2016皐月賞馬のプロフィール

いろいろ所用があって更新が遅れましたが、今年の皐月賞馬の血統を見て行きましょう。三強という前評判を覆したディーマジェスティです。
実は三強の内の2頭、マカヒキとサトノダイヤモンドは共にアルゼンチン牝系で、最近は目立った活躍馬(欧米での)に恵まれていなかったファミリー。どちらかが勝ったら血統調べに手古摺りそうだと思っていましたから、個人的には一安心の結果でした。

ディーマジェスティ Dee Majesty は父ディープインパクト、母エルメスティアラ、母の父ブライアンズ・タイム Brian’s Time という血統。ディープインパクトにとって最初の皐月賞馬で、今年の皐月賞はディープのワン・ツー・スリーという結果でもありました。
今回は何時ものように母から順次遡って牝系を辿って行きましょう。

母エルメスティアラ(1998年 鹿毛)は門別産の未出走馬。ディーマジェスティは7番仔で6頭目の勝馬になるようです。以下に生年順に産駒を纏めてみました。
2003年 エルミラージュ 牝 栗毛 父アフリート Afleet 未出走。現在までに4頭の勝馬を出しているが、ステークス勝馬は無し。
2005年 ティアップタイガー 牡 鹿毛 父アグネスタキオン 中央と地方で45戦3勝。勝鞍は何れも地方競馬でのもの。
2006年 エルメスグリーン 牝 鹿毛 父アグネスタキオン 中央競馬で23戦2勝。勝鞍は阪神のダート1400メートルと、中京のダート1700メートル。繁殖牝馬としては今年の3歳馬が初産駒。
2009年 セイクレットレーヴ 牡 鹿毛 父アドマイヤムーン 中央競馬で2歳から7歳まで走り29戦2勝。クロッカス賞(東京1400メートル)に勝ち、NHKマイル5着、ニュージーランドトロフィーで2着。
2010年 ワールドレーヴ 牡 黒鹿毛 父ファンタスティック・ライト Fantastic Light 中央競馬で現在まで27戦3勝し現役。日野特別(東京ダート2100メートル)と陣馬特別(東京2400メートル)、ダートと芝で特別勝ち。
2011年 ホクラニミサ 牝 黒鹿毛 父ディープインパクト 中央競馬で現在まで15戦2勝し現役。デイジー賞(中山1800メートル)に優勝。
2013年 ディーマジェスティ 今年の皐月賞馬

このあとも2年続けてディープインパクトに交配されたようです。初産駒からセイクレットレーヴまでは門別産ですが、ワールドレーヴ以降は静内産。移転の経緯などは優駿などの情報誌で確認して下さい。

2代母はシンコウエルメス(1993年 鹿毛 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells)。1980年に創設されたアイルランドを代表する商業生産者バロンスタウン・スタッドで生産され、安田修氏がオーナー。日本に輸入されて藤沢和雄厩舎に所属しましたが、3歳の4月に東京競馬場の1600メートルでデビュー、岡部騎手騎乗で1番人気に支持されながらも5着に終わりました。
レース経験はこれだけで4歳で繁殖入りし、その初産駒がディーマジェスティの母エルメスティアラということになります。2番仔のエルノヴァを出したあと再びアイルランドに買い戻された(ゴドルフィンが購入した模様)シンコウエルメス、3番仔以降は主にヨーロッパで走るという珍しいケースでもあります。

そのエルノヴァ(1999年 鹿毛 父サンデー・サイレンス Sunday Silence)は中央競馬で33戦5勝。5歳時に秩父特別(東京2000メートル)、HTB杯(函館1800メートル)と特別に2勝し、クイーン・ステークス2着、エリザベス女王杯3着、オールカマー3着、中でもステイヤーズ・ステークス2着と長距離の重賞でも好走し、ステイヤーとしての素質を垣間見せました。繁殖牝馬としては、現時点でステークス勝馬は出ていません。

シンコウエルメスの3番仔以降では英国のミュージドラ・ステークス(GⅢ)2着のグレン・イネス Glen Innes 、11ハロンのリステッド戦に2勝してフロール賞(GⅢ)3着のレイク・トーヤ Lake Toya 、2歳時にイギリスのリステッド戦(7ハロン)に勝ってシェーヌ賞(GⅢ)で3着した今年のクラシック世代のシックスス・センス Sixth Sense などを出して今日に至っています。
その娘ではフランスで3戦1勝したシンティー Shinty 、同じくフランスで1勝したブルー・ダニューブ Blue Danube が日本に輸入され繁殖に上がっていますが、この馬たちからも現時点では活躍馬は出ていません。

