本命馬に不運続く愛ギニー
前日の愛2000ギニーで本命ガリレオ・ゴールド Galileo Gold がアンラッキーな2着に終わったカラー競馬場、昨日は愛1000ギニーが行われました。
この日はG戦が3鞍、アイルランドではシーズン最初の古馬GⅠ戦のゴールド・カップも行われましたが、レース順に回顧して行きましょう。
この1週間雨が降り続いたカラー競馬場、馬場は soft にまで悪化して極めて力の要る馬場。取り消しもかなり多く出て、これが結果にも大きく左右したようです。これによって恩恵を受けた馬もいれば、能力を削がれた馬もあったでしょう。しかしそれが競馬というものです。
日曜日最初のG戦は、クラシックのアイルランド1000ギニー Irish 1000 Guineas (GⅠ、3歳牝、1マイル)。枠順発表では14頭を紹介しましたが、その中から4頭が取り消して10頭立て。有力候補ではメイ・ヒル・ステークス馬で1000ギニー6着のターレット・ロックス Turret Rocks が回避しました。
枠順紹介でも記したように、オブライエン厩舎は当初ここはバリードイル Ballydoyle に任せ、英ギニー戴冠のマインディング Minding はオークス直行という青写真を描いていました。ところが直前になってバリードイルの血液反応が悪く、急遽マインディング出走に踏み切ります。意外な展開になりましたが、ニューマーケットでの強さから4対11の圧倒的1番人気に支持されたのは当然だったでしょう。
取り消しが多数出たためオッズは見直され、デリンスタウン・スタッド・1000ギニー・トライアル(GⅢ)に勝ったナウ・オア・ネヴァー Now Or Never が7対1で2番人気、レパーズタウン・1000ギニー・トライアル(GⅢ)の勝馬ジェット・セッティング Jet Setting も9対1で3番人気に上がります。あとは単勝10倍以上。
馬場が極端に重くなったこともあり、good (稍重)のニューマーケットではスピードに乗り切れなかった感のあるジェット・セッティングが逃げ、マインディングは4番手から。大本命も馬場を意識して残り2ハロンでは逃げ馬に並び掛けましたが、思うようには交わせません。最後の2ハロンは2頭の完全なマッチレースとなり、一旦は交わされたかに見えたジェット・セッティングが再び盛り返し、ゴールでは頭差でマインディングを破る大金星です。
3着は10馬身も離され、7番手から追い上げたナウ・オア・ネヴァー。人気上位の3頭が1着から3着までに入ったので順当な結果には違いありませんが、マインディングのギニー連覇が阻まれたのはショッキングな結果と言えるでしょう。4着は8番人気(33対1)のツァーボ Czabo 、5着に9番人気(40対1)のクール・サンダー Cool Thunder 。
先に敗れたマインディング陣営ですが、スタートする前のゲート内で頭を激しく打ち付けるアクシデントがあり、鼻から出血した程でした。これがレースにどの程度影響したのかは判りませんが、良い方向に作用したとは思われません。加えて極端な重馬場、突然の出走により調整過程が順調だったは言えないでしょう。
それでも大接戦の2着、3着以下を10馬身千切ったマインディングの実力は相当なものと評価すべき。陣営では予定通りオークスに向かうとのことですが、レース間隔がタイトになることは間違いありません。各ブックメーカーも2倍を切るオッズだったものを11対8から11対10程度、即ち単勝2点何倍かに下げています。1強から一転、他の馬にも逆転の可能性が出てきた今年のオークスになりそうです。
さて勝ったジェット・セッティング、4月10日のレパーズタウン・1000ギニー・トライアル(GⅢ)は今回と同じような極端な重馬場での逃げ切り勝ち。その時の2着もナウ・オア・ネヴァーでしたから、正にトライアルの再現でした。この時のプロフィールにも詳しく書きましたが、管理するエードリアン・キールティ―師は開業2年目。騎乗したシェーン・フォリ―は雨の1週間を小躍りするような気持ちで待っていたそうで、「ドリーム・カム・トゥルー」の心境です。
前回も書いたように、同馬は2歳までリチャード・ハノン厩舎に所属していましたが、キールティー師が1万2千ギニーで購入したもの。1ギニーは凡そ1ポンドに相当しますから、円に換算すれば200万円程度でしょうか。ニューマーケットの1000ギニーにも追加登録して参戦しましたが、彼女には good(日本なら稍重)でも固過ぎたようで、9着敗退。それでもめげずにカラーには3万ポンド(日本円なら500万円弱)の追加登録料を支払って挑み、1着賞金17万1千ユーロをゲットしました。
