春のベルモント、グランド・フィナーレ

7月4日のアメリカ競馬は、三冠馬誕生の舞台となったベルモント・パーク競馬場が事実上春シーズンのフィナーレを迎えました。開催そのものはあと1勝間ほどが残されていますが、G戦はこの日行われた6鞍で締めとなります。レース順に取り上げていきましょう。

最初は第6レースのヴィクトリー・ライド・ステークス Victory Ride S (GⅢ、3歳牝、6.5ハロン)。fast の馬場に6頭が出走し、サンタ・アニタで一般ステークス(サンタ・パウラ・ステークス)を勝ってきたエンシャンティング・レディー Enchanting Lady がイーヴンの1番人気。
最低人気(21対1)のスーパー・サックス Super Saks が逃げましたが、前半は最後方に待機していた4番人気(9対2)のアイリッシュ・ジャスパー Irish Jasper が外から追い込み、後方2番手から差を詰めた本命エンシャンティング・レディーを3馬身引き離して快勝。2馬身4分の3差3着には2番手を追走した5番人気(11対1)のカスバルー Kathballu が入っています。
勝馬のオーナーでもあるデレック・ライアン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のアイリッシュ・ジャスパーは、前走ピムリコのミス・プリークネス・ステークス(GⅢ)に続いてG戦2連勝。ステークスも3連勝で、何故4番人気だったのかが不思議に思えるほど。陣営は今年の3歳牝馬では最強と自信を深めているようで、これからGⅠ戦線での活躍が期待できそう。

続いて第7レースは、同じく3歳馬のマイル戦、ドワイヤー・ステークス Dwyer S (GⅢ、3歳、8ハロン)。7頭が出走し、去年のBCジュヴェナイル(GⅠ)勝馬で、脛の故障のために休養していたテキサス・レッド Texas Red が9対5の1番人気。サン・ヴィセンテ・ステークス(GⅡ)2着以来の出走となります。
先ずはブービー人気(41対1)のハリウッド・エンジェル Hollywood Angel が逃げましたが、これを2番手でマークしていた2番人気(2対1)のスパイスター Speightster が第4コーナーで先頭に立つと、内ラチ一杯の経済コースを通り、後方2番手から外を回って追い上げるテキサス・レッドを2馬身半差抑えて優勝。更に2馬身半差で5番手を進んだ3番人気(7対2)のトミー・マチョ Tommy Macho が3着。2着のテキサス・レッドは休み明けを考えれば好走、次回は狙えそうです。
ウイリアム・モット厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のスパイスターは、言わば遅れてきた3歳馬。4月17日にキーンランドでデビュー勝ちし、6月5日にベルモントのアローワンス戦にも勝ってここでステークス初挑戦。3戦3勝として秋が勝負となる新星です。父がスペイスタウン Speightstown ということも覚えておいてください。

この日三つ目のG戦が、第8レースのベルモント・ダービー・インヴィテーショナル Belmont Derby Invitational (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。去年からベルモント・ダービーとして行われていますが、以前はジャマイカ・ハンデとして行われていた3歳戦。firm の芝コースに9頭立てで行われました。サンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)3着馬で、その前には芝コースで3連勝したこともあるボロ Bolo が2対1の1番人気。
そのボロがスタートから先手を取って逃げましたが、3番手を進んでいた6番人気(10対1)の伏兵フォース・ザ・パス Force the Pass が内ラチ沿いを通って3~4コーナー中間で先頭を奪い、これも内ラチ沿いに追い込んだ5番人気(9対1)キャンダル Canndal の後方2番手からの追い上げを3馬身4分の3差抑えての圧勝。半馬身差で4番手を進んだ7番人気(13対1)のスタートアップ・ネーション Startup Nation が3着に入り、人気のボロは最下位敗退。そのまま救急車で獣医病院に運ばれましたが、馬体には異常がないとの速報。この後レントゲンで精密検査が行われる由です。
勝ったフォース・ザ・パスはアラン・ゴールドバーグ厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗。今年3月にガルフストリームで未勝利を脱すると、続く同じガルフストリームの一般ステークス(カトリー・ベイ・ステークス)も連勝。前走ペン・マイル(芝GⅢ)も前半8番手から一気に追い込んで勝ち、これがステークス3勝目、G戦は2勝目となります。ドワイヤーのスパイスターと同じスペイスタウン産駒で、秋には更に活躍が期待できる1頭でしょう。

第9レースは、かつて古馬三冠の一つとして知られたサバーバン・ハンデキャップ Suburban H (GⅡ、4歳上、10ハロン)。6頭が出走し、去年のベルモント・ステークス覇者トーナリスト Tonalist が2対5の断然1番人気。
レースは5番人気(38対1)のストリート・ベイブ Street Babe と2番人気(7対2)のコーチ・インジ Coach Inge が3番手以降を大きく引き離してのハナ争い。しかし第3コーナーで一気に差が詰まると、後はハナ争いから抜けたコーチ・インジと、最後方のトーナリスト、後方2番手から追い込む3番人気(6対1)エフィネックス Effinex と3頭の叩き合い。ここから先ずコーチ・インジが脱落し、2頭のマッチレースは、結局負担重量の軽い内のエフィネックス(117ポンド)が外の本命馬(123ポンド)を頭差抑えての逆転劇。1馬身半差でコーチ・インジが3着に粘り、4着以下は11馬身以上の差が付いていました。
ジェームス・ジャーケンス厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のエフィネックスは、これが前々走エクセルシオ・・ステークス(GⅢ、同じく10ハロン)に続くG戦2勝目。前走ブルックリン・ハンデでは着外に敗退していました。これで通算成績は16戦6勝となる4歳馬。

