エクサジェレイターの逆転劇

ケンタッキー・ダービーから中一週でのプリークネス・ステークス、日本では考えられないような三冠ローテーションですが、既に日本で報じられている通りエクサジェレイターの逆転劇で幕を閉じました。
アメリカ競馬、昨日の土曜日は5つの競馬場で合計8鞍のG戦が行われましたが、先ずピムリコ競馬場のクラシック・レースから始めましょう。

メリーランド州ピムリコ競馬場は一日中雨、メイン・コースは skoppy から muddy と泥田のような状態で行われました。プリークネス・ステークス Preakness S (GⅠ、3歳、9.5ハロン)は登録通り11頭が参戦し、ダービー馬で7戦負けなしのナイクィスト Nyquist が3対5の断然1番人気。
これまで本命馬と4度対戦し、徐々に成績を上げてダービーでは2着に詰め寄ったエクサジェレイター Exaggerator が5対2の2番人気に推され、他ではステークスそのものも初挑戦と言うプレッチャー厩舎の新星ストラディヴァリ Stradivari が8対1の3番人気で、他は単勝10倍以上の「オールソー・ラン also run」と見做されていました。ラニ Lani もその1頭で、オッズの30対1はその多大勢の中の1頭に過ぎません。
3番枠のナイクィストは好スタートからいつも通り先頭に立ちましたが、今回は一つ内枠のアンクル・リーノ Uncle Lino に終始絡まれてペースが速くなる展開。一時はアンクル・リーノが頭差抜け出す展開になりましたが、それでも捻じ伏せたナイクィストが先頭で直線。しかしこれを前半8番手、インコースから徐々に順位を上げていたエクサジェレイターが直線半ばで遂にナイクィストを外から交わします。
一旦交わされた大本命も再び外に持ち出してエクサジェレイターとの差を縮めに掛かりましたが、その分空いたインコースを衝いて5番人気(17対1)のチェリー・ワイン Cherry Wine が追い上げ、ゴールではエクサジェレイターがチェリー・ワインに3馬身半差を付ける完勝で二冠目を奪取。ハナ差でナイクィストは初黒星を喫し、以下半馬身差でストラディヴァリが4着に入りました。後方から追い込んだラニは5着で、その他大勢の中では最先着と健闘でしょう。因みに賞金は5着までで、5着は4万5千ドルです。
キース・デサーモ厩舎、ケント・デサーモ騎乗の兄弟コンビによるエクサジェレイターは、ダービーのトライアルとして優勝したサンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)も同じような泥んこ馬場での勝利。ナイクィストとの対戦は、お互いのデビュー戦で5着、BCジュヴェナイルは4着。3歳になってからはサン・ヴィセンテ(GⅡ)で2着に迫り、ケンタッキー・ダービーも2着で、遂にライヴァルを抜き去っての戴冠となりました。ナイクィストはここまでアメリカン・フェイロー American Pharoah を超える勢いで進撃を続けてきましたが、三冠の夢は残念ながら潰えています。

ここからはピムリコで行われた他のG戦をレース順に取り上げます。最初はメリーランド・スプリント・ステークス Maryland Sprint S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。7頭が出走し、GⅠ(カーター・ハンデ)馬のサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos が6対5の1番人気。
2番人気(2対1)のシンコー・チャーリー Cinco Charlie が逃げましたが、前半4番手から徐々に進出してきた3番人気(9対5)のオールウェイズ・サンシャイン Always Sunshine が抜け、2番手追走の4番人気(15対1)に2馬身半差を付けて優勝。更に2馬身差で最低人気(50対1)のロッキン・オン・バイ Rockinn On Bye が3着に食い込み、サリュートス・アミーゴスは5着に終わる波乱でした。本命馬はこれまで泥んこ馬場では7戦7勝と得意にしていましたから、敗因を馬場に求めるのは筋違いというものでしょう。
エドワード・アラード厩舎、フランキー・ペニントン騎乗のオールウェイズ・サンシャインは、これがG戦初勝利となる4歳牡馬。3歳時にローレル競馬場で6ハロンの一般ステークス(デイヴス・フレンド・ステークス)に勝っており、前走パークス・レーシングでのアローワンス戦に続き2連勝。3月にトム・フール・ハンデ(GⅢ)に挑戦した時はサリュートス・アミーゴスの2着でしたから、ここで雪辱を果たしたことになります。

続いては芝コースのギャロレット・ステークス Gallorette S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。雨にも拘わらず予定通り good の芝コースで行われ、1頭が取り消して11頭立て。全馬の最終オッズは不明ですが、ダート・コースのインサイド・インフォメーション・ステークス(GⅡ)で2着しているタイガー・ライド Tiger Ride が1番人気だったと思われます。
4対1(2番人気?)のジョスデザニモー Josdesanimaux が逃げ、2番手を追走していた9対2(3番人気?)のミズ・マネー Mizz Money が直線で抜けると、後方から追い込む70対1の伏兵ヴィールサーム Vielsalm と9対2のヒース Heath の猛追を頭・ハナの僅差で抑えてスリリングなレースを勝ち取りました。タイガー・ライドは8着敗退。
バーナード・フリント厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のミズ・マネーは、去夏アーリントンのパッカー・アップ・ステークス(芝GⅢ)に続いて二つ目のG戦勝利。今期は5戦、3月にはフェア・グラウンズの重馬場で一般ステークス(ニューオーリーンズ・レディーズ・ステークス)に勝っており、他に2着2回、3着1回と堅実に成績を残しています。

