2016ロイヤル・アスコット4日目
今年のロイヤル・アスコットも4日目、馬場は前3日間より乾いて good to soft にまで回復しましたが、それでも重馬場を苦手とする馬には厳しいレースが続いているようです。“馬場が固ければ勝ったはず”という関係者のコメントも多く聞かれました。
6月17日もこれまで同様G戦が4レース続き、後はハンデ戦とリステッド戦。
第1レースのアルバニー・ステークス Albany S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)は16頭立て。無敗馬は7頭でしたが、デビュー戦4着のあとナースで2連勝してきたオブライエン厩舎・ムーア騎乗のカフ Cuff が2対1の1番人気。
1戦1勝の1頭で6番人気(12対1)のキルマー Kilmah が逃げましたが、スタートで出遅れ、スタンド側を追走していた7番人気(16対1)の1頭ブレイヴ・アンナ Brave Anna が追い込み、スタンドから遠い側を抜けてきた同じ7番人気のブレッチリー Bletchley との一騎打ち。激しい叩き合いの末、短頭差でブレイヴ・アンナが抜けていました。半馬身差でスタンド側の後方から追い込んだジョイント3番人気(13対2)のクイーン・カインドリー Queen Kindly が3着、カフも先行馬群に付けていましたが、最後の伸びを欠いて5着まで。
勝ったブレイヴ・アンナは、本命馬と同じエイダン・オブライエン厩舎で、これがロイヤル・アスコット3勝目となるシーミー・ヘファーナン騎乗。厩舎の2番手でした。ナースのデビュー戦(5ハロン)は8着でしたが、前走カラーの6ハロンで初勝利を挙げ、これが3戦目。全兄にBCジュヴェナイル・ターフに勝ったヒット・イット・ア・ボム Hit It A Bomb がおり、1マイルは問題なさそう。来年の1000ギニーに16対1のオッズが出ました。
なお最後の叩き合い、1・2着の両騎手ともムチの過剰使用により騎乗停止処分が課せられました。ヘファーナンには9日間、2着のオイジン・マーフィーは4日間。また3着に来たクイーン・カインドリーは、あのフランケル Frankel の初産駒として今後も人気になりそうな1頭です。
続いてはアスコット・ダービーで知られるキング・エドワード7世ステークス King Edward Ⅶ S (GⅡ、3歳牡せん、1マイル4ハロン)。9頭が出走し、ダービー出走組を抑えてオブライエン/ムーアのビーコン・ロック Beacon Rock が7対2の1番人気。前走ガリニュール・ステークス(GⅢ)の勝馬で、愛ダービーというよりもセントレジャー・タイプでしょう。
そのビーコン・ロックがスタートから積極的に逃げ、2ハロン行った所でテンポを上げてスタミナを試す作戦。これを内で先行していたジョイント4番人気(7対1)のアクロス・ザ・スターズ Across The Stars が残り2ハロンで外に出し、粘るビーコン・ロックを1馬身4分の1差し切っての逆転勝ちです。最後はムーアとデットーリの叩き合いでしたが、ここはデットーリが制してリーディング争いに一歩リード。頭差で後方から追い込んだ7番人気(10対1)のムンタハー Muntahaa が3着。最後の脚色はこの馬が最も目立ったので、これもセントレジャー候補でしょう。
勝馬を管理するサー・マイケル・スタウト師は、これがロイヤル・アスコット74勝目で、歴代トップのサー・ヘンリー・セシル師の75勝にあと一つと迫りました。前走ダービーは10着に敗れていたアクロス・ザ・スターズ、これがG戦は初勝利です。しかしスタウト師はセントレジャーのスタミナについては懐疑的で、結論を出すのは未だ早いとコメント。古馬の調教に定評あるスタウト師ですから、先を見据えた判断になるでしょう。
第3レースは、去年新設されたコモンウェルス・カップ Commonwealth Cup (GⅠ、3歳、6ハロン)。この時期に3歳馬限定の短距離GⅠ戦というのは実に良いアイディアだと思います。2頭が取り消して10頭立て。牝馬ながらトライアルを連勝して4連勝中のクワイエット・リフレクション Quiet Reflection が7対4の1番人気。
