フロリダ・ダービー、強いのはどっちだ?

4月第1週のアメリカ競馬は、ケンタッキー・ダービー、オークスの5週前。今週と来週がクラシック・トライアルの最終ステップということになります。
昨日は3つの競馬場で合計10鞍のG戦が行われましたが、今回はフロリダ編とその他の二つに分けてレポートしましょう。競馬界の注目はガルフストリームのフロリダ・ダービー、2強の激突が早くも実現しました。先ずそのフロリダから。

ということで2日のガルフストリーム・パーク競馬場、メインのフロリダ・ダービーを含めて7鞍のG戦が目白押し。レース順に取り上げて行きます。
最初は第5レースに組まれたスキップ・アウェイ・ステークス Skip Away S (GⅢ、4歳上、9ハロン)。去年は9.5ハロンでしたが100メートルほど短縮され、sloppy の馬場に6頭立て。前走ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)で不利を被り4着入線から3着に繰り上がったヴァリッド Valid が2対5の圧倒的1番人気。
そのヴァリッドがクラブハウス・ターンを利して先頭に立つと、そのまま後続を引き連れての逃げ切り勝ちで人気に応えました。1馬身4分の3差で4番手を進んだ2番人気(4対1)のティーム・カラーズ Team Colors が2着に入って順当、更に3馬身半差で2番手を追走した最低人気(60対1)のエンダース・キャット Enders Cat が3着に粘りました。
マーカス・ヴィターリ厩舎、主戦のニック・フアレズが騎乗したヴァリッドは、これがG戦4勝目となる6歳せん馬。今年のドン・ハンデ(GⅠ)は2着でしたし、去年のガルフストリームではフレッド・W・フーパー・ハンデ(GⅢ)に、モンマスでもフィリップ・H・イズリン・ハンデ(GⅢ)にも勝っていました。

第7レースは今年が50回目になるというガルフストリーム・パーク・オークス Gulfstream Park Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。ケンタッキー・オークスに100ポイントが掛かるレースには7頭が出走し、スカイラーヴィル・ステークス(GⅡ)を含めて3戦無敗のオフ・ザ・トラックス Off the Tracks が新オーナーの元で4対5の1番人気に支持されていました。去年のアルシバイアディーズ・ステークス(GⅠ)優勝以来となるゴモ Gomo は7対2の2番人気。
4番人気(9対2)のパオラ・クイーン Paola Queen が先手を奪って逃げましたが、第3コーナーで2番手でマークしていた3番人気(4対1)のゴー・マギー・ゴー Go Maggie Go がこれを交わして先頭に立つと、そのまま粘るパオラ・クイーンに2馬身4分の1差を付ける番狂わせとなりました。4番手を進んだ人気のオフ・ザ・トラックスも追い上げましたが、半馬身届かず3着まで。ゴモは更に5馬身半遅れの4着に終わりました。休養明けと泥んこ馬場を考えれば好走と言えるかもしれません。
デール・ロマンス厩舎、ルイス・サエズ騎乗のゴー・マギー・ゴーは、3月13日にガルフストリームで2着以下に4馬身差を付けて新馬勝ちしたばかり。これで2戦2勝ですが、陣営はケンタッキー・オークス挑戦を明言しています。今回は敗れたオフ・ザ・トラックス、ゴモもオークスに向かう青写真に変更は無いようです。

