2015ブリーダーズ・カップ初日

今年もこの時期がやってきました。カレンダーの関係で11月第1週か10月の最終週に行われるアメリカの、いや世界の競馬の祭典、ブリーダーズ・カップが今年は10月最後の二日間にキーンランド競馬場で行われます。
日本では宝塚記念の勝馬に優先出走権が与えられますが、今年も日本の競馬人はこれを無視し、日本からの参戦は1頭も無いという状況はここ数年変わっていません。

ということで10月30日の金曜日が初日、この日は他にもベルモント・パーク競馬場でG戦が一鞍行われましたので、先にそちらを片付けてしまいましょう。ターンバック・ジ・アラーム・ハンデキャップ Turnback the Alarm H (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)は fast の馬場に1頭が取り消して8頭立て。前走モンマス・オークス(GⅢ)に勝ったディライトフル・ジョイ Delightful Joy が4対5の1番人気。
レースは大外枠発走の2番人気(3対1)アメリカ America が先手を取って逃げましたが、前半4番手を進んでいた4番人気(6対1)のラ・マドリーナ La Madrina がスパートして一旦は第4コーナーで先頭に立ちます。しかしラ・マドリーナがそこから外に膨れる間に再び盛り返したアメリカ、直線で突き抜けると、後方4番手から追い込むディライトフル・ジョイを1馬身半差抑えて結果的には逃げ切りました。1馬身4分の3差で3番人気(9対2)のコール・パット Call Pat が最後方から追い込んでの3着。
ウイリアム・モット厩舎、クリストファー・デカルロ騎乗のアメリカは、これがG戦初勝利となる4歳馬。3歳時にはマザー・グース・ステークス(GⅠ)とガルフストリーム・オークス(GⅡ)で共に3着しており、去年の冬はアケダクトで一般ステークスを含めて3連勝。しかしその後はGⅠ戦4鞍を含めて5連敗中、最も良い結果だったのがデラウエア・ハンデ(GⅠ)の3着で、漸くG戦のタイトルを獲得しました。

そして愈々ブリーダーズ・カップの舞台となるキーンランド競馬場へ移動しましょう。BCシリーズに入る前に、この競馬場で通常行われているファイエット・ステークス Fayette S (GⅡ、3歳上、9ハロン)が前座を務めます。fast の馬場に2頭が取り消して9頭立て。去年秋にクラーク・ハンデを制してGⅠ馬となったホッパチュニティー Hoppertunity が2対1の1番人気。
6番人気(10対1)のインクリプション Encryption が逃げましたが、3番手を進んだ3番人気(4対1)のレース・デイ Race Day がこれを捉え、後方3番手から追い込むホッパチュニティーを4分の3馬身抑えて優勝。4馬身差でインクリプションが3着に逃げ粘りました。勝時計の1分47秒90は、これまでの1分48秒79を大幅に更新するトラック・レコードのオマケ付です。因みに今年初めに記録したこれまでのレコードは、今回は5着に終わったプロトニコ Protonico がベン・アリ・ステークス(GⅢ)で出したものでした。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のレース・デイは、今年3月にレーザーバック・ハンデ(GⅢ)、4月にはオークローン・ハンデ(GⅡ)を制していましたが、7月のサルヴァトーレ・マイル(GⅢ)6着、8月のフォアゴ―・ステークス(GⅠ)も8着と、ここ2戦奮わなかったために3番人気に甘んじていた実力馬でもあります。これで通算成績を11戦6勝とし、三つ目のG戦タイトル獲得です。

