2015ロイヤル・アスコット3日目

6月18日、アスコット競馬場の王室開催3日目も前二日間と同じく一日6レース、最初の4レースがG戦で、G戦の締め括りがGⅠというプログラムです。この日はロイヤル・アスコット最大の呼び物、ゴールド・カップ。
馬場は前日と同じ good to firm で行われました。

最初はノーフォーク・ステークス Norfolk S (GⅡ、2歳、5ハロン)。2頭が取り消して10頭立て。2歳戦には定評のあるリチャード・ハノン厩舎の2頭が人気も競り合う形となり、デットーリ騎乗の3戦2勝馬キング・オブ・ルークス King Of Rooks が11対8の1番人気、ビュイック騎乗の1戦1勝うまログ・アウト・アイランド Log Out Island が13対8の2番人気で差無く続きます。
ハノン厩舎の2頭、レースでも競り合う形となり、強いペースで逃げるログ・アウト・アイランドをキング・オブ・ルークスが猛追する速い流れ。流石にペースがきつかったか、中団に付けていたジョイント3番人気(12対1)のウォータールー・ブリッジ Waterloo Bridge が残り1ハロンで一気に抜け、ログ・アウト・アイランドを半馬身差し切って優勝。更に半馬身差でキング・オブ・ルークスは3着でした。

勝ったウォータールー・ブリッジはエイダン・オブライエン厩舎、当たりに当たるライアン・ムーア騎乗で、6月4日に4戦目で未勝利を脱したばかり(ティッペラリー競馬場、頭差で)。強いペースを味方に付けたとは言え、漸く本来のスピードが活きたようです。ムーア騎手によれば、“ハイペースが合っていたのが勝因だが、今までは重馬場ばかり。今回が初めての高速馬場だったのも好走の理由だろう”とのこと。
一方敗れたハノン厩舎はペースが速過ぎたことを認め、フランキーは“申し訳ない”と素直に行き過ぎを反省していました。

そのデットーリが直ぐに名誉挽回したのが、第2レースのターセンテナリー・ステークス Tercentenary S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。3頭が取り消して11頭立てとなり、前走ハンデ戦で強い勝ち方をしたハーリッド・アブダッラー所有のタイム・テスト Time Test が15対8の1番人気。フランキー・デットーリは2レース続けて本命馬に騎乗することになります。
逃げたのはジョイント8番人気(20対1)のムスタディーム Mustadeem 、これを開催者でもあるエリザベス女王所有の2番人気(5対1)ピーコック Peacock が追走し、タイム・テストは中団。直線、本命馬は評判通りの能力を発揮、馬場の中央を通って残り1ハロンで先頭、容赦なく女王陛下のピーコックに3馬身4分の1差を付ける圧勝でした。4分の3馬身差で逃げたムスタディームが3着。

ロジャー・チャールトン厩舎のタイム・テストは2歳時は3戦1勝でしたが、前走今期初戦のハンデ戦(ニューバリー競馬場伝統のロンドン金杯)を勝って本格化、調教を付けているジョッキーも、本番で騎乗したデットーリもGⅠ級の馬と太鼓判を押しています。
チャールトン師は慎重で、先ずはGⅡと考えていますが、イギリスにはこのあと3歳馬のみのGⅡ戦は無いので、フランス遠征を視野に入れているとか。古馬と対決するヨークのジャドモント・インターナショナルも候補に挙がっているようですが、師は“それは来年ね”とあくまでも手順を踏みたい様子。しかし結論を出すのは殿下ですから、思い切った挑戦も無いとは言えないでしょう。デットーリ騎手はこれがロイヤル・アスコット51勝目。

この日のG戦第3弾は、オークスと同じ距離のリブルスデール・ステークス Ribblesdale S (GⅡ、3歳牝、1マイル4ハロン)。言わばアスコット・オークスで、10頭が出走してきました。何と言っても前走愛1000ギニーでオークス馬クオリファイ Qualify を破ったプレイスコック Pleascach がイーヴンの1番人気。ここを踏み台に愛ダービーで牡馬と一戦交えようかと言うボルジャー厩舎のヒロインです。
プレイスコックを所有するゴドルフィンのペースメーカー、エンターテインメント Entertainment が逃げ、プレイスコックは3番手から。残り2ハロンで2番手、直線に入って先頭に立った本命馬の楽勝かと見えましたが、前半は中団、前が開かずに左に進路を取りながら進出してきた2番人気(9対2)カーヴィー Curvy の末脚が爆発、プレイスコックを1馬身捉える逆転劇です。4馬身差でジョイント3番人気(8対1)のパモナ Pamona が3着。上位3頭は直線の攻防で連鎖的に接触がありましたが、順位に影響するものではなく、審議にも異議申し立てにもならず入線通りで確定しました。