続く第8レースは芝コースのアップルトン・ステークス Appleton S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。ここからG戦では4レース連続となる芝コースは good と稍重。8頭が参戦し、去年のガルフストリームで芝コース初勝利を挙げ、ベルモント・ダービー(GⅠ)も制したフォース・ザ・パス Force the Pass が5対2の1番人気。続く7対2には3頭が並ぶ混戦模様でした。
2番人気の一角ロング・オン・ヴァリュー Long On Value が逃げましたが、2番手を進んだフォース・ザ・パスが早目にこれを交わして直線。そのまま引き離すかに見えましたが、後続から3番手を進んだ6番人気(8対1)のリポーティング・スター Reporting Star と、4番手追走の2番人気一角のディヴィジデロ Divisidero が抜け、3頭の叩き合い。最後は真ん中を通ったリポーティング・スターが、外のディヴィジデロを半馬身抑える波乱となりました。頭差でフォース・ザ・パスは3着。
ブレンダン・ウォルシュ厩舎、7レースに続いて連勝となるルイス・サエズ騎乗のリポーティング・スターは、カナダのGⅡ戦に勝ったことのある6歳せん馬。去年はガルフストリームで一般ステークス(エル・プラード・ステークス)に勝ってシーズンを終え、今期も1月のガルフストリームで前走一般ステークス(サンシャイン・ミリオン・ターフ・ステークス)2着で始動し、これがアメリカでのG戦初勝利となります。

2レース飛んで第11レースとなるオーキッド・ステークス Orchid S (芝GⅢ、4歳上牝、11ハロン)、去年は12ハロンでしたが今年は1ハロン短縮。9頭が出走し、去年のBCフィリー・アンド・メア・ターフで5着だったフォト・コール Photo Call がイーヴンの1番人気。
スタートして暫くは4番人気(9対1)のクワイエット・キッテン Quiet Kitten が逃げましたが、2番手に付けたフォート・コールが最初のスタンド前でス~ッと先頭に。馬が行くに任せた本命馬、その後も後続を寄せ付けず、前半は最後方に待機していた並んだ4番人気(9対1)のソングオブアイスアンドファイア Songoficeandfire に4分の3馬身差を付ける逃げ切り勝ちで人気に応えました。1馬身半差で7番人気(23対1)のアクナハ Achnaha が3着。
前走からトッド・プレッチャー厩舎に転じ、ハヴィエル・カステラノが騎乗したフォト・コールは、これがG戦は3勝目。去年8月にモンマスで9ハロンのヴァイオレット・ステークス(芝GⅢ)、9月にはサンタ・アニタで10ハロンのロデオ・ドライヴ・ステークス(芝GⅠ)に勝っており、勝距離を徐々に伸ばして今回は11ハロンで優勝と、流石はガリレオ Galileo の娘です。GⅠ優勝の後BC5着、前走2月のエンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)4着と連敗中でしたが、ここで再び勝ちパターンを取り戻したと言えそうです。

第12レースも芝のハネー・フォックス・ステークス Honey Fox S (芝GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。アップルトンの牝馬バージョンですが、1頭が取り消して7頭立て。去年をマイ・チャーマー・ハンデ(芝GⅢ)勝ちで締め括り、前走フォト・コールが4着だったエンデヴァー・ステークスでは2着と先着していたレディー・ララ Lady Lara が2対1の1番人気。
レースは4番人気(5対1)のセレスティーン Celestine が逃げ、レディー・ララは後方2番手に待機。しかし馬場が水分を多く含んでいることもあってか、逃げ馬のペースは衰えるどころが直線では更に後続を引き離す勢いで、3頭が演ずる2着争いに3馬身4分の1差を付けたまま、セレスティーンが逃げ切ってしまいました。2着は首差で2番手追走の6番人気(12対1)ミシシッピー・デルタ Mississippi Delta が粘り込み、3番手を進んだ2番人気(5対2)のサンディーヴァ Sandiva が3着。レディー・ララは後方のまま6着敗退に終わっています。
人気馬と同じウイリアム・モット厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のセレスティーンは、これがG戦初勝利となる4歳馬。去年は4連勝、ステークスも3連勝しており、勝鞍は6月のベルモントで一般ステークス(ワイルド・アプローズ・ステークス)に勝って以来となります。その間、12月のトロピカル・パーク・オークスで2着、2月のサンド・スプリング・ステークスでも3着と堅実に成績を残してきました。

