ガリレオ・ゴールド、ギニー連覇成らず

さてアイルランドのレポートに入りましょう。結果は既に知れ渡っていると思いますから、ここはレース順に3鞍を紹介して行きます。
この日は生憎の悪天候で、雨が振りだして馬場は yielding の発表。その後も雨が降り続いたために2000ギニーが行われる頃には soft から heavy にもで重くなっていたようです。もちろん結果にも大きく左右してしまいました。

カラー競馬場の最初は短距離のGⅡ戦、グリーンランズ・ステークス Greenlands S (GⅡ、4歳上、6ハロン)。去年からGⅡに昇格してギニー開催をより盛り上げる形になりましたが、同じ日に既報の通りテンプル・ステークスが行われており、こちらの6ハロン戦とは棲み分ける様な形になりました。
1頭が取り消して7頭立てとなり、イーヴンの1番人気に支持されたのはG戦初挑戦ながら6戦無敗の快速馬ドント・タッチ Don’t Touch 。何しろこのレースはここ10年でイギリスからの遠征組が7勝しており、ドント・タッチも英国からリチャード・ファヘイ師が送り込んできた4歳馬。ファヘイ師は2009年にもアットモースト・リスペクト Utmost Respect でこのレースを制しており、ここは信頼できる本命と言えそうです。

ボルジャー厩舎の最低人気(18対1)のフライト・リスク Flight Risk が飛ばし、ドント・タッチも余り離されず先行グループを追います。しかし逃げ馬を追って伸びたのは5番人気(14対1)のモブスタ Mobsta と、4番人気(10対1)のディック・フィッティントン Dick Whittington 。3頭の叩き合いに持ち込まれましたが、ゴールではモブスタがフライト・リスクを頭差捉えて優勝し、半馬身差でディック・フィッティントンが3着でした。ドント・タッチは伸びず5着に終わり、4戦目にして初黒星。
英国から遠征した本命馬は敗れましたが、勝ったのはやはりイギリスのミック・シャノン厩舎、パット・スマーレン騎乗。今年も地元勢は2(ボルジャー)・3(オブライエン)着に終わっています。
モブスタは、これがG戦初勝利の4歳馬。今期初戦にドンカスターでカミッジ・トロフィー(リステッド)に勝ってG戦に初挑戦しましたが、アバーナント・ステークス(GⅢ)では9着に終わっていました。アイルランドでもフランスでも、英国ブランドのスプリンターを狙え、は馬券愛好家の合言葉でしょう。

そして波乱となったアイルランド2000ギニー Irish 2000 Guineas (GⅠ、3歳牡牝、1マイル)に行きましょうか。既に枠順を紹介したように、今年は英2000ギニー馬ガリレオ・ゴールド Galileo Gold が参戦したこともあって8頭立てとクラシックにしては小頭数。もちろんガリレオ・ゴールドが5対4の本命で、パーマー師も去年アイルランドでオークスを制しています。
4頭を出走させてきたエイダン・オブライエン軍団から、先ず5番人気(10対1)のエア・ヴァイス・マーシャル Air Vice Marshal がペースメーカーを演じての逃げ。ガリレオ・ゴールドも離れず内で先行していましたが、勝負所で包まれ、鞍上デットーリもこじ開けるのに手古摺っている様子。一方5番手からスムースに脚を伸ばしてきたのが3番人気(9対2)にまで上がってきていたアウタード Awtaad で、本命馬が漸く抜け出した時には既に遅く、英2000ギニー馬に2馬身半差を付ける完勝でした。更に4馬身4分の1もの大差が付いて、6番手から伸びた4番人気(7対1)のブルー・デ・ヴェガ Blue De Vega が3着。
惨めだったのは2番人気(4対1)で巻き返しが期待されたオブライエン厩舎のエース、エア・フォース・ブルー Air Force Blue で、スタートから掛かり気味。ライアン・ムーアが懸命に宥めて最後方から末脚を活かす構えでしたが、最後はバテた馬を1頭交わしただけの7着と又してもの惨敗。2歳チャンピオンの面影は完全に姿を消していました。陣営は雨が振りだした時点で取り消しを検討したようですが、最終的にはチャンスを与えた由。今後は短距離に路線変更することも考えているようです。

