プロムスのオルフェオ

プロムスでは毎年のようにオペラの出し物があり、ワーグナー、ヴェルディ、ブリテン、リヒャルト・シュトラウスのアニヴァーサリー・イヤーは多くの全曲演奏が楽しめました。
その意味では今年は比較的大人しく、全曲演奏は2曲だけ。その最初が4日に行われたモンテヴェルディの「オルフェオ」でした。

8月4日 ≪Prom 25≫
モンテヴェルディ/歌劇「オルフェオ」(イタリア語歌唱)
 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
 指揮/ジョン・エリオット・ガーディナー John Eliot Gardiner
 オルフェオ(テノール)/クリスティアン・アダム Krystian Adam
 ミューズと使者(ソプラノ)/フランチェスカ・アスプロモンテ Francesca Aspromonte
 ペルセフォネ(ソプラノ)/フランチェスカ・ボンコンパーニ Francesca Boncompagni
 カロンとプルトーネ(バス)/ジャンルカ・ブラット Gianluca Buratto
 エウリディーチェと希望(ソプラノ)/マリアナ・フローレス Mariana Flores
 ニンフ(ソプラノ)/エステル・ブラジル Esther Brazil
 第1の精霊(テノール)/ニコラス・マルロイ Nicholas Mulroy
 第4の羊飼いと第3の精霊(バス)/デヴィッド・シプレイ David Shipley
 アポロと第1の羊飼い(テノール)/アンドリュー・トーティス Andrew Tortise
 第2の羊飼い、第2の精霊、木霊(テノール)/ガレス・トレシダー Gareth Treseder
 第3の羊飼い(テノール)/デヴィッド・シプレー David Shipley
 合唱/モンテヴェルディ合唱団

御承知の様にモンテヴェルディのオルフェオはオペラのスタートに位置する作品。歴史に残る作品ではありますが、全曲をジックリ聴ける機会は貴重なものと言えるでしょう。なかなかCDなどには手を出し難いオペラですから。
今回はバロック・オペラには権威あるガーディナーの指揮、古楽器による歴史考証に基づく演奏で、ガーディナーは同オペラを1967年から取り組んでいる由。モダン・オーケストラの響きとは全く異なる音空間を楽しめる107分です。
ニンフを歌うエステル・ブラジルは、当初発表されていたシルヴィア・フリガート Silvia Frigato から変更になったようですね。

オルフェオのスコア、現在入手できるのはチェスター版とオイレンブルク版の2種類があるようです。チェスター版を見たことはありませんが、手元にあるのはオイレンブルク版で、クラウディオ・ガリコ Claudio Gallico と言う方が校訂したもの。
もちろん実際の演奏ではアーティキュレーション、リピート、使用楽器などはガーディナーの裁量に委ねられていると思慮しますが、ほぼオイレンブルク版通りの上演と聴きました。

全体は序曲とプロローグに続き5幕で構成されていますが、第2幕の後でチューニングの休憩が入るだけ。全体は通して演奏されました。
圧巻は第3幕のオルフェオの歌唱。オイレンブルク版には二通りのパートが記されていますが、アダムはメリスマをふんだんに取り入れたハイ・テクニックな歌を聴かせます。
最後のモレスカ Moresca (ムーア風舞曲の意味)は3回繰り返して盛り上げ、繰り返しの度に手拍子や打楽器の数を加えて賑々しく幕。歴史に残るオペラ第一号を遺産としてでなく、現代に通用するエンターテインメントとして聴けるチャンスを聴き逃すことの無いように。

 

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