メインのフロリダ・ダービーの前に行われたのがパン・アメリカン・ステークス Pan American S (芝GⅡ、4歳上、12ハロン)。オーキッドの牡馬版で、2013年の勝馬で今年はダート変更時のみ出走のトゥワイライト・エクスプレス Twilight Express と、もう1頭が取り消して9頭立て。前走マック・ダイアルミダ・ステークス(芝GⅡ)に続いてGⅡ戦2連勝を目指すグランド・ティート Grand Tito が9対5の1番人気。
レースはスタートから4番人気(7対1)のシーキング・アルファ Seeking Alpha が先頭立ってスローの逃げ、順位が変わらないまま向正面。しかし3番手を進んだグランド・ティートが第4コーナーでセナ等に立ったところ、後方3番手の内で控えていた2番人気(5対2)のカイグン Kaigun が第4コーナーで外に出し、最後方から直線では思い切って内ラチ沿いを伸びた同じ2番人気のドイツGⅡ馬ウェイク・フォレスト Wake Forest を頭差抑えての優勝。1馬身半差でグランド・ティートは3着に終わりました。
マーク・カッセ厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のカイグンは、これがG戦3勝目となる6歳せん馬。2014年のシービスケット・ハンデ(芝GⅡ)、去年はカナダの芝GⅡ戦(プレイ・ザ・キング・ステークス)を制していました。当アメリカ競馬コーナーではすっかりお馴染みの馬で、ここ4戦でも続けてG戦で2着。12月末のW・L・マックナイト・ハンデ(芝GⅢ)、1月のジョン・B・コナリー・ターフ・カップ(芝GⅢ)と惜敗が続いていました。

そして最後は愈々フロリダ・ダービー Florida Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)。ケンタッキー・ダービー100ポイント対象はもちろん、2頭の無敗馬の対決が何と言っても注目を集めていました。出走馬は10頭でしたが、今回がGⅠ初挑戦となる5戦無敗のモヘイメン Mohaymen が4対5で1番人気に推され、6戦無敗のGⅠ3勝馬ナイクィスト Nyquist が6対5で2番人気。勝てばGⅠ初勝利となるモヘイメンが人気面で上回ったのは、ガルフストリームで今季既に2勝していることが有利と考えられたからでしょうか。いずれにしても3番人気が15対1、4頭が99対1のオッズだったことを見ても、フロリダ・ダービーが2強のマッチレースと思われていたことの証明でもあります。
スタートが抜群だったのがナイクィスト、そのまま先頭に立つと、モヘイメンの挑戦を待ちます。そのモヘイメンは前半は4番手、第3コーナーを過ぎる辺りから外を通って追い上げ、第4コーナー手前でナイクィストに並ぼうとした所まで。2頭のマッチレースは実現せず、ナイクィストがそのままライヴァルを引き離すと、7番手を進んだ5番人気(21対1)のマジェスト Majesto に3馬身4分の1差を付けて無傷の連勝記録を「7」に伸ばしました。1馬身差の3着には最後方から追い込んだ4番人気(16対1)のフェローシップ Fellowship が入り、モヘイメンは更に4馬身離されての4着。2強対決は不発に終わると共に、モヘイメンは初黒星の完敗です。
ダグ・オネイル厩舎、マリオ・グティエレス騎乗のナイクィストに付いては説明無用。既にGⅠ戦は4勝目で、間違いなくケンタッキー・ダービーの中心になるでしょう。父アンクル・モー Uncle Mo も冬場のダービー大本命でしたが、トライアルで負け、故障によりクラシックを棒に振った馬。10ハロンの距離に勝鞍が無かったことが産駒の唯一の不安ですが、フロリダ・ダービーの内容から見て、ナイクィストに距離不安は無いものと思われます。我らがラニにとって最大の相手になるでしょう。

4月2日のアメリカ競馬レポートはここで一旦区切り、残るターフウェイ・パークとサンタ・アニタは稿を改めます。

 

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