続いて3代母がドフ・ザ・ダービー Doff the Derby (1981年 鹿毛 父マスター・ダービー Master Derby)。この馬自身は未出走ですが、上記バロンスタウン・スタッドに繁殖入りしてからこのファミリーが愈々光彩を放ち始めます。
ここからは産駒を1頭1頭取り上げる余裕はありませんが、主なものを列記すると、
先ず1987年生まれのウエディング・ブーケ Wedding Bouquet はアイルランドでパーク・ステークス(GⅢ)、アメリカでもモンロヴィア・ハンデ(GⅢ、6.5ハロン)に勝ってアイルランドのナショナル・ステークス(GⅠ)で2着、フェニックス・ステークス(GⅠ)でも3着に入ります。
繁殖入りしてからは娘のヴェンチュラ Ventura を経て名スプリンター/マイラーのムーンライト・クラウド Moonlight Cloud を出します。ムーンライト・クラウドは当競馬ブログでも度々取り上げているように、ムーランとジャック・ル・マロワのマイル戦GⅠ、7ハロンのフォレ賞、短距離GⅠのモーリス・ド・ギースト賞に至っては3連覇を達成するなど稀代の短距離馬。

次に1988年生まれのジェネラス Generous 。この馬に付いては改めて紹介するまでもない程で、2歳時にはデューハースト・ステークスを制し、翌年のダービー、愛ダービーと連覇し、その年のキングジョージも勝って真のチャンピオンとなります。もちろん種牡馬としても活躍中。
3年後のオースミタイクーン(1991年生まれ)は日本で活躍。マイラーズ・カップとセントウル・ステークスとG戦は2勝でしたが、有馬記念5着が光ります。

シンコウエルメスの翌年、1994年に生まれたストロベリー・ローン Strawberry Roan は愛1000ギニーで2着、愛オークスでも4着した馬。母としても南アフリカのクラシックで入着したベリー・ブレイズ Berry Blaze という牝馬を産んでいます。
最後に1998年、ドフ・ザ・ダービーは2頭目のクラシック馬イマジン Imagine を産みます。イマジンは愛1000ギニーと英オークスを制したマイル/クラシック距離の名牝で、母馬としてもジャン=リュック・ラガルデール賞勝ちのホレーショ・ネルソン Horatio Nelson 、愛2000ギニー3着のヴァイカウント・ネルソン Viscount Nelson などを出しで活躍中。

4代母はマルガレーテン Margarethen (1962年 鹿毛 父タルヤー Tulyar)。彼女の産駒で競走馬として活躍したのは何と言ってもガネー賞に勝ったトリリオン Trillion で、更にその娘トリプティク Triptych は牝馬にも拘わらず愛2000ギニーを制するなどGⅠ戦に9勝した女傑。我が国が海外の競走馬に門戸を開放した初期に、日本の競馬ファンの度肝を抜いたことを覚えておられるオールド・ファンも多いことでしょう。
トリリオンにはトレヴィラ Trevilla という娘もあり、この牝馬の3代末裔に登場したのが彼のトレーヴ Treve 。去年は惜しくも凱旋門賞3連覇を逃したものの、仏オークスを無敗で制した同馬の活躍は記憶に新しい所。

この他マルガレーテンから派生したファミリーには他にもGⅠクラスがズラリと並び、仏2000ギニーのランドシーア Landseer 、安田記念に勝った香港のブリッシュ・ラック Bullish Luck 、などなど・・・。

5代母はラス=マリー Russ-Marie (1956年 鹿毛 父ナスルーラー Nasrullah)と言い、マルガレーテンの他にもアメリカで枝葉を広げているレディー・マルゲリー Lady Marguery 、豪州でGⅠ馬を輩出中のティム・マリー Tim Marie がいます。

以上見てきたように、ディーマジェスティは今年のクラシック世代でも名立たる名門の出。距離適性は父親の影響を受けるケースも多いのですが、ジェネラスにしてもトレーヴにしてもムーンライト・クラウドにしても大レースに勝つのが単発的では無いことが共通しているように思います。
ジェネラスはダービーからキングジョージまでGⅠ戦を3連勝しましたし、トレーヴもデビューから5連勝で凱旋門賞を奪取した馬。ムーンライト・クラウドは8歳にしてギースト、マロワ、フォレを一気に3連勝して見せました。

父ディープインパクトはダービー、菊花賞も制した三冠馬で、父系に距離不安を言うのはナンセンスでしょう。牝系の特徴を加味し、ディーマジェスティが一気に三冠路線を突っ走ったとしても私は驚きませんね。
ファミリー・ナンバーは4-n。1000ギニー馬セント・マルガリート St. Marguerite を基礎牝馬とする牝系です。

 

 

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