逃げ争いから抜け出したのはジョイント7番人気(14対1)のカチー Kachy 、クワイエット・リフレクションはこれを3番手で追走。最後の追い比べでカチーが大きく左に寄れる中、残り1ハロンで2番手に上がった本命馬が、最後の150ヤードでカチーを捉えて堂々人気に応えました。追い込んだ5番人気(8対1)のワシントン・ディーシー Washington Dc が半馬身差で3着。
クワイエット・リフレクションは今期、シャンティーでシジー賞(GⅢ)、ケンプトンでサンディー・レーン・ステークス(GⅡ)とトライアルを連勝し、去年終戦のコーンウォーレス・ステークス(GⅢ)を含めてG戦4連勝でGⅠ初制覇。通算成績も7戦6勝で、2戦目のラウザー・ステークス(GⅡ)5着が唯一の敗戦です。
管理するカール・バーク師はロイヤル・アスコット初勝利で、英国のGⅠ戦も初勝利。また騎乗したダギー・コステロは障害の騎手として長年活躍してきた人で、1年半前に平場騎手に転向したという変わり種。競馬最高の舞台であるロイヤル・アスコットでGⅠ戦に勝つことが出来たのも、主戦に選んでくれたバーク師のお蔭と、感謝すること頻りでした。
同世代の最強スプリンターの地位を確立したクワイエット・リフレクション、今後は古馬との対戦で真価を問われることになるでしょう。
最後はコロネーション・ステークス Coronation S (GⅠ、3歳牝、1マイル)。英愛仏の2000ギニー馬が勢揃いしたセント・ジェームス・パレスとは異なり、3か国の1000ギニー馬から参戦してきたのは愛1000ギニー馬のジェット・セッティング Jet Setting のみ。英マインディング Minding はオークスに向かって二冠を達成し、仏ラ・クレソニエール La Cressonniere は日曜日の仏オークスで二冠を目指します。13頭が参戦してきましたが、やはりクラシックを制したジェット・セッティングが9対4の1番人気に支持されていました。
人気のジェット・セッティングは先行馬、ここも逃げてレースを作ります。スタートでは大きく外に膨れて後方を追走していた4番人気(6対1)のケマー Qemah が1マイル地点では落ち着いて馬群に取り付き、後方待機で包まれながらも抜け出した2番人気(4対1)のネモラリア Nemoralia に1馬身4分の3差を付ける快勝。短頭差で5番人気(8対1)のアリス・スプリングス Alice Springs が後方2番手から追い上げて3着、ジェット・セッティングは6着同着に敗退してしまいました。敗因は前走の疲れがあったのか、フケ(発情)ではないか、ということです。
勝ったケマーはフランスからジャン=クロード・ルジェ師が送り込んだ馬で、師は去年のエルヴェディア Ervedya に続く2連覇。コロネーションの2連覇が子供の時の夢だったというルジェ師、現実になったことに本人も驚いています。騎乗したグレゴリー・ブノアはロイヤル・アスコット初勝利で、これも夢の実現。
アル・シャカブが所有するケマーは、前走仏1000ギニーで3着。この時のレース振りからコロネーションに照準を合わせてきました。今期初戦はグロット賞(GⅢ)に勝っており、2歳最後のマルセル・ブーサック賞でも3着していた実力馬。GⅠを制するに相応しい実力の持ち主と言えるでしょう。
この日の第5レースは、デューク・オブ・エディンバラ・ステークス(ハンデ戦、1マイル4ハロン)。19頭立てで4番人気(8対1)のキネマ Kinema が優勝し、1番人気(9対2)のエリート・アーミー Elite Army が2着。ベケット厩舎、フラン・ベリー騎乗。
最終レースのクィーンズ・ヴァース(リステッド戦、2マイル)は数年前まではG戦だったレース。18頭が参戦し、オブライエン/ムーアの馬が本命になりましたが4着。勝ったのは同じオブライエンでもオダナヒューが騎乗した12番人気(33対1)のソード・ファイター Sword Fighter という波乱でした。
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