さて第6レースからが今年のブリーダーズ・カップ、今年は32回目を迎えました。キーンランド競馬場で開催されるのは今年が最初です。当初はクラシック、ターフ、マイル、ディスタッフ、スプリント、ジュヴェナイル、ジュヴェナイル・フィリーズの7レースでスタートしたBCですが、今は部門数も増え、今年は全部で13レース。初日の金曜日はディスタッフをメインに4部門が行われます。
その第一弾がブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・ターフ Breeders’ Cup Juvenile Turf (芝GⅠ、2歳牡せん、8ハロン)。2歳の芝戦が少ないアメリカとヨーロッパ勢の比較が毎年頭を悩ませる一戦ですが、数日間雨が続いた後の芝コースは yielding 、1頭が除外となり、フル・ゲートの14頭立てで行われました。結局5対2の1番人気に支持されたのは、先月バーボン・ステークス(芝GⅢ)に勝って2戦2勝の地元馬エアフォース Airforce でした。
最低人気(45対1)のマンハッタン・ダン Manhattan Dan が逃げて直線に入りましたが、逃げ馬はここで急激に後退。4番手を進んだエアフォースと、7番手から伸びた11番人気(18対1)のバーチウッド Birchwood が抜けてゴールを目指しましたが、大外枠発走から一旦は最後方に控えた3番人気(7対1)のヒット・イット・ア・ボム Hit It a Bomb が馬群を割って外から末脚を爆発させると、エアフォースを首差捉えて優勝。更に首差でバーチウッドが3着でした。
勝ったヒット・イット・ア・ボームはアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗のコンビ。ヨーロッパでは芝とタペタ・コースで夫々1勝しており、今回はG戦(Grade、Group を問わず)初挑戦でのタイトル獲得で、3戦3勝となります。大外発走と馬場(同馬は firm が得意)が不安材料でしたが、両方を克服して今年最初のBC優勝馬となりました。

BC第2戦は、第7レースのブリーダーズ・カップ・ダート・マイル Breeders’ Cup Dirt Mile (GⅠ、3歳上、8ハロン)。11頭が出走し、前走ウッドワード・ステークス(GⅠ)を逃げ切ったリーアムズ・マップ Liam’s Map が1対2の断然1番人気。レース直前までクラシックに挑戦するかこちらで確勝を期すか迷っていた陣営ですが、結局は確実に100万ドルを狙ってきました。
今回も逃げ切る作戦だったリーアムズ・マップでしたが、スタートが余り良くなく、5番人気(16対1)ブレイドスター Bradester の逃げを4番手で待機する予定外の流れ。3番手を進んだ2番人気(5対1)のリー Lea が先ず逃げ馬を捉えてゴールを目指しましたが、馬の後ろで落ち着かせていたリーアムズ・マップが直線で追い出すと、半ばでリーを一気に捉え、そのまま2馬身半差を付けて見事期待に応えました。3馬身4分の1差で8番手から追い込んだ3番人気(9対1)のレッド・ヴァイン Red Vine が3着に入って、ここは人気通り。
これがBC8勝目となるトッド・プレッチャー厩舎、同じく5勝目となるハヴィエル・カステラノ騎乗のリーアムズ・マップは、これでGⅠ戦に2連勝。これまでの逃げ以外のレース内容でも強い所を見せ、このレース史上最も高かった支持を裏切りませんでした。来年は2連覇かクラシック制覇か、と言いたいところですが、来年からケンタッキーのレーンズ・エンド・スタッドで種牡馬として供用されることが決まっているそうで、これが残念ながら引退レースになるようです。尤もアメリカのこと、オーナーの気が変わる可能性も無いではなさそうですが・・・。

この日三つ目は、ジュヴェナイル・ターフの牝馬版に相当するブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズ・ターフ Breeders’ Cup Juvenile Fillies Turf (芝GⅠ、2歳牝、8ハロン)。1頭が取り消して14頭が揃い、牡馬版を制したオブライエン/ムーア・チームのアリス・スプリングス Alice Springs が5対2の1番人気。と言ってもモイグレア・スタッド3着、チーヴリー・パーク4着で前走ニューマーケットの一般ステークスを勝ったばかり。ヨーロッパ勢では必ずしもトップクラスの成績ではありません。
レースは11番人気(28対1)のルビー・ネーション Ruby Nation が逃げましたが、これを2番手で追走した4番人気(6対1)のキャッチ・ア・グリンプス Catch a Glimpse が抜け出して快勝。6番手から内ラチ沿いに追い上げた本命アリス・スプリングスが4分の3馬身差で2着に食い込み、後方3番手から外を通って追い込んだ7番人気(14対1)のネモラリア Nemoralia が頭差で3着でした。
マーク・カッセ厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のキャッチ・ア・グリンプスは、サラトガのデビュー戦で5着した後、2戦続けてカナダのウッドバインの芝コースで走り、初勝利と前走ナタルマ・ステークス(カナダ芝GⅡ)を連勝した芝得意。特に前走は5馬身差で圧勝しており、二つ目のG戦制覇となります。カッセ師はBCの常連調教師ですが、これまで23回挑戦するも未勝利、これが念願のBC初制覇となりました。一方ジェルー騎手は、去年のスプリント(ワーク・オール・ウィーク Work All Week)を初騎乗で制し、今回は2度目の挑戦で何と2戦2勝。オーナーにとってもこれがBC初勝利です。

