反戦と愛の交響曲

フィルハーモニアに続いては、ホスト・オケBBC響きの近現代作品プログラム。今年生誕150年のニールセン作品も含むコンサートでした。

8月25日 ≪Prom 54≫
ブリテン/シンフォニア・ダ・レクイエム
レイモンド・ユー Raymond Yiu/交響曲(BBC委嘱、世界初演)
     ~休憩~
ニールセン/フルート協奏曲
ヤナーチェク/シンフォニエッタ
 BBC交響楽団
 指揮/エドワード・ガードナー
 カウンター・テナー/アンドリュー・ワッツ Andrew Watts
 フルート/エミリー・バイノン Emily Beynon

このコンサートは特に統一性を見い出せる様な選曲ではないと思いますが、無理にこじつけられないこともないでしょう。というのは、

最初のブリテンは、御存知の様に日本の皇紀2600年のために委嘱された作品ですが、作品のタイトルを理由に日本が受け取りを拒否したことになっています。事の真偽は定かではありませんが、この際の委嘱作では最も有名になったというのは皮肉でしょうか。
プロムスでも良く取り上げられますし(私も実際に2011年のプロムスでナマ演奏を聴けました)、日本でも度々演奏されます。ブリテンでは最も良く聴かれる作品でしょう。私の感想では、タイトルからも連想されるように反戦交響曲だと思っています。

続いてはBBCが今年のプロムスのために委嘱した新作の初演。作曲家は漢字では「姚恩豪」と表記されるそうで、1973年生まれの中国の作曲家。ジャズ・ピアニストでもあります。自身のホームページがありましたので、プロフィールはこちら↓

http://www.raymondyiu.com/

新作の交響曲はカウンターテナーと管弦楽のための5楽章作品という変わった内容で、交響曲でもあり歌曲集でもあるという点はマーラーの大地の歌を連想させるよう。第2楽章はオーケストラのみで、全体は通して演奏されます。他の4楽章は夫々ウォルト・ホイットマン Walt Whitman 、コンスタンチン・カヴァフィ Constantine Cavafy 、トム・ガン Thom Gunn 、ジョン・ダン John Donne の詩が歌詞に用いられています。
25分ほど掛かる長い曲ですが、テーマに「愛と喪失」への想いがあるということで、全体的には癒し系と聴きました。ある意味でブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエムと通ずる音楽とも言えそう。

後半はガラリと変わって硬派系。ニールセンはプロムス初演だそうですが、私のニールセン入門曲はこの協奏曲でした。大昔の記憶ですが、シカゴ響の首席だったジュリアス・ベーカーのソロ、渡邉暁雄/日フィル定期で聴き、ティンパニとトロンボーンが大活躍する新鮮な響きに耳が洗われる想いをしたものです。
最後のヤナーチェク、エドワード・ガードナーはこの曲を得意にしていて、ベルゲン・フィルとのシャンドス盤(去年の録音)がNMLで聴けますネ。

ところでニールセンとヤナーチェク、二人に共通点があるのかと調べていましたら、この2曲は同じ1926年の作品なんですね。来年が作曲から90年という共通点。

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください