グル―バーの新作初演

開幕してからウォルトン、ベートーヴェンと大作合唱曲が続きましたが、月曜日のプロムスは純粋器楽曲3曲のプログラムでした。BBCフィルと、その首席客演指揮者・ストルゴートの指揮。

7月20日 ≪Prom 5≫
ハイドン/交響曲第85番
     ~休憩~
HK・グルーバー HK Gruber/into the open…(世界初演)
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ(1911年版)
 BBCフィルハーモニック
 指揮/ジョン・ストルゴート John Storgards
 打楽器/コーリン・カリー Colin Currie

ハイドンとストラヴィンスキーは特に珍しいものではありませんが、ハイドンの交響曲は所謂パリ・セットの一つで、「王妃」というタイトルが付いています。個人的には学生時代に岩城宏之指揮のN響定期で聴いた覚えがありますが、放送とは言えナマ演奏を聴いたのはそれ以来かも。
ハイドンの短い交響曲に続いて新作初演かと思いましたが、ここで休憩に入り、後半がグルーバーとストラヴィンスキーという組み合わせ。

グルーバーはハインツ・カールという名前ですが、普通「エイチ・ケイ」グルーバーと呼ばれているようですね。ロマン派初期の「イー・ティー・エー・」ホフマンに倣ったのでしょうか。ホフマンはエルンスト(E)・テオドール(T)・アマデウス(A)の頭文字で、3番目のクリスチャン・ネームは本来はヴィルヘルムでしたが、モーツァルトにあやかって変更したもの。
グルーバー作品ではフランケンシュタイン!! が有名で、去年だったか下野竜也が読響で演奏、あの奇抜なチラシに誘われて聴いた方もおられるでしょう。私は聴いていませんが、誰が歌ったんでしょうか? まさかグルーバー本人が来日したのでは?

この人は1943年にウィーンで生まれた人で、ウィーン生まれの作曲家としてはシューベルト、ヨハン・シュトラウスに続く人。実際、現代のヨハン・シュトラウスと言った方が判り易い程で、フランケンシュタインも良く言えば楽しい音楽、悪口を言えば少しふざけた音楽ですよね。
ウィーン少年合唱団出身ですからバリトンはお手の物ですし、ウィーン・トーン・キュンストラー管弦楽団でコントラバスを弾いていたプレイヤー上がりでもあります。シャンドスには自ら歌ったフランケンシュタインの録音がありますし、BISにはトーン・キュンストラー管(クリスチャン・ヤルヴィ指揮)と一緒に歌っている録音もありましたっけ。これなどは昔の演奏家仲間との共演という和気藹々のアルバム。

今回の「into the open…」は一種の打楽器協奏曲で、ティンパニ6台ほか多数の打楽器が使われていますから、多彩な音色が楽しめます。グルーバー作品はブージー&ホークスから出版されていて、この作品も世界初演ながら既にスコアが入手できるようです。自身が書いた曲解も下記で読めますから関心ある方はどうぞ。演奏時間は27分ほどと結構長い。

http://www.boosey.com/cr/news/HK-Gruber-into-the-open-for-percussion-and-orchestra/100046&LangID=1

グルーバーの打楽器協奏曲は確か2作目で、上記BIS盤には前作の「ラフ・ミュージック Rough Music」が含まれています。これを聴いてみると(NMLで聴けます)、フランケンシュタイン同様にふざけた箇所が沢山出てきますが、今回の新作は至って真面目で、その意味では拍子抜けしました。グルーバーって、こんなシリアスな面もあるんだ! その辺りは曲目解説を読めば納得できます。

最後のストラヴィンスキーは、一種のピアノ協奏曲。今年のプロムスはピアノに限らず鍵盤の協奏曲にスポットを当てていますから、ペトルーシュカもその意味で選ばれているのでしょう。大編成の1911年版による演奏。
BBCフィルは御世辞にもヴィルトゥオーソ・オケとは言えません。こんなことを書くと怒られそうですが、レヴェルは日本のオケ(地方も含めて)の方がずっと高いと思いました。

 

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