2015ロイヤル・アスコット最終日
6月20日、アスコット競馬場の王室開催、即ちロイヤル・アスコットが千穐楽を迎えました。フィナーレは全6鞍の内第3レースと第4レースがG戦、開催全体では18鞍のG戦が行われたことになります。馬場は good to firm ですが、所によっては firm と、5日目になって漸く降り出した雨も馬場を湿らせるだけに終わったようですね。
最終日最初のG戦はハードウィック・ステークス Hardwicke S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。7頭が出走し、このレースは独壇場の感のあるサー・マイケル・スタウト厩舎が3頭出し。中でも去年の勝馬でライアン・ムーアが乗るテレスコープ Telescope が6対4の1番人気。
同じスタウト厩舎でもオーナーの異なる4番人気(12対1)のスノー・スカイ Snow Sky が逃げ、後続に3馬身差を付けたまま直線。2番手に付けていたテレスコープは馬場が固過ぎたこともあってか伸びず、替って3番手追走の2番人気(2対1)イーグル・トップ Eagle Top と3番人気(7対2)のポストポーンド Postponed が2番手争いを演じましたが、逃げ馬は更に差を広げ、ゴールでは3馬身4分の3差を付ける一方的な逃げ切り勝ちに終わりました。2着争いはハナ差でイーグル・トップがポストポーンドを抑え、テレスコープは6着敗退。
それでもハードウィックを制したスタウト師は、これがこのレース9勝目で、最近10年で6勝。ロイヤル・アスコットの常連でもあるスタウト師ですが、今年は勝馬に恵まれず、前日はキング・エドワード7世に出走したストラヴァガンテ Stravagante を安楽死で失うという不運もありました。最終日のハードウィック・ステークスが、スタウト師にとっては今年のロイヤル・アスコット唯一の勝利です。
ハーリッド・アブダッラー氏が所有するスノー・スカイは、前走今期初戦のヨークシャー・カップ(GⅡ)に勝って参戦した4歳のステイヤー。去年はゴードン・ステークス(GⅢ)に勝ってセントレジャーに挑戦し、3着に入っていました。レースで逃げたのは初めてでしたが、騎乗したパット・スマーレンがスローに落とし、最後はスプリントに持ち込んだ作戦が奏功したと言えましょう。この勝利で陣営はキングジョージを視野に入れ始めたようですが、現時点で登録は無く、参戦するには追加登録する必要があります。
王室開催を締め括る最後のG戦は、ダイアモンド・ジュビリー・ステークス Diamond Jubilee S (GⅠ、4歳上、6ハロン)。去年までは3歳上の条件でしたが、3歳馬にはコモンウェルス・カップが創設されたため、今年から4歳上に変更されています。前世紀まではコーク・アンド・オルリー・ステークスという名のGⅢでしたが、エリザベス女王の在位期間が延びるに連れてゴールデン・ジュビリーから更にダイアモンド・ジュビリーへと改名、最高格のGⅠまで上り詰めた短距離戦。フィナーレに相応しく、現女王に敬意を払うレースでもあります。
初日にキングズ・スタンド・ステークスで4着したパール・シークレット Pearl Secret (二つのレースを使う馬は結構多いし、過去には両方勝った馬も)を含めた15頭が出走し、7対2の1番人気にはオーストラリアの快速馬ブレーズン・ボー Brazen Beau と、去年の開催でジャージー・ステークスに勝っているムスタジーブ Mustajeeb とが並んでいました。
レースは最低人気(40対1)アンスガー Ansgar の逃げで始まりましたが、スタンド側をポツンと最後方から進むブレーズン・ボーと、スタンドからは遠い側をこれも後方から追い込むジョイント5番人気(14対1)のアンドラフテッド Undrafted との差し比べとなり、結局半馬身差でアンドラフテッドに軍配が上がっています。1馬身4分の3差で2番手を進んだジョイント12番人気(25対1)のアステア Astaire が3着に入り、4着はミュージック・マスター Music Master 、人気の一角ムスタジーブは5着でした。二つの短距離GⅠ戦に挑戦したパール・シークレットは12着敗退。
勝ったアンドラフテッドは、アメリカのウェスリー・ワード師が送り込んだ1頭で、師は今開催で3勝目と絶好調。これまでは2歳戦の勝利だけでしたが、5歳馬を勝利に導いたのは初めてのことです。騎乗したのは、やはりこれが開催3勝目のフランキー・デットーリ。このレースはGⅢ時代(つまりコーク・アンド・オルリー・ステークスとして)の1995年にソー・ファクチャル So Factual で勝ったことはありましたが、ダイアモンド・ジュビーとしては初制覇となりました。
勝馬は前走、ケンタッキー・ダービー当日のトゥイン・スバイヤーズ・ターフ・スプリント(芝GⅢ)で2着しており、当ブログの姉妹コーナー「アメリカ競馬」では度々登場しているスプリンター。次走は去年も参戦(4着)したジュライ・カップで、2着のブレーズン・ボーとの米豪対決が再び見られることになっています。
以上でアスコットのG戦は全て紹介しましたが、前4日間同様に他のレースに付いても簡単に結果を書いておきましょう。
第1レースのチェシャム・ステークス(2歳のリステッド戦)はクリスチャン・デムーロ騎乗の馬が優勝。
第2レースのウルフォード・ハンデは13頭が出走し、ゴスデン厩舎の本命馬が勝利。ここには日本から遠征したスーパームーンもクリスチャン・デムーロ騎乗で挑戦していましたが、10着と奮いませんでした。
第5レースは25頭が出走した伝統あるハンデ戦のワーキンガム・ステークス。4番人気のインターセプション Interception が優勝。
オーラスとなる第6レースのクィーン・アレクサンドラ・ステークスは、ゴールド・カップより距離が長い2マイル5ハロン159ヤードというマラソンで、ファニング騎乗のオリエンタル・フォックス oriental Fox が優勝。ムーア騎乗の馬が本命でしたが4着、最終日にはムーア騎手は勝てませんでした。
しかし5日間の開催で新記録となる9勝を挙げたライアン・ムーア、第2位のデットーリ3勝を断然引き離してのリーディング・ジョッキーとなり、女王陛下から特別なカップを授与されました。正にムーア時代到来。
一方リーディング・トレーナー争いは混戦でしたが、結局は5勝のエイダン・オブライエン師が戴冠。師の本命馬が負ける場面もいくつか見られましたが、全体的にどの馬も好走したという印象でした。第2位は3勝で5人の調教師、即ちハノン、チャールズ・ヒルズ、ゴスデン、アメリカのワード、マーク・ジョンストンが並んでいます。
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