さて、勝ったアウタード。シェイク・ハムダン・アル・マクトゥーム氏の名前でオーナー登録されている馬で、今年83歳になる大ヴェテランのケヴィン・プレンダーガスト師の管理馬。騎乗した若手のクリス・ヘイズは、もちろんアイルランドのクラシック初制覇です。プレンダーガスト師は何と、1976年のノーザン・トレジャー Northern Treasure 以来40年振りとなる二度目の愛2000ギニー制覇。日本では公務員扱いの調教師が80歳を過ぎても現役と言うのはあり得ませんが、ヨーロッパではあくまでもライセンスを取得していれば開業できる自由業。この辺りに壮大なドラマが生まれる下地もあるのでしょう。
アウタードは、これが未だ5戦目。2歳時カラーの7ハロン戦でデビューして3着、続くレパーズタウンの7ハロン戦に初勝利してシーズンを終えます。今期はカラーの7ハロン一般戦で勝ち、前走がリステッドの2000ギニー・トライアルとなるテトラーク・ステークス(カラー、7ハロン)優勝。G戦も初めてなら、1マイルの距離も初体験でのクラシック馬誕生となりました。ダービーにも愛ダービーにも登録があり、ダービーのオッズは50対1から一気に16対1に上昇。一方マイルのGⅠ戦セント・ジェームス・パレス・ステークスには3対1のオッズが出されました。良馬場が期待されるアスコットで、重馬場も敗因の一つと思われるガリレオ・ゴールドと再対決するのが同馬にとっての試金石になるでしょう。
いずれにしても、次の目標を決めるのはオーナーの仕事。ダービーで1マイル半の距離に挑むのか、マイルの良馬場でスピードを試すのか、陣営にとっては悩ましくも楽しい日々が続くことになりそうです。ヘイズ騎手はこの1週間はクラシック制覇を夢見て眠れなかったとか。これがダービーになれば、それ以上のプレッシャーが掛かることは間違いありませんよ。

カラーの最後はランウェイズ・スタッド・ステークス Lanwades Stud S (GⅡ、4歳上牝、1マイル)。この古馬牝馬マイル戦も去年からGⅡに昇格されました。7頭が出走し、奇しくも去年の1000ギニー2着馬と仏1000ギニー2着馬が人気の上でも3対1で並びます。1000ギニー2着のルシーダ Lucida はアイルランドからボルジャー師が挑戦した馬で、仏1000ギニー2着のアイリッシュ・ルーキー Irish Rookie はイギリスからミアード師が遠征した馬。奇縁と言うべきでしょうか。この2頭はそのあとコロネーション・ステークス(GⅠ)で対決し、ルシーダ3着、アイリッシュ・ルーキー7着で英1000ギニー2着馬に軍配が上がっていました。
ここでも最低人気(20対1)のクイーン・カトリーヌ Queen Catrine が逃げ、ルシーダは4番手、アイリッシュ・ルーキーは5番手を追走。今回はアイリッシュ・ルーキーがライヴァルを競り落としましたが、2番手から伸びた3番人気(4対1)のデヴォンシャー Devonshire が2頭を上回り、アイリッシュ・ルーキーを2馬身抑えて優勝。4分の3馬身差で3番手を進んだ6番人気(10対1)のヒント・オブ・ア・ティント Hint of A Tint が3着に入り、ルシーダは4着に終わっています。

ウイリー・マクリーリー厩舎、ウイリアム・リー騎乗のデヴォンシャーは、ゴドルフィンのやはり4歳馬。こちらは愛1000ギニーの3着馬で、これがG戦初勝利。前走パーク・エクスプレス・ステークス(GⅢ)2着からのステップ・アップとなりました。陣営はアメリカ参戦に意欲を示しており、去年はカナダのGⅠ戦(E・P・テイラー・ステークス)に挑戦して7着に終わっていました。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください