注目の若手指揮者

7日のプロムス、正直な所あまり期待せずに聴き始めましたが、最初から素晴らしい表現力に驚嘆。改めてこの指揮者は何者? という印象でコンサートを聴き通してしまいました。そのプログラムは、

8月7日 ≪Prom 29≫
モーツァルト/「イドメネオ」バレエ音楽
ラヴェル/ピアノ協奏曲
     ~休憩~
メシアン(クリストファー・ディングル編)/Un Oiseau des arbres de Vie (Oiseau tui) (世界初演)
ストラヴィンスキー/3楽章の交響曲
ラヴェル(コリン・マシューズ編)/「鏡」~悲しき鳥(BBC委嘱、世界初演)
ラヴェル/ラ・ヴァルス
 BBCフィルハーモニック
 指揮/ニコラス・コロン Nicholas Collon
 ピアノ/ジャン=エフラム・バヴーゼット Jean-Efflam Bavouzet

BBCフィルは首席ストルゴートの指揮でペトルーシュカなどを聴いたばかり。申し訳ないけれどオケのレヴェルにクエスチョンマークな感想を抱いてしまいましたが、今回はとても同じオケとは思えません。改めて指揮者の存在が大きいことを実感しました。
と言ってもストルゴート氏がボンクラだと言っている訳ではなく(言っているのか?)、あくまでも放送を聴いた印象。こんな意見を真に受けてはいけませんし、音楽はナマ演奏に接して本当の良さが理解できると、小生は常々考えているのであります。

さてコロンという人、これまで私の視野には全く入っていなかった名前で、詳しいことは判りません。ただ言えるのは、このプロムスが音楽的に見て今年これまでの中では最高のレヴェルだった、ということだけです。自身のホームページもあるようですが、経歴や御面相などはこちらから↓

http://www.nicholascollon.co.uk/

舌を巻いたのは冒頭のモーツァルトから。イドメネオのバレエは余りコンサートで取り上げられる機会はありませんが、最初の1小節目から活気と推進力に満ちた音楽に圧倒されます。しかも、演奏順にこの指揮者の才気が感じられるのですが、それはこういうこと。
K367を充てられたバレエ作品は、①シャコンヌ、②パ・スール、③パス・ピエ、④ガヴォット、⑤パッサカリア、から成ることはご存知でしょうが、コロン君はその曲順を自由に入れ替えます。先ず①から始まりますが、シャコンヌは大雑把に三つの部分から構成されていて、第2部のラルゲットが終わった所で、突然演奏は③に飛びます。
慌ててスコアを探していると、そのまま④⑤と進み、再度①の第3部、即ちシャコンヌに回帰した後に②が堂々と奏でられて全体を終了。こんな思い切った並べ替えは初めて体験しましたし、それが真に説得力がある。コロン自身のアイディアかどうかは知りませんが、他から学んだものだとしても、そのセンスには脱帽です。

続くラヴェルは、もちろんピアノ協奏曲名曲選の一環ですが、バヴーゼットのソロはもちろん、バックが素晴らしい。協奏曲もチャンと振れる本格的な指揮者と聴きました。
バヴーゼットのアンコールは、ピエルネの演奏会用練習曲 作品13というもの。唖然とするテクニックと、煌びやかな音色で客席も大興奮。私はピエルネにこんな作品があることすら初めて知ったピアノ音痴ですが、今はNMLで確認することが出来る有難い時代です。

後半のプログラム、当初は編曲ものがラヴェル、メシアンの順に発表されていましたが、恐らく指揮者の判断で上記の様に入れ替えられました。更にメシアンの後でストラヴィンスキーというのも当初の発表とは異なり、最後にラヴェルを2曲続けてプログラムはずっと据わりが良くなったと思いました。
ストラヴィンスキーもラ・ヴァルスも随所にコロンのアイディアが横溢し、素晴らしい指揮者を発見したという悦びを楽しみます。彼、来年からハーグ・フィル(レジデンティー・オーケストラ)の首席指揮者に就任することが発表されたばかりだそうで、実はランニクルスのヴェルディと同じ日のマチネーでオーロラ管弦楽団ともプロムス出演していた由。遅れ馳せながら、これも聴いてみましょう。二つの田園交響曲と言う好奇心を擽るプログラムですゾ。

 

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