2015ロイヤル・アスコット初日

6月の第3週と言えば? そう、ロイヤル・アスコットですね。もう何年もレポートを続けていますから詳しく紹介するまでもないでしょう。
さて今年の特徴と言えば、そう、これも度々紹介してきたように、新たなGⅠ戦が創設されたこと。3歳馬限定の短距離戦コモンウェルス・ステークスですが、それは4日目の金曜日。これに伴ってダイアモンド・ジュビリーはこれまでの3歳上から4歳上に変更されました。

以上を頭の片隅に入れながら、早速昨日行われた初日のG戦4鞍をレース順に取り上げていきましょう。1日6鞍、内4レースがG戦という豪華版が4日間連続し、最終日はG戦2鞍は毎年のハイ・レヴェル。
初日の6月16日は第1レースから第4レースまでG戦が並びますが、毎年と同じラインナップ。最初はアスコット競馬場を拓いたアン女王に因んだクィーン・アン・ステークス Queen Anne S (GⅠ、4歳上、1マイル)です。

この日の馬場は goos 、所により good to firm と多くの馬にとっては理想的なコンディション。GⅠ馬5頭を含む8頭立てと、冒頭からワクワクするようなメンバーが揃いました。その中で11対8の1番人気に支持されたのは、今期ドバイ・ワールド・カップとイスパハン賞とGⅠ2連勝中のソロウ Solow 。香港を代表する強豪エイブル・フレンド Able Friend の英国挑戦が専らの話題でしたが、ホンコンマイル(GⅠ)の覇者が11対4の2番人気と期待されています。
レースは4番人気(8対1)トールモア Toormore が逃げ、ソロウは3番手追走。残り2ハロン、ペースが速くなった所で入れ込みが目立ったアジアの星は付いて行けずズルズルと後退、スパートしたソロウが残り1ハロンで先頭に立つと、一旦は5番手を追走していたロッシルド賞(GⅠ)勝馬で5番人気(16対1)のエソテリク Esoterique に半馬身差まで詰め寄られましたが、二の足を発揮して最後は1馬身差を付けて見事人気に応えました。フランス馬のワン・ツー・フィニッシュ。後方で待機していた並んだ5番人気でオブライエン厩舎のクーガー・マウンテン Cougar mountain が一気の脚で追い上げ、首差の3着。
以下逃げたトールモアが2馬身差で4着に粘り、同じハノン厩舎の3番人気(4対1)で去年の2000ギニー馬ナイト・オブ・サンダー Night Of Thunder が5着。エイブル・フレンドは6着と期待を裏切ってしまいました。

既にイスパハン賞(5月24日)で詳しく紹介したように、マイル路線に変更してから急成長してきたソロウはウエルザイマー兄弟の所有馬で、フレディー・ヘッド厩舎、今年からウエルザイマー家の主戦を務めるマキシム・グィヨン騎乗の5歳せん馬。去年からの連勝記録は「7」に伸び、GⅠも3連勝です。ギアチェンジで再加速したレース内容から見てより長い距離にも適応できそうですが、マイル路線には大レースが目白押し。差し当たって次走はサセックス・ステークスになる模様です。

続く第2レースは、今年ヨーロッパでは最初の2歳G戦となるコヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)。ここ数年は毎年の様にアメリカから遠征してくるウェスリー・ワード厩舎のフィネガン Finnegan がレース直前に疝痛のため取り消してしまいましたが、それでも17頭立てと多頭数。12頭が前走に勝っているという難解なメンバーの中、アイルランドからジム・ボルジャー師が送り込んだ2戦2勝のラウンド・ツー Rount Two が9対4の1番人気に支持されていました。
逃げたのは12番人気(33対1)のオード・トゥー・イヴニング Ode to Evening 。人気のラウンド・ツーは残り2ハロンで争覇圏内、そこから伸びるかと見えましたが末脚不発、結局は7着に沈んでしまいました。替って伸びたのは、中団を進んだ3番人気(6対1)のブラティーノ Buratino 。3番手を追走していた2番人気(7対2)のエア・フォース・ブルー Air Force Blue に2馬身差を付ける完勝です。更に2馬身差で5番人気(12対1)のエルテザム Eltezam が3着。