初日の最後は、BC当初から組まれていて今年が32回目となるブリーダーズ・カップ・ディスタッフ Breeders’ Cup Distaff (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。一時はレディーズ・クラシックとも呼ばれていましたね。本来なら大本命に推される筈のビホールダー Beholder が二日目のクラシックで牡馬に挑戦するため、1頭(去年の勝馬アンタパブル Untapable)が取り消して14頭立てのここは、ラフィアン(GⅡ)、オグデン・フィップス(GⅠ)、ベルデイム(GⅠ)と3連勝しているセカンド・ベストの5歳馬ウエディング・トースト Wedding Toast が5対2の1番人気。2番手以下も余り差無く続きます。
逃げたのは10番人気(45対1)のマイ・スイート・アディクション My Sweet Addiction 、これにジョイント8番人気(19対1)のヤヒルワ Yahilwa 、11番人気(49対1)のカラミティー・ケイト Calamyty Kate などが絡む展開。前半その直後の5番手に控えていた4番人気(7対1)のストップチャージングマリア Stopchargingmaria と、10番手辺りに付けていた7番人気(17対1)の3歳馬ステラー・ウインド Stellar Wind とが馬体を接するように外から追い込んでの一騎打ち。何度か接触寸前の叩き合いでしたが、終始リードを保っていたストップチャージングマリアがステラー・ウインドを首差抑えての逆転劇。3馬身半差で6番人気(9対1)の3歳馬カーラライナ Curralina が3着でした。2着のエスピノザ騎手からの異議申し立てもありましたが、着順を入れ替えるほどの不利があったとは言えず、審議の結果、入線通りで確定しています。人気のウエディング・トーストは、4番手追走も11着大敗。
ダート・マイルに続いてトッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のストップチャージングマリアは、これがGⅠ戦3勝るとなる4歳馬。3歳時にCCAオークスとアラバマ・ステークスを制しましたが、今期は5月のディスタッフ・ステークス(GⅢ)と8月のシュヴィー・ハンデ(GⅢ)のGⅢ戦2勝に留まっており、再びGⅠ勝利で年度チャンピオンを争う位置に復活してきました。

初日の最後、第10レースにはマラソン・ステークス Marathon S (GⅡ、3歳上、14ハロン)が組まれていました。かつてはBCマラソンとして行われていましたが、長距離戦は人気も無く、去年のサンタ・アニタではラス・ヴェガス・マラソン Las Vegas Marathon として行われ、今年は新たにマラソン・ステークスとして行われたもの。それでも1頭が取り消して13頭立ての多頭数が揃いました。チリの2000ギニーで2着しているザンビアン・ドリーム Zambian Dream という馬が5対2の1番人気に支持されていましたが、これはプレッチャー/カステラノ・コンビという要素が買われていたのでしょう。
4番人気(5対1)のマジェスティック・ハーバー Majestic Harbor がスローに落して逃げ粘りましたが、6番手に付けていた3番人気(9対2)のベイルアウトボビー Bailoutbobby が直線で抜け出し、逃げ馬に5馬身4分の1の大差を付け、最後は抑える余裕の楽勝。更に1馬身差で4番手を進んだ2番人気(7対2)のネックン・ネック Neck’n Neck が3着に入り、ザンベジアン・ドリームは5番手追走も7着とプレッチャー・マジック成らず。
ダグ・オネイル厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のベイルアウトボビーは、これがG戦初勝利となる6歳せん馬。今年はサンタ・アニタのトーキョー・シティー・カップ(GⅢ)2着、デル・マーのクーガー・ハンデ(GⅢ)でも2着と言うG戦入着歴がありました。

 

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