第347回・鵠沼サロンコンサート

先月に続き、今月も鵠沼海岸で上質な室内楽を堪能してきました。小田急江の島線の鵠沼海岸で下車、駅前商店街を抜けた住宅地の中に位置する「レスプリ・フランセ」を会場とする、正真正銘のサロンです。
拙宅から寄り道せずに向かえば歩きも入れて1時間チョッとの距離ですが、リタイヤードが湘南方面に出掛けて真っ直ぐ往復するワケはありません。毎度のことながら、鎌倉経由の大回りで会場に向かいます。

今回は鎌倉文学館のバラが未だ見頃だという情報を得たので、ここからスタートすることにしました。直通路線で鎌倉着、直ぐに江ノ電に乗り換え、二つ目の由比ヶ浜で下車。
この後一々詳しくは取り上げませんが、家内の薔薇撮影に1時間以上付き合い、徒歩で長谷へ。そう言えば鎌倉の大仏が間もなく改修工事に入って暫くは拝観できなくなるということを思い出し、今更とは思いながらも高徳院へ。
思えば大仏を拝んだのは小学校の遠足以来で、この日も大仏をバックに小学生一行が記念撮影をしていました。60年前と同じ風景でしたが、やはり違っているのは海外からの観光客が多いことでしょう。彼がカメラを向けている先は、日本人とは視点が違うようです。

混雑は早々に退散し、前回気になっていた極楽寺へ。長谷の隣駅なので、地図を頼りに徒歩で。曇天の平日ということもあるのか、この散歩コースを歩く人は余り無く、古都の古道を楽しみます。鎌倉文学館でも目立ちましたが、今はツワブキと皇帝ダリアが盛り。
鎌倉界隈を歩いていて目立つのは季節外れの朝顔で、晩秋にもなって青紫の花を付けているのは、所謂セイヨウアサガオという品種が大量に野生化しているのでしょうか。東京の都心部では余り見掛けない光景です。

今回は藤沢には戻らず、極楽寺で再び江ノ電に乗って江の島へ。時間も丁度良いので海の幸を美味しく頂きました。江ノ電の江ノ島駅と、小田急江ノ島電鉄の終着駅となる片瀬江ノ島駅とは目と鼻の先。竜宮城を模したような華美な駅から鵠沼海岸は僅か一駅です。
ということでサロンの11月例会は堤剛によるバッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏会の1回目。こんな曲順で演奏されました。

バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007
バッハ/無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV1011
     ~休憩~
バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009

演奏開始前に挨拶された平井氏の解説では、今シーズンの鵠沼サロンは25周年の記念の年を迎え、第1シーズンの復刻が中心のプログラムとのこと。私は聴きませんでしたが、9月の加藤知子は第1回サロン・コンサートの出演者でしたし、もちろん堤剛のバッハ全曲も25年前のリヴィヴァルなのです。
最近の堤氏はバッハ全曲の前半を1→3→5の順序で取り上げますが、今回は25年前と同じ順序での演奏に拘ったとのことでした。

全国にサロン・コンサートは数多あれど、25年も続いている歴史と伝統、出演者のレヴェルの高さは鵠沼が断然他を抜いてる、というのは平井氏の自画自賛ばかりではなく、出演者が日本でサロンコンサートと考えた時に真っ先に頭に浮かぶのが鵠沼だということでも証明されるでしょう。
氏によれば、来年の秋は出演者(未発表ですが)のレヴェルが大変なことになっているそうで、演奏家はどんどん押し寄せる状態ですが、来ないのはお客さんだけなんだそうな。鵠沼サロンは東京からは比較的足も良く、寄り道もまた楽し。月1回の火曜日は室内楽プラスで楽しまれることを私からも強くお勧めします。

さてバッハ。目の前で達人と音楽を共有するのに理屈は要りません。それがバッハのチェロとあれは言うこと無し。氏のバッハは、同じ趣向の3曲を続けて演奏するのではなく、作品一つ一つの性格を明瞭に弾き分けて飽きさせません。
淡々と始まる1番。これとは対照的に動きを大きく取ったスケール感のある5番。そして流麗に音楽を歌わせる3番。弓の使い方も夫々に違いがあるようで、これは目で見て聴かなければ判らないでしょうね。

もちろんアンコールも。次回の予告編ともなる6番のガヴォットに続き、カザルスの「鳥の歌」も。
サントリーホール館長でもある堤氏によると、先日来日したヨー・ヨー・マが丁度還暦を迎えたとのことで、ケネディ駐日大使が赤いチャンチャンコをプレゼント。サントリーホールでマは、それを来て鳥の歌をアンコールしたそうです。
“私はチャンチャンコは来ません。還暦はずっと前に過ぎましたから”とサロンを笑いに誘ってお開き。このアットホームで温かい聴環境こそが、鵠沼の醍醐味と申せましょう。

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください