2015プロムス開幕
今年もこの季節がやってきました。夏枯れの首都圏クラシック事情、川崎でオケ三昧と言う手もあるけれど、どうも今年も魅力は今一。夏の音楽祭に行くという手もあるけれど、正直な話、何処に行ってよいか迷うし、避暑地の様子も良く判らん。
毎年続けてきた蓼科行も今回はお休みだし、やっぱりこれしかないかな。2011年頃から聴き始めたプロムスのネット中継です。
実は今年の初めにパソコン周りの音響改善を施した結果、ナマ演奏を別にすれば、パソコン音楽ほど音質の良い環境はありません。最近ではCDも専らハードディスクに落としてから聴く有様。何故かこの方がCDプレイヤーを回すより音が良いのであァ~る。まるでマスターテープを聴いているみたい。
で、当然ながらネット中継も去年までよりは遥かに良い音で聴けることを確認。早速昨日のオープニングを聴きました。
現地ロンドンのアルバートホールは、東京との時差が8時間。午後7時半開演がいつものパターンなので、日本時間なら翌日の朝3時ごろからBBC3で聴くことが出来ます。もちろんそんなに早起きして聴くことも無く、BBCのプログラムは1か月間、何時でもワン・クリックで放送が始まりますから、当方の都合に合わせれば良いのです。
パソコンでNHK・FMも聴くことが出来ますが、何故か日本では放送時間に合わせなければならず、結局は聴かないのがほとんどです。どうしてBBCのような方式に出来ないんでしょう。技術的な問題だけじゃないのかも・・・。
ということで今年のプロムス、テーマはいくつかありますが、やはり生誕150年のアニヴァーサリーに合わせてシベリウスとニールセンが多数取り上げられるのが特徴です。アニヴァーサリー絡みではブーレーズの生誕90年を記念するコンサートもあります。
去年はヴァイオリン協奏曲にスポットが当てられましたが、今年はピアノ協奏曲が数多く演奏されるのも聴きどころ。ベートーヴェン、プロコフィエフ(一晩で!)、ラヴェルの2曲やモーツァルトの後期6曲などが目玉。
プロムスで世界初演される委嘱作がズラリと並ぶのもこの音楽祭のセールスポイントで、今年は31曲が初演されるのだそうですね。こうした「今年の聴き所」は、前日の特別番組で演奏家やディレクターへのインタヴューを挟み、アルバートホールの廊下から中継されていました。バックにファースト・ナイトのリハーサルが響いていたのも如何にもリアル。
ということで今年の幕開けは、メインテーマのハイライトとも言うべきプログラム、こんな内容でした。例によってスコアが手元にあるものは紙ベースで、無いものでもパブリック・ドメインの楽譜はIMSLPでパソコン画面に呼び出して聴くことが出来ます。これは今年から実行する新しいリスニング・スタイル。
7月17日 ≪Prom 1≫ ファースト・ナイト
ニールセン/「仮面舞踏会」序曲
ゲーリー・カーペンター Gary Carpenter/Dadaville (BBC委嘱、世界初演)
モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番
~休憩~
シベリウス/「ペルシャザール王の饗宴」組曲
ウォルトン/オラトリオ「ペルシャザール王の饗宴」
BBC交響楽団
指揮/サカリ・オラモ Sakari Oramo
ピアノ/ラルス・フォークト Lars Vogt
バス・バリトン/クリストファー・モルトマン Christopher Maltman
合唱/BBCシンガース、BBCウェールズ・ナショナル・コーラス、BBCシンフォニー・コーラス
ファースト・ナイトは、もちろんホスト・オケのBBC交響楽団、首席指揮者サカリ・オラモの担当です。開幕の1曲はニールセンの歌劇の序曲。これは遥か昔に入手したハンセン版のスコアを久し振りに引っ張り出して聴きました。うん、懐かしい!
続いてはBBC委嘱作の第1弾、1951年生まれの英国の作曲家にして編曲も多いガリー・カーペンターの新曲世界初演です。普通なら「ゲーリー」と表記するのでしょうが、BBCの発音は「ガリー」と言ってました。ま、どちらでも良いと思いますが。
実況では作曲者本人が登場して委嘱の経緯や作品内容などを語っていましたが、私のヒアリング力ではほとんど聴き取れません。演奏終了後もホールの特設ブースに戻って感想を述べていますから、英ぺの方はどうぞ。
それでも何となく聞き取れたのは、新作のタイトルはマックス・エルンストの絵画「ダダヴィル Dadaville」に触発された由。この絵はテイト・ギャラリーのコレクションにあり、そのボームページで見ることも出来ます。7分ほどの決して難解では無い現代音楽と聴きました。↓
http://www.tate.org.uk/art/artworks/ernst-dadaville-t03707
前半の最後は、今年の目玉でもあるピアノ協奏曲名曲選から、モーツァルトの第一弾。私はラルス・フォークトをナマで聴いたことはありませんが、弱音を大切にするピアノ。第1楽章の出も決然とした弾き方ではなく、そーッと出てくる感じ。この演奏スタイルにはベートーヴェン作のカデンツァは相応しくなく、誰のものか判らないカデンツァが演奏されました。
オラモ/BBC響のバックも丁寧なものでしたが、第3楽章の第183小節からのホルンを強奏させたのが印象的で、新鮮でもありました。その第3楽章のカデンツァは極く短いパッセージで、カデンツァと呼べるものではありません。手元のスコアは古いオイレンブルク版。
後半は聖書を題材にした「ベルシャザール王の饗宴」をテーマにしたもので、シベリウスとウォルトンの聴き比べ。オーケストラの編成からして2曲は全く対照的です。
シベリウスはもちろん生誕150年の一環で、この作品はプロムス初登場だそうですね。これはスコアが手元に無いので、無料楽譜サイトからスコアを読み込んでの鑑賞。実に便利な世の中になったものです。
作品は「東洋風行進曲」「ソリチュード」「夜曲」「カドラの踊り」の短い4曲で構成、特にヴィオラとチェロのソロが主体のソリチュードと、フルートのソロが活躍する夜曲が如何にもシベリウスらしい佳曲。極めて節約した編成で、フルートを受けるクラリネットのメロディーが第1交響曲の冒頭を連想させます。
最後は英国クラシック・ファンには大人気のウォルトンのオラトリオ。日本では余り演奏されませんが、かつてカラヤンが最近50年で書かれた合唱作品の最高傑作と呼んだほど。そのカラヤンが1948年にウィーンで唯一度だけ取り上げたことがあり、ウォルトンは思わず涙した、とコメンテイターが紹介していました。
今回の演奏は、何と31回目のプロムス登場だった由。オックスフォード版の大型スコアを見ながら聴きましたが、楽譜に指定されているように二つのブラスバンドを左右に置き、合唱もピッチを取るための管楽器補助無しに見事なアンサンブルを聴かせています。
この大作、以前に尾高/日フィル定期の感想を書いた際に、私なりの「聴き方」を書いたことがあります。我ながら実に参考になるなぁ~、なんちゃってネ。
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