2015ロイヤル・アスコット4日目
今週はアスコット競馬場の王室開催に掛かり切りですが、今日は4日目のレポートです。馬場は相変わらず good to firm 、レース・プログラムも前3日間と同じ一日6鞍、1レースから4レースまでがG戦です。
そして開催の冒頭に紹介したように、今年から新設されたGⅠ戦が第3レースに組まれました。4日間ともG戦が4鞍づつと言うのは、今年が初めてのことになりました。
4日目の第1レースはアルバニー・ステークス Albany S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。1頭の取り消しがあったものの18頭立ての大混戦。無敗の馬が9頭出走していて、その中でソールズベリーの新馬戦を鮮やかに差し切ったイリュミネート Illuminate が4対1の1番人気。2歳馬には定評あるリチャード・ハノン厩舎2頭出しの1頭です。
クィーン・メアリー・ステークスをアカプルコ Acapulco で制したアメリカのウェスリー・ワード厩舎が送り込んだ2頭、3・4番人気の内3番人気(6対1)のラックスフィールド・ロード Laxfield Road が猛スピードでの逃げ、最初の2ハロンは後続を大きくリードします。しかし半マイル地点で先行していたジョイント10番人気(20対1)のフランス馬エレガント・スーパーモデル Elegant Supermodel が先頭を奪取。中間地点では中団、逃げ馬から20馬身も離されていたイリュミネートでしたが、残り1ハロンで抜け出すと、スタンドから遠い側の後方から追い込むジョイント7番人気(12対1)のアシャディハン Ashadihan に1馬身半差を付けて見事人気に応えました。短頭差でエレガント・スーパーモデルが3着。
今年限りで引退が決まっているリチャード・ヒューズが騎乗したイリュミネートは、これで2戦2勝。ヒューズ騎手に今年のロイヤル・アスコット初勝利をプレゼントしました。この後はニューマーケットのジュライ開催に組まれているチェリー・ヒントン・ステークスに向かい、最終的にはチーヴリー・パーク・ステークスが目標になるとのことです。
続いてはアスコット・ダービーの異名があるキング・エドワード7世ステークス King Edward Ⅶ S (GⅡ、3歳牡せん、1マイル4ハロン)。7頭が出走し、前走ダービー・デイのエプサムでハンデ戦を3馬身差で圧勝したストラヴァガンテ Stravagante が11対4の1番人気。名匠サー・マイケル・スタウト師が態々追加登録料を支払って参戦したこともあり、師の馬を見る目に期待が掛かっていました。
レースは6番人気(12対1)のマジック・ダンサー Magic Dancer が逃げ、ストラヴァガンテは後方で待機。しかし4ハロン地点、動きが不自然だった本命馬は競走を中止し、騎乗していたデットーリ騎手が下馬してしまいます。一方レースは2番手を進んでいた5番人気(8対1)のミスター・シン Mr Singh が先頭で直線に入りましたが、最後方で待機していた2番人気(3対1)のバリオス Balios が一気に前を交わし、ミスター・シンに1馬身4分の1差を付けて優勝。4分の3馬身差で3番手を追走していた最低人気(16対1)のファーザー・クリスマス Father Christmas が3着。
これがロイヤル・アスコット初勝利となったデヴィッド・シムコック厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗のバリオスは、2歳時はケンプトンのデビュー戦に勝ったのみ。今期も前走ニューマーケットのリステッド戦(ニューマーケット・ステークス)で2着しただけで、これが未だ3戦目と言うこれからの成長株です。
キング・エドワード7世ステークスはセントレジャーへの最初のステップ・レースでもありますが、シムコック師はセントレジャーはキッパリと否定。今期は走ってもあと3戦で、10~12ハロン戦に使うと明言。その中には海外遠征も考慮中とのこと。この馬は更に数年現役を続け、あくまでも古馬になってからの大成が目標の由。
そして新設のGⅠ戦、コモンウェルス・カップ Commonwealth Cup (GⅠ、3歳、6ハロン)がやってきました。我こそは3歳短距離王と言わんばかりに18頭が参戦し、牝馬は5頭が挑戦。去年2歳時にもロイヤル・アスコット遠征戦(ウインザー・キャッスル・ステークス、リステッド)に勝ち、シーズン最後にはBCジュヴェナイルを制したアメリカ馬(ウェスリー・ワード厩舎)のフーテナニー Hootenanny が9対4の1番人気に推されています。