因みにアイルランドの通貨はユーロで、日本円に換算すれば2千100万円相当。安価な転売価格、高価な追加登録料を支払っても充分ペイしたことになります。もちろん管理費用は別途ですが・・・。
4月11日のブログでも少し触れたように、ジェット・セッティングの牝系は所謂「サラ系」。ブリティッシュ・ブラッドという初版の血統書には記載されていなかった血脈ですが、ロジユニヴァースやメジャーエンブレムで日本にも縁のあるファミリー。何れプロフィールで詳しく紹介する予定です。
続いて行われたのはガリニュール・ステークス Gallinule S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。オブライエン厩舎の独占が続くダービー、愛ダービーのトライアル戦ですが、2頭が取り消して5頭立て。その内3頭を占めるオブライエン厩舎の馬たちが人気でも上位3頭を独占し、中でもG戦に5戦連続出走となるビーコン・ロック Beaco Rock が9対10の断然1番人気。
レース内容も一方的で、重馬場も手伝ってビーコン・ロックの逃げ切り勝ち。2馬身差で4番手を進んだ最低人気(25対1)で出走馬中唯一の牝馬サンタ・モニカ Santa Monica が2着に食い込み、4分の3差で2番手追走の4番人気(14対1)フォックストロット・チャーリー Foxtrot Charlie が3着。
ライアン・ムーアが選択したビーコン・ロックは、2戦目にカラーの1マイルで初勝利。その後はベレスフォード・ステークス(GⅡ)3着、オータム・ステークス(GⅢ)2着と続き、3歳になってからもバリーコーラス・ステークス(GⅢ)3着、デリンスタウン・スタッド・ダービー・トライアル(GⅢ)4着と4着以下無し。ここで2勝目、G戦初勝利となりました。
父はガリレオ Galileo 、ガリレオはこのレース3連覇でもあります。
最後はトトソルズ・ゴールド・カップ Tattersalls Gold Cup (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン110ヤード)。当初8頭が登録していましたが、ここ9戦全てGⅠ参戦のザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby を含む2頭が取り消して6頭立て。5月2日のムーアズブリッジ・ステークス(GⅢ)上位3頭の再戦という構図となり、勝ったファウンド Found (オブライエン/ムーア)が8対15の1番人気。前走3着だったファシネイティング・ロック Fascinating Rock も叩き2戦目の効果が期待されて9対4の2番人気で続きます。
ムーアズブリッジを再現するように3番人気(8対1)のサクセス・デイズ Success Days が逃げ、ファシネイティング・ロックは2番手を追走し、ファウンドは後方から。今回は重馬場と叩かれ良化もあってファシネイティング・ロックが本命をリードし、ゴールでは3馬身4分の3差での雪辱。前回は2頭の間に割って入ったサクセス・デイズが、今回は1馬身半差で3着でした。何のことはない、ムーアスブリッジとは着順が微妙に入れ替わっただけ。
デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のファシネイティング・ロックは、昨秋のチャンピオン・ステークスでもファウンドを1馬身差で破っており、GⅠ戦は2勝目。従ってチャンピオン・ステークスと同じ結果だったことになります。
通常の感覚では、次走はロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス(GⅠ)ということになりましょうが、ウェルド師はアスコット参戦は否定的。春は2戦使ったのでこの後は休養し、夏の終わりに一叩き(ロイヤル・ホイップか)してから愛チャンピオン→凱旋門賞を目指す由。スピードのあるステイヤーで、1マイル半は充分に克服できる範囲と見ています。
去年の凱旋門賞はゴールデン・ホーン Golden Horn が優勝し、ひのゴールデン・ホーンをBCターフで破ったのがファウンド。更にファウンドを2度に亘って破ったのがファシネイティング・ロックなのですから、単純に考えれば今年の凱旋門賞はファシネイティング・ロックという見方も出来ましょう。
余り人気にはならないタイプですから、仮に私がブックメーカーなら、この馬を凱旋門賞の本命にしますね。血統的にはエピファネイアやリオンディーズに近い牝系。日本ダービーも何となく匂う様な気がしませんか。
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