勝ったカーヴィーは、愛1000ギニーと同じ日に行われたガリニュール・ステークス(GⅢ)で、オブライエン/ムーア・チームのダービー候補ジョヴァンニ・カナレット Giovanni Canaletto (ダービーは4着)を破ったデヴィッド・ウォッチマン厩舎の馬。今回は皮肉にもライアン・ムーアが騎乗していて、ムーア騎手は第1レースに続くダブル達成。今年のロイヤル・アスコットでは早くも7勝目となります。
カーヴィーは2歳時は未勝利でしたが、3歳になってからはネイヴァンの連勝と合わせて無敗の4連勝。次はアイルランド・ダービーを目指す可能性が高いようで、もしプレイスコックもダービーに出てくるようなら2頭の牝馬の再対決が見所になるでしょう。

そして最後にゴールド・カップ Gold Cup (GⅠ、4歳上、2マイル4ハロン)。1971年にパターン・レース体系が導入された時点では、GⅠはキングズ・スタンド・ステークスとゴールド・カップだけでした。その後キングズ・スタンドはGⅡに降格されていた時期もありましたから、GⅠを維持し続けているのはゴールド・カップだけと言うことになります。長距離戦は不人気、その後より短い距離のレースが次々とGⅠに格上げされてきましたが、それでもゴールド・カップ制覇は競馬人の夢であり続けるでしょう。
今年は2頭が取り消しても12頭と頭数も揃い、無敗でアイルランドからウェルド厩舎が送り込むフォーゴットゥン・ルールズ Forgotten Rules が5対2の1番人気。去年の秋のアスコットではチャンピオンズ・ロング・ディスタンス・カップ(GⅡ)を制して注目を集め、今期初戦のヴィンテージ・クロップ・ステークス(GⅢ)にも勝って順調。不安があるとすれば距離で、ゴールド・カップの2マイル4ハロン(約4000メートル)は通常の長距離戦とは別のスタミナが要求されるからです。

レースはジョイント10番人気(25対1)のフォーエヴァー・ナウ Forever Now が逃げ、フォーゴットゥン・ルールズは3番手で淡々と流れます。直線、勝負所と先頭に立った本命馬でしたが、やはり4000メートルのスタミナはやや不足していたのか、馬場が固かったためかいつもの伸びを欠き、中団に待機していた6番人気(12対1)のトリップ・トゥー・パリ Trip to Paris に内を掬われてしまいます。結局直線で思い切りよく内ラチ沿いに進路を取ったトリップ・トゥー・パリが、何度か前を塞がれる不利がありながらもこじ開けるようにして伸びた3番人気(5対1)のキングフィッシャー Kingfisher に1馬身4分の1差を付けて優勝。フォーゴットゥン・ルールズは首差3着に終わりました。
トリップ・トゥー・パリは、今期チェスター・カップを含めてハンデ戦に3連勝し、前走サンダウンのヘンリー2世ステークス(GⅢ)ではヴァン・ド・フォース Vent de Force の2着していた4歳せん馬。ここには追加登録料を支払って参戦し、陣営の判断は最大規模で報われたことになります。
管理するエド・ダンロップ師は、その父親であるジョン・ダンロップ調教師が1974年にラグストーン Ragstone でゴールド・カップに勝つのを見ており、41年振りの夢が実現したことになります。勝利騎手はグレアム・リー。同馬は去年のロイヤル・アスコットでは12ハロンのキング・ジョージ5世ハンデに出走して6着でしたが、その後に去勢、1年後には最長距離のGⅠ戦を勝つまでに成長してきました。メルボルン・カップという声も上がっていますが、豪州の名物レースはハンデ戦、負担重量が重くなることは必至で、陣営は思案の為所でしょう。

以上が3日目のG戦でしたが、その後の第5レースは3歳のハンデ戦(ブリタニア・ステークス)。28頭立ての混戦を、仏2000ギニーと仏ダービーにも遠征したオブライエン厩舎のウォー・エンヴォイ War Envoy が制しています。騎乗したのはまたもやムーア、この日もハットトリックで、今開催8勝は断トツのトップです。

また最終第6レースは、ゴールド・カップ馬トリップ・トゥー・パリが去年制したキング・ジョージ5世ステークス(ハンデ戦)。17頭立て、本命ムーア騎乗の馬をビュイック騎乗のスペース・エイジ Space Age が破って優勝しています。スペース・エイジは来年のゴールド・カップに勝てるか?

 

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