ビチュコフ指揮ウィーン・フィル

今週の土曜日がラスト・ナイトのプロムス、それを除く最後のオーケストラ、つまりトリは一昨年に続いてウィーン・フィルです。しかも今年は2夜連続、二人の指揮者による演奏会で、10日はビチュコフがウィーン・フィル縁の作品を指揮します。

9月10日 ≪Prom 73≫
ブラームス/交響曲第3番
     ~休憩~
シュミット/交響曲第2番
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 指揮/セミョーン・ビチュコフ Semyon Bychkov

演奏に付いては特に紹介することも無いでしょう。ウィーン・フィル特有の中身がギッシリと詰まった響きでロンドンっ子を喜ばせていました。
ブラームスの第3交響曲はウィーン・フィルが世界初演した作品ですし、録音も含めて歴史的名指揮者と何度も録音してきた、恐らく譜面無しでも演奏できそうな曲。

一方フランツ・シュミットはウィーン・フィルと雖もいつも演奏している作品ではないでしょう。プロムスでも滅多に聴けない作曲家で、これまでここで演奏された作品は第4交響曲と七つの封印の書だけだそうで、第2交響曲はプロムス初演。
何故ウィーン・フィルと縁か、と言えば、フランツ・シュミットはウィーン・フィルの(というよりウィーン国立歌劇場の)チェリストだったんですね。1896年、22歳で入団しましたが、この時は同オケの最も若い団員でした。
ところが4年後の1900年には、ウィーン・フィルで最も在職の長いチェリストだったと言うのですから驚き。辣腕を奮った音楽監督が技術的に満足が行かないメンバーを次々に首にしたからなんだそうで、その監督こそグスタフ・マーラーでした。この話はヘフリッヒ社が復刻したシュミット第1交響曲のスコアの序文に書かれていますから、興味ある方は是非。

ということで第2交響曲、全体は3楽章ですが演奏には50分を要する大曲。ブルックナーの後継者と言われるだけに金管のコラールが何度も響く大音響が魅力でしょう。
第2楽章が変わっていて、主題と変奏という形式で始まりますが、第9変奏がスケルツォで、第10変奏がトリオ。ここで形式は3部形式のスケルツォにすり替わってしまい、スケルツォが戻って終わるというもの。ウッカリ聴いているとシュミットの魔術にまんまと引っ掛かってしまいます。

初日のアンコールは、何とエルガーの「エニグマ変奏曲」からニムロッド。二日前にテミルカーノフとサンクト・ペテルブルグ交響楽団が全曲を演奏したばかりで、どちらも出掛けた聴き手はロシアとオーストリアの名門オケの聴き比べという何とも贅沢な体験をしたことになりますね。
もちろんこのアンコール、二日目のサイモン・ラトル「ジェロンティアスの夢」にバトンタッチする意図があるのは言うまでもありません。

 

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