大本命の大凡走!

海外競馬ファンの皆様は既に御存知のように、今朝方ニューマーケットから衝撃的なニュースが飛び込んできました。2000ギニーの大本命馬がまさかの大惨敗。
4月30日のニューマーケット競馬場は、今年ヨーロッパ最初のクラシック(と言ってもイタリアは先週終わりましたが)を含めてG戦3鞍。先ずは最後に行われた2000ギニーからレポートして行きましょう。

この日の馬場は good to soft 、所により good というもので、日本なら重馬場という感覚でしょうか。2000ギニー・ステークス 2000 Guineas S (GⅠ、3歳牡牝、1マイル)は枠順で紹介したように13頭が出走し、前評判通りエア・フォース・ブルー Air Force Blue が4対5の圧倒的1番人気に支持されていました。
ストーミー・アンタルティック Stormy Antartic の2番人気(7対1)、マーセル Marcel が3番人気(8対1)だったのも事前の予想通りでしたが、マーセルのオッズが若干上がって単勝900円だったのが多少変わった点でしょうか。

何が勝つかというより、本命がどんな勝ち方をするかに興味が集まっていたギニーですが、競馬はやってみなければ判らないもの。お決まりの言い方がピッタリの結果になってしまいます。
スタートで真っ先に飛びだしたのは、1番枠を引いた6番人気(14対1)のガリレオ・ゴールド Galileo Gold 。ニューマーケットの1マイルは直線コースですから、スタンドから最も遠い枠が1番で、順にスタンド側に番号が大きくなっていく方式。つまりガリレオ・ゴールドは一番外からダッシュ良くハナを叩いた形です。

道中もこれに競り掛ける馬が何頭かいましたが、結局ガリレオ・ゴールドは残り2ハロンから後続を引き離しに掛かり、最後は何とスタンドに近いコースにまで馬を寄せながらも堂々の逃げ切り勝ちと言って良いでしょう。ゴール手前で騎乗したフランキー・デットーリは右手を高々と挙げてのゴール。
1馬身半差で4番人気(9対1)のマサート Massaat が2着、更に2馬身差で10番人気(33対1)の伏兵リブチェスター Ribchester が入りましたが、共に先行していた馬たちで、結局は前に行った馬たちでの決着となりました。以下4着は7番人気(20対1)のエア・ヴァイス・マーシャル Air Vice Marshal 、5着に最低人気(100対1)のケンタッキーコネクション Kentuckyconnection というのも如何にも象徴的。

本命のエア・フォース・ブルーは中団から後方を進んでいましたが、ペースが速くなった所からは全く付いて行けず、ライアン・ムーアも諦めて最後は馬を押さえ、結局は後から二つ目の12着で入線。期待を完全に裏切ってしまいました。
人気馬の凡走はエア・フォース・ブルーだけに限らず、2番人気ストーミー・アンタルティックは11着、3番人気のマーセルが最下位。何のことはない、上位人気3頭が下位3頭を独占という散々なクラシックです。

勝ったガリレオ・ゴールドは、去年夏にヴィンテージ・ステークス(GⅡ)に勝ち、フランスのジャン=リュック・ラガルデール賞(GⅠ)では3着だった馬。マイル戦は初挑戦でした。管理するヒューゴー・パーマーは一昨年の夏にG戦初勝利を記録した若手の調教師で、去年夏にはカヴァート・ラヴ Covert Love で愛オークスを制してクラシック初勝利。もちろん英国のクラシックは初制覇となります。
愛オークスも、ガリレオ・ゴールドのサパラティヴも本人はトルコで新婚旅行中だったという猛者ですが、今回の2000ギニーは当初、“何が起きたのか判らなかった”と言うほど。尤も騎乗したデットーリは自信があったようで、この馬のスタミナを信頼して前での競馬を選択したようです。デットーリの2000ギニーは3勝目、1996年のマーク・オブ・エスティーム Mark of Esteem 、1999年のアイランド・サンズ Island Sands に続く17年振りの美酒となりました。オーナーはシェイク・ジョハーン・アル・サニ氏を総裁に戴くアル・シャカブ。

そした話題はダービーに。ガリレオ・ゴールドは仏ダービーとセント・ジェームス・パレス・ステークスには登録があるものの、英ダービーは視野には入っていませんでした。しかし今回の圧勝からオッズは33対1から一気に12対1に上昇。陣営も検討せざるを得ないようです。現時点では“ダービーはダービー”として白紙とのこと。因みにマイル戦のセント・ジェームス・パレスのオッズは2対1となっています。
血統は週末の競馬が一段落してから追々紹介して行きますが、馬名の「ガリレオ」は母の父。父はマイラーのGⅠ馬パコ・ボーイ Paco Boy というところが悩ましい点でしょう。叔父に短距離のGⅠ馬ゴールドリーム Goldream がいる一方で、ダービー/凱旋門賞のステイヤーであるモンジュー Montjeu もいるという具合。近親にはマイル・チャンピオンシップのダノンシャークの名前もありますが、詳しいことはプロフィールで。