17番枠スタートの牝馬で3番人気(6対1)のティッギー・ウィッギー Tiggy Wiggy と4番枠スタートの伏兵(50対1)でフランスから遠征してきたゴーケン Goken の逃げ争い。ペースが速かったこともあり、勝負は後続からの差し比べとなり、中団から伸びた6番人気(10対1)のムハーラー Muhaarar が、後方から追い込む2番人気(9対2)のリマート Limato に3馬身4分の3差を付ける圧勝で初代3歳短距離王に輝きました。更に4分の3馬身差でジョイント4番人気(8対1)の牝馬アンセム・アレキサンダー Anthem Alexander が3着に入り、人気のフーテナニーはライアン・ムーアを以てしても11着敗退に終わっています。
チャールズ・ヒルズ厩舎、デーン・オネイル騎乗のムハーラーは、前走フランス遠征で仏2000ギニーで8着だった馬。その前はグリーナム・ステークス(GⅢ)に勝ち、2歳時にもジムクラック・ステークス(GⅡ)を制していました。前走マイル路線から短距離に挑戦したのは、オーナーであるシェイク・ハムダン氏の意思だったのだそうです。
4日目のメインは、各国の1000ギニー馬対決になることが多いコロネーション・ステークス Coronation S (GⅠ、3歳牝、1マイル)。初日のセント・ジェームス・パレス・ステークスの牝馬版に相当するGⅠ戦です。今年は英愛1000ギニー馬は参戦せず、クラシック勝馬では仏1000ギニー馬のエルヴェディヤ Ervedya だけ。しかし13対8の1番人気に支持されたのは、オブライエン/ムーア・コンビのファウンド Found 。前走愛1000ギニーは2着惜敗で、去年のマルセル・ブーサック賞ではエルヴェディヤを破っています。エルヴェディヤは3対1でジョイント2番人気。もう1頭の2番人気は、1000ギニー2着のルシーダ Lucida 。愛1000ギニーは使わず、ニューマーケットのクラシックから直行で臨んできました。
4番人気(12対1)のアラビアン・クィーン Arabian Queen がハナに立って強いペースでの逃げ、紛れの無い展開になります。先行馬を前に置き4番手を進んだファウンドが残り1ハロンで先頭、今期初勝利かと見えた時、後方に控えていたエルヴェディヤが外から襲い掛かり、最後の一歩で本命馬を首差捉えてスリリングな叩き合いを制しました。半馬身差で最後方からルシーダが追い込んで3着に入り、最低人気(50対1)のミス・テンプル・シティー Miss Temple City が4着、逃げたアラビアン・クィーンが5着。アスコットの3歳マイルGⅠ戦は、何れもギニー馬が勝つという理想的な結果に収まっています。
仏1000ギニーのレポートでも紹介したように、エルヴェディヤを管理するジャン=クロード・ルジェ師は同馬がマイラーであることを明言し、仏オークスには見向きもせずアスコットを目標にして来ました。師にとってはロイヤル・アスコットのGⅠ制覇こそが夢。アガ・カーンの名門エルヴェディヤで念願を成就させています。ルジェ師は去年のコロネーションではレストーク・イン・パリ Lesstalk in Paris でリジーナ Rizeena の2着と悔しい思い。騎乗したクリストフ・スミオンもコロネーション・ステークスは初制覇で、スミオンにとっては2011年にシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles で勝った秋のアスコットでのチャンピオン・ステークス(この年からチャンピオン・ステークスはニューマーケットからアスコットに舞台を移した)と並ぶ大きな勲章になったことでしょう。
一方敗れたファウンドのオブライエン師、この敗戦に悔いはありません。今期は3戦して全て2着でしたが、春は3戦して夏は休み、秋は距離もステップ・アップというのが師の方針。あくまでもクラシックに拘って愛オークスに向かうことはなさそうです。
4日目はこのあと第5レースが1マイル4ハロンのハンデ戦、デューク・オブ・エディンバラ・ステークス。ムーア騎乗の馬とヒューズ騎乗の馬が1番人気を分け合いましたが、ここはヒューズ騎乗のアラブ・ドーン Arab Dawn の勝ち。
最終第6レースはかつてG戦だったクイーンズ・ヴァーズで、今はリステッド戦。2マイルの長距離戦を制したのはオブライエン/ムーアのコンビで臨んだアロフト Aloft 。人気に応えての優勝で、遂にムーア騎手はロイヤル・アスコット9勝目を記録しました。
これまでロイヤル・アスコット1開催での最多勝記録は、1965年と1975年に達成したレスター・ピゴットと、1989年のパット・エデリーの8勝。昨日の段階で二人に並んでいたライアン・ムーア、遂に4日目で9勝をマークし、歴史を塗り替えています。
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