ピムリコ競馬場の最後に、これも芝コースのディクシー・ステークス Dixie S (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。5頭の取り消しがあって8頭立て。GⅠ馬のグランド・アーチ Grand Arch が2対1の1番人気。
これが芝コース初体験で最低人気(16対1)のエル・カビール El Kabeir が逃げましたが、ゴチャ付く直線で大外から一気に末脚を爆発させたのが3番人気(7対2)のテイクオーヴァ―・ターゲット Takeover Target 、4番手から伸びた2番人気(5対2)のGⅠ馬リング・ウィークエンド Ring Weekend に首差を付ける鮮やかな差し切り勝ちでした。半馬身差で2番手に付けていたグランド・アーチが3着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のテイクオーヴァ―・ターゲットは、これがG戦3勝目となる4歳牡馬。去年10月のベルモントで重馬場のヒル・プリンス・ステークス(芝GⅢ)に勝っており、渋った馬場を得意とするタイプでしょう。

他の4場は順不同で取り上げることとし、先ずアーリントン・インターナショナル競馬場では日本と提携しているハンシン・カップ・ステークス Hanshin Cup S (GⅢ、3歳上、8ハロン)が行われました。去年は7月18日の施行でしたが、本来は今の時期に行われる一戦。ポリトラック・コースに2頭が取り消して9頭立てとなり、去年の勝馬ミッドナイト・シーロ Midnight Cello が8対5の1番人気だったようです(この競馬場も最終オッズが不明)。
6対1のヴァリアント・シティー Valiant City 、10対1のワン・ゴー・オール・ゴー One Go All Go などが入れ替わり立ち代わりハナに立ちましたが、最後は後方から内を衝いて抜け出した最低人気(44対1)のトレース・クリーク Trace Creek が抜け出し、同じく21対1の伏兵フランソワ Francois に1馬身差を付ける大波乱となりました。4分の3馬身差でヴァリアント・シティーが3着。レースが終わると、放映画面に和太鼓の演奏が流れたのには笑ってしまいました。不思議な違和感も。
これがステークス初勝利というウイリアム・ヴァン・メーター厩舎、ジュリオ・フェリックス騎乗のトレース・クリークは、これまたG戦初勝利となる6歳牡馬。現厩舎に転ずる以前に、去年オークローン競馬場で行われた8.5ハロンの限定ステークス(アーカンソー・ブリーダーズ・ステークス)に勝っており、ステークスは2勝目となります。

ニューヨークのベルモント・パーク競馬場からはヴァグランシー・ハンデキャップ Vagrancy H (GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)。僅か5頭立ての寂しいメンバーとなり、前走ディスタッフ・ハンデ(GⅢ)からG戦2連勝を狙うポールアズシルヴァーライニング Paulassilverlining が1対5の圧倒的1番人気。
4番人気(11対1)ウエスト・コースト・チック West Coast Chick の逃げを4番手で追走した大本命、逃げ馬を外から捉えると、そのまま3馬身4分の1差を付けて期待に応えました。最後方から追い込んだ最低人気(18対1)のストーミー・スカイ Stormy Sky が3着。
ミシェル・ネヴィン厩舎、ホセ・オルティス騎乗のポールアズシルヴァーライニングは、2歳時にベルモントでメイトロン・ステークス(GⅡ)に勝ったほどの馬。4歳になっての2連勝を加え、三つ目のG戦タイトル獲得です。

2週前にダービーの舞台になったチャーチル・ダウンズ競馬場では、芝の長距離戦ルイヴィル・ハンデキャップ Louisville H (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)が行われました。1頭が取り消して6頭立て、一昨年カナダ国際(GⅠ)で3着の実績があるダイナミック・スカイ Dynamic Sky が8対5の1番人気。
5番人気(8対1)のワイアレス・フューチャー Wireless Future が逃げましたが、最初のスタンド前で後方2番手、向正面で3番手に押し上げた4番人気(5対1)のブーラーズ・アレー Bullards Alley が直線でも3番手の外から伸び、終始最後方から追い込む3番人気(4対1)のジョンズ・キッテン Johns Kitten を2馬身4分の1差に抑えての快勝。半馬身差で2番人気(9対5)のローマン・アプルーヴァル Roman Approval が3着に入り、ダイナミック・スカイは2番手追走も伸びを欠いて5着敗退。
ティム・グリンショウ厩舎、フランシスコ・トーレス騎乗のブーラーズ・アレーは、これがG戦初勝利となる4歳せん馬。3歳時にフェア・グラウンズで一般ステークス(ウッドチョッパー・ステークス、8ハロン)に勝って以来二つ目のステークス勝ちです。

最後はカリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場からコナ・ゴールド・ステークス Kona Gold S (GⅡ、3歳上、6.5ハロン)。去年は4月11日に行われており、一昨年までポトレロ・グランデ・ステークスと呼ばれていた短距離戦です。2頭の取り消しがあり8頭立て。前走オークローンでカウント・フリート・スプリント・ハンデ(GⅢ)を逃げ切ったサトル・インディアン Subtle Indian が4対5の1番人気。
そのサトル・インディアンが今回も飛ばし、後続を大きく引き離して直線。前半は好スタートの3番手から一旦5番手に控えていた2番人気(9対2)のワイルド・デュード Wild Dude が直線では内ラチ沿いギリギリを通って追い上げると、最後は本命の逃げ馬を1馬身捉えて優勝。3番手を追走した6番人気(14対1)のコーシャス・ジャイアント Cautious Giant が半馬身差の3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のワイルド・デュードは、去年ビング・クロスビー・ステークスと、サンタ・アニタ・スプリント・チャンピオンシップとGⅠ戦に2勝している実力馬。前走ロサンジェルス・ステークス(GⅢ)は今回最下位に終わったサン・オノフレ San Onofre の2着でしたが、これで3年連続のG戦勝で、通算5勝目のG戦タイトル獲得となりました。

 

 

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