人気(9対2)に支持されたスティミュレーション Stimulation 。ハギー・モリソン厩舎、ダリル・ホランド騎乗。
逃げたキャット・ジュニア Cat Junior を1馬身4分の1差し切っての優勝です。3着は半馬身差でラー・ライブ Laa Rayb 。
スティミュレーションは、シーズン初戦でフリー・ハンデキャップ(これも7ハロン)を制した馬。本番の2000ギニーは7着でしたが、その後も堅実に走り、前走はトルコ、地元のGⅠホース2頭を相手に好走していました。
スティミュレーション、来年はマイル路線を歩む計画で、取り敢えずはロイヤル・アスコットのクィーン・アンを目指す由。
デューハースト・ステークス(GⅠ、2歳、7ハロン)は13頭立て。エイダン・オブライエン厩舎の無敗馬リップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle が6対4の圧倒的1番人気に支持されましたが、何と7着惨敗。オブライエン厩舎のGⅠ快進撃も、ここに来てスランプに陥った感があります。この敗戦についても未だコメントは入っていません。
で、勝負は3頭が横一戦の大接戦。判定にも暫く時間が掛かったほどです。
結局ハナ差、ハナ差の判定となった勝馬はインテンス・フォーカス Intense Focus 、2着はミルリーフ・ステークスの勝馬ロード・シャナキル Lord Shanakill 、3着はフィンジャーン Finjaan でした。
インテンス・フォーカスはケヴィン・マニングの騎乗、調教師はジム・ボルガーさん。ボルガーと言えば、デューハーストを2年連続で制覇していますから、これで3連覇達成です。
前2年はテオフィロ、ニュー・アプローチと、圧倒的な人気馬で制していましたから、今年はチョッと味わいの異なる優勝だったでしょう。
インテンス・フォーカスはこれが9戦目というのがやや気になります。クラシックを狙う器としては使い過ぎ。これが2勝目です。
前走はロンシャンのGⅠ、ジャン・リュック・ラガルデール賞の2着ですから、能力は認められていた馬。デューハーストでの20対1は、やや過小評価されていた感があります。
これで来年の2000ギニーには16対1というオッズが出ました。ボルガー師によれば、父はジャイアンツ・コーズウエイでも母系にはスタミナが充分に流れており、ダービーでも問題ないとか。
これまで成績が上がらなかったのは重馬場のため。今回の良馬場で初めて本領を発揮した、という解説。
見る側としては着差が僅差だっただけに、このまま鵜呑みには出来ないデューハースト、という感想ですね。
チャンピオン・ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)。文字通りこの日の最大の呼び物。凱旋門賞を早々と回避したニュー・アプローチ New Approach の参戦が専らの話題でした。
今年のダービー馬、前走のアイリッシュ・チャンピオン(実際はニューマーケットのジュライ・コースで行われましたが)の勝ちっぷりが今一つでしたから、この馬の能力は大したことないのじゃないか、という雰囲気が漂っていました。
実際、他の出走馬にも勝つチャンスは充分という予想もたくさん出ていましたから。
最終的には11頭立て、それでもニュー・アプローチは6対5という圧倒的な支持です。
結果、これはもうニュー・アプローチの独り舞台でした。オーナーであるヨルダンのハヤ王女の持ち馬アップトン・グレイ Upton Grey をペースメーカーとして使い、ペースも万全。勝負所で抜け出した本命馬は、そのまま他馬を寄せ付けず、2着に6馬身差をつける圧勝でした。
その2着はセシル厩舎のトゥワイス・オーヴァー Twice Over 、3着は更に1馬身半でスタウト厩舎のリンガリ Linngari が入線しています。
勝ちタイムの2分00秒13は、これまでの記録を1秒も縮めるコースレコード。ニュー・アプローチの実力にイチャモンをつけた人も黙ってしまうほどの圧勝劇でした。
ダービー馬がチャンピオン・ステークスも制したのは1968年のサー・アイヴァー Sir Ivor 以来のこと。これにデューハースト勝利を加えた馬は、何と史上3頭目という快挙だそうですね。
ここで話題に出てくるのは、ニュー・アプローチとザルカヴァはどちらが強いのか、ということ。ザルカヴァは引退してしまいましたし、ニュー・アプローチもこれで現役を退きます。
永久に封印された2頭の対決。観てみたかった気持ちもありますが、夢として残しておくのも一興でしょうか。
2着のセシル師、本来なら出走するはずだったフェニックス・タワーが月曜日に故障を発生して引退。2着の馬より4~5馬身は強かった、と語ったものの、ニュー・アプローチの強さが別格であったことは素直に認めています。
ロックフェル・ステークス(GⅡ、2歳牝、7ハロン)は、1番人気に支持されたピューリッシマ Purissima が10着惨敗。11対1の中穴ラハリーブ Lahaleeb が、2着アスペン・ダーリン Aspen Darlin に2馬身4分の1差を付けて優勝。3着は短頭差でスーターズ・シスター Souter’s Sister が入線しています。
勝馬の調教師はシャノンさん、騎手はチャレンジ・ステークスも勝ったホランド君。
勝ったラハリーブ、8月にはニューキャッスルやニューバリーでハンデ戦に勝っていた馬で、ここはパターン・クラスにステップアップした初戦でした。
プライド・ステークス(GⅡ、3歳上牝、1マイル4ハロン)は今年創設された新しい重賞競走。8頭が出走し、4対1に支持されたクリスタル・カペラ Crystal Capella が優勝、セントレジャー2着に健闘したアンサング・ヒロイン Unsung Heroine (11対8の1番人気)が頭差及ばずここでも2着、3着は2馬身半でサフィラズ・ファイア Saphira’s Fire でした。
事前に人気になっていたダー・レ・ミ Dar Re Mi は結局取り消し。勝ったクリスタル・カペラはこれで5連勝。来年も現役を続行します。
調教師はサー・マイケル・スタウト、騎手はライアン・ムーアの鉄壁コンビ。
ジョッキー・クラブ・カップ(GⅢ、3歳上、2マイル)はマラソン・レース。去年の凱旋門賞3着馬サガラ Sagara が出てきましたが、結果2着。勝ったのは5対2の1番人気に支持されていたヴェラシティー Veracity です。着差は半馬身、3着は首差でフューリン Fiulin という馬。
1・2着共サイード・ビン・スオール厩舎ですから、ワンツー・フィニッシュ。勝馬にはデットーリが騎乗していました。両馬とも来年の現役を続行する予定。
最後にもう一つ、2マイルの距離で争われるマラソン、セザレウィッチ・ハンデは32頭立ての大混戦。去年2着だった11歳馬カラッチオーラ Caracciola が、50対1の大穴を開けてくれたようです。
以上がホートン・ミーティングの結果。ボルガー調教師のGⅠダブルに沸いた1日でした。

 

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