ギルバートのマルティヌー快演

放送音楽

アラン・ギルバートが指揮したN響の12月定期、もう一つのコンサートを見ました。BS2が国会中継のために中止(延期?)になり、ハイビジョンで放送されたもの。
曲目はベートーヴェンのコリオラン序曲とピアノ協奏曲第4番、メインはマルティヌーの交響曲第4番。何といってもマルティヌーが演奏されるのが注目で、N響では珍しく聴きに行きたい、と思ったコンサートです。

エロイカのときと同様、対抗配置。メインがマルティヌーでもこのスタイルということは、ギルバートはずっと対抗配置で通すんでしょうかね。ニューヨークでもそうかしら?

最初のコリオラン、気合が入ってましたが、楽譜と首っ引き状態で、あるいは普段のレパートリーじゃないのかも知れません。無難なスタート。

ピアノ協奏曲でのソロは、サイモン・クロフォード・フィリップスという若い男性。時間を節約するために録画を早送りしたので、テロップに出た経歴紹介を見落としました。見終わってから速攻で消去したので、どういう人か判りません。

スタインウェイを弾いているのですが、何とも頼りないピアノですね。ピアノというよりチェンバロみたい。放送でも音がよく聴こえませんでしたから、ナマではどうだったんでしょうねぇ。感心しません。
第2楽章などはギルバートのテンポを完全に無視して、一人悠然と弾いている。指揮者はエロイカでも取ったように、速目の推進力を重視したテンポなのに、全く合わせる気持ちが無い様子。パウゼも気が抜けたよう。N響ともあろうものが、どうしてこんなソリストを起用したんでしょうか。これなら日本の若手を積極的に登用した方がずっといい。

カデンツァは第1・3楽章ともベートーヴェン自作。第1楽章は大きい方。ミスタッチも目立ちました。

気を取り直してマルティヌー。これは期待通り、楽しめました。第4交響曲はマルティヌーのシンフォニーでは比較的よく演奏されていて、N響でもビエロフラーヴェクやサヴァリッシュも取り上げていましたっけ。ビエロフラーヴェクは日本フィルでもやりましたし、トゥルノフスキーという隠れ巨匠が群馬でもやっていたはず。
マルティヌーが交響曲に手を染めたのは比較的遅く、ナチの追っ手から命からがら逃れ、アメリカに亡命してからのこと。オーケストラ手法は既に円熟していて、1番から6番までどれも名曲だと思います。確か毎年1曲のペースで作曲したはず。そろそろ全曲連続演奏会をやってもよい作曲家ですよね。誰かやらんかな。

ギルバートも作品をシッカリ手の内に入れているようで、特に後半の3・4楽章は説得力がありました。
不満も無かったわけではなく、例えば第1楽章は2部構成ですが、最初のポコ・アレグレットと続くポコ・アレグロの対比がやや不明確。テンポにあまり差をつけなかった故でしょうか、第2部の弦楽合奏が醸し出す祖国チェコへの強い憧れが若干弱く感じられましたね。

また第2楽章スケルツォでは、トリオに入る部分で楽譜通り休止を入れなかったために、トリオを開始するイングリッシュホルンの懐かしい感情が聴き取れません。スコアに指定はないけれど、このテンポならややパウゼを置いた方が効果的だったのでは?

ま、それは些細なことで、ギルバートが指揮すればN響も素晴らしい音楽を奏でます。プレヴィンやらサンティなどのかったるい老匠に頼らず、もっと若手をどんどん使って欲しいですよね。
この回、マルティヌーだけはナマで聴きたかった。

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