最後から一つ前、第10レースがベルモント・オークス・インターナショナル Belmont Oaks International (芝GⅠ、3歳牝、10ハロン)。一昨年まではガーデン・シティー・ステークスとして知られていたレースで、3歳牝馬限定戦ながら、勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・ターフへの優先出走権が与えられます。14頭の多頭数ながら、中心は5戦無敗で去年のBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフの覇者レディー・イライ Lady Eli で、4対5の圧倒的1番人気。
ブービー人気(85対1)レディー・ズズ Lady Zuzu が逃げて攪乱を図りましたが、中団7番手辺りに控えていたレディー・イライが直線では馬なりのまま外からスパート、一気に後続を突き放し、最後は手綱を抑える余裕で2着、9番人気(35対1)のイッツオンリーアクティングダッド Itsonlyactingdad に2馬身4分の3差を付ける貫録の圧勝で無敗記録を「6」に伸ばしました。アイルランドからエイダン・オブライエン師が送り込んだ2番人気(5対1)のアウトスタンディング Outstanding (オダナヒュー騎乗)が4分の3馬身差で3着。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のレディー・イライは、当初からダート・コースのクラシック戦線には見向きもせず、目標はブリーダーズ・カップで芝の牝馬チャンピオンになること。当然の様に出走権を獲得し、余裕を持って11月の大一番に臨むことになるでしょう。

ベルモントを締め括る最後のG戦は、第11レースのベルモント・スプリント・チャンピオンシップ Belmont Sprint Championship (GⅢ、3歳上、7ハロン)。3頭が取り消して5頭立て。既にGⅠ戦に3勝しているプライヴェイト・ゾーン Private Zone が1対5の大本命に支持されています。
その大本命、好スタートを決めると、後は後続を寄せ付けず堂々の逃げ切り勝ち、観客の大歓声に応えました。3馬身4分の1差で最後方から2番人気(7対2)のクリアリー・ナウ Clearly Now が2着に追い込み、更に2馬身4分の1差で3番手追走の3番人気(7対1)ストールウォーキン・デュード Stallwalkin’ Dude が3着と極めて順当。
ホルヘ・ナヴァロ厩舎、マーチン・ペドロザ騎乗のプライヴェイト・ゾーンは、一昨年と去年のヴォスバー・ステークス(GⅠ)を連覇、更に去年はシガー・マイル(GⅠ)も制した6歳の強豪せん馬。今期はチャーチル・ダウンズ・ステークス(GⅡ)優勝を挟んで、ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)が2着、前走メトロポリタン・ハンデ(GⅠ)では3着。順調にヴォスバー3連覇からBCスプリントを目指すことになるでしょう。

さて昨日は他に二つの競馬場でもG戦が一鞍づつ行われました。パークス・レーシング競馬場からはドクター・ジェームス・ペニー・メモリアル・ハンデキャップ Dr. James Penny Memorial H (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場に1頭が取り消して9頭立て。去年GⅠ(ジャスト・ア・ゲイム・ハンデ)のタイトルを獲得したコーヒー・クリック Coffee Clique が3対5の1番人気。
最低人気(60対1)サッシー・リトル・キャット Sassy Little Cat の逃げを3番手で追走したコーヒー・クリック、第4コーナーで先頭に立つと、後方から追い込む2番人気(7対2)テスタ・ロッシ Testa Rossi に1馬身4分の1差を付けて人気に応えました。首差で2番手を追走していた7番人気(25対1)のピンク・ポピー Pink Poppy が3着。
ブライアン・リンチ厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のコーヒー・クリックは、これがG戦4勝目となる5歳馬。今期は3月にハネー・フォックス・ステークス(GⅡ)が1番人気で3着、5月にもチャーチル・ディスタッフ・ターフ・マイル(GⅡ)で又しても1番人気で2着となり、前走連覇を狙ったジャスト・ア・ゲイム・ハンデは6着に敗れてからのリバウンドでした。

最後にロス・アラミトス競馬場のロス・アラミトス・ダービー Los Alamitos Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)を取り上げましょう。初めて当ブログに登場するレース名ですが、新設ではなく、以前ハリウッド競馬場で行われていたスワップス・ステークスを引き継いだもの。去年からロス・アラミトスに移管されてレース名も改まりましたが、G戦からは外されていた一戦。しかし去年はシェアード・ビリーフ Shared Belief が勝ったことで再び脚光を浴び、新しいレース名としては二度目の今年からGⅡに復活してきた経緯があります。5頭が出走し、シェアード・ビリーフと同じホーレンドルファー厩舎とマイク・スミスのコンビによるケンタッキアン Kentuckian が2対5の断然1番人気。前走ラザロ・バレラ・ステークス(GⅢ)を6馬身差で圧勝しましたが、この距離は初めて。
2番人気(3対1)ギミー・ダ・ルート Gimme Da Lute の逃げを早目に交わして向正面では先頭に立ったケンタッキアンでしたが、内ラチ沿いに直線に向く辺りで脚色が怪しくなり、替って2番手に控えたギミー・ダ・ルートと3番手追走の3番人気(7対2)プロスペクト・パーク Prospect Park のマッチレース。前走でもマッチレースを演じた2頭でしたが、前回と同じくギミー・ダ・ルートがプロスペクト・パークをハナ差抑えて優勝。ケンタッキアンは2頭から7馬身4分の3差遅れの3着となり、やはり距離の壁があったようです。
ボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のギミー・ダ・ルートは、前走アファームド・ステークス(GⅢ)に続いてG戦に連勝。この馬も秋が勝負となりそう。

 

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