これがロイヤル・アスコット38勝目というマーク・ジョンストン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗のブラティーノは、これが6戦目と出走馬中最もレース経験があった馬。ゴドルフィンの馬で、デビューは何と今年3月ドバイのタペタ・コースで逃げ切ったもの。3月にはニューマーケットで2勝目を挙げ、前走はダービー・デイのエプサム競馬場でリステッド戦(ウッドコート・ステークス)を6馬身差で圧勝していました。これで2連勝で4勝、陣営では7ハロン戦でも行けそうと判断したようで、次走が何処になるか注目されます。

第3レースも短距離戦で、こちらは古馬のGⅠ戦として歴史あるキングズ・スタンド・ステークス King’s Stand S (GⅠ、3歳上、5ハロン)。ここも1頭が取り消して18頭立てとなりましたが、今年の話題はソール・パワー Sole Power が史上初の3連覇達成がなるかと言うこと。もちろん2連覇中の8歳馬が5対2の1番人気で、今期もドバイのGⅠ戦(アル・クォーツ)に勝って衰えを知りません。
並んだ12番人気(33対1)の同じ8歳馬テイク・オーヴァー Take Over が逃げましたが、ゴール前は3頭が横一杯に並ぶ大接戦。写真判定の結果、ゴールの瞬間に頭を下げていたジョイント8番人気(20対1)のゴールドリーム Goldream が短頭差で激戦をモノにしていました。2着惜敗は並んだ15番人気(50対1)の伏兵メディシーン・マン Medicean Man 。首差で2番人気(3対1)、仏ダービー・デイにグロ=シェーヌ賞(GⅡ)に勝ったムスミール Muthmir が3着に入り、以下半馬身差でパール・シークレット Pearl Secret が4着、更に半馬身差でソール・パワーは5着。敗れたとは言えソール・パワーは勝馬とはほぼ1馬身差、未だ今シーズン短距離界の中心的存在ではあるでしょう。

ゴールドリームを管理するロバート・カウエル師は、2011年のプロヒビット Prohibit に続きキングズ・スタンドは2勝目。ヴェテランのマーチン・ハーレーが騎乗していました。6歳になった今期は2000ギニー・デイのニューマーケットで行われたパレス・ハウス・ステークス(GⅢ)がG戦初挑戦での初勝利。次走テンプル・ステークス(GⅡ)では7着に沈みましたが、馬場が回復したアスコットで見事GⅠ初制覇となります。

初日の第4レース、この日のG戦最後は大注目のセント・ジェームス・パレス・ステークス St. James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。1頭が取り消して5頭立てとなりましたが、何と言っても英愛ギニー覇者グレンイーグルス Gleneagles と仏2000ギニー馬メイク・ビリーヴ Make Believe の対決。メイク・ビリーヴが上と言う専門家もいましたが、やはり目の前で2000ギニーを快勝したグレンイーグルスが8対15の1番人気。3対1の2番人気で仏ギニー馬が続きます。

レースは3番人気で2戦2勝の未知数、デットーリ騎乗のコンソート Consort の逃げ、これをメイク・ビリーヴが2番手で追走し、グレンイーグルスは自信満々4番手に待機。そのままの隊列で全馬が直線に入ると、鞍上ライアン・ムーアのゴーサインを受けてグレンイーグルスがスパート、いつもの瞬発力で苦も無く先頭に躍り出ると、最後方から追い込む4番人気(25対1)のラザーナック Latharnach に2馬身半差を付けてライヴァル対決を制しました。半馬身差3着にはコンソートが粘り、メイク・ビリーヴはまさかの最下位敗退に終わっています。
改めて紹介するまでも無く、グレンイーグルスはエイダン・オブライエン厩舎6頭目のセント・ジェームス・パレス勝馬。それでも優勝は2009年のマスタークラフツマン Mastercraftsman 以来と久し振りになります。一時はダービー出走も噂された同馬ですが、やはりマイル路線に集中。次の大注目は、クィーン・アンを制したソロウとの世代対決と言うことになるでしょうね。

この日もシッカリGⅠを制したライアン・ムーア、この後のアスコット・ハンデ(19頭立て)を本命で、最終レースのウインザー・キャッスル・ステークス(2歳馬のリステッド戦)もオブライエン厩舎のワシントン・ディーシー Washington Dc で制して鮮やかなハットトリック達成。ロイヤル・アスコットには開催期間中のリーディング・ジョッキー争いもありますが(もちろん賭けもあります)、早くも抜け出した初日でした。

 

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