一方敗れたエア・フォース・ブルーについては、騎乗したムーアが“去年とは別の馬だった”というコメントしか伝わっていません。ショックの大きさが窺えます。愛2000ギニー、ダービーなどの予定も白紙に戻るのではないでしょうか。

さてここからは残るG戦2鞍をレース順に、かつ簡潔に。
短距離のパレス・ハウス・ステークス Palace House S (GⅢ、3歳上、5ハロン)は1頭が取り消したものの21頭立ての大混戦。サンダウンのザ・スプリント(GⅢ)など短距離で5勝している4歳馬ワーディー Waady が9対2の1番人気。
これだけの多頭数となるとコースをフルに使って横一杯のスタートから、やがて馬群はスタンド側と中央の二手に分かれます。ゴールに近づくにつれ、6頭ほどの小軍団を形成していたスタンド側が優位に立っているのが確実となり、先行していたジョイント11番人気(20対1)の伏兵プロフィタブル Profitable が抜け、同じくスタンド側から外に出して追い込んだ3番人気(6対1)のジャングル・キャット Jungle Cat に半馬身差を付けて優勝。本命ワーディーは首差で3着に入りましたが、これもスタンド側を先行していたグループでした。

クライヴ・コックス厩舎、アダム・カービー騎乗のプロフィタブルは、これがG戦初勝利となる4歳馬。去年のコモンウェルス・カップ(GⅠ)では5着しており、続くナンソープ・ステークス(GⅠ)は10着敗退。シーズン最後のプチ・クーヴェール賞(GⅢ)5着でシーズンを締め括り、今回が4歳初戦でした。
唯一度走った6ハロン戦(ナンソープ)だけが着外で、5ハロン戦では5着以下は無いという典型的な5ハロン馬。勝鞍は昨夏ヨークのリステッド戦以来のことです。もう一戦使ってからロイヤル・アスコットのキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)というローテーションになるでしょう。現在のオッズは16対1。

最後はジョッキー・クラブ・ステークス Jockey Club S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。ここも1頭が取り消して6頭立て。何とクラシック馬が2頭も参戦するという豪華メンバーで、去年の愛ダービー馬ジャック・ホッブス Jack Hobbs が8対15の断然1番人気。セント・レジャーを二度(実際のレースと降着審議への異議申し立てで)勝った牝馬のシンブル・ヴァーズ Simple Verse が7対1で2番人気。
3番人気(7対1)のビッグ・オレンジ Big Orange が逃げ、シンプル・ヴァーズは2番手を追走。しかしスタートで出遅れ感のあったジャック・ホッブスは5ハロン地点でおかしくなり、馬が横を向いて走ることを拒否。結局ビュイック騎手が下馬してそのまま競馬場の厩舎に帰ってしまいました。大本命の大凡走を尻目に前の2頭を捉えたのは4番人気(17対2)のイクゾスフェア Exosphere 、シンプル・ヴァーズとのマッチレースを4馬身制しての逆転劇です。更に5馬身の大差が付いて逃げたビッグ・オレンジが3着。

これがG戦初勝利となるイクゾスフェアは、このレース4勝目となるサー・マイケル・スタウト厩舎、ライアン・ムーア騎乗の4歳馬。未だレース経験も浅く、成長途上と言うスタウト師得意の奥手タイプで、ここでは3着以内に入ることが目標だった由。陣営の想像以上に馬が成長しているということでしょう。
去年3歳にニューマーケットでデビューし6着、2戦目のリングフィールド(10ハロン)とドンカスターの一般戦(10.5ハロン)に連勝し、アスコットの10ハロン・ハンデ戦で4着。続いてサンダウンのハンデ戦(10ハロン)に勝ち、エアのリステッド戦(ドゥーンサイド・カップ)3着でシーズンを終えていました。今回はシーズン初戦。
ロイヤル・アスコットのハードウィック・ステークスに登録がありますが、エプサム・ダービー開催のコロネーション・カップ(GⅠ)に追加登録するかは再考するとのことでした。2着のシンプル・ヴァーズはコロネーションへ、3着のビッグ・オレンジはゴールド・カップを目指しますが、ジャック・ホッブスのゴスデン師は“ミステリアス”とコメントしたのみ。

 

 

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