2016ロイヤル・アスコット千穐楽(5日目)

火曜日から行われてきた今年のロイヤル・アスコット、昨日の土曜日6月18日がグランド・フィナーレでした。それにしても絵に描いたような展開、正に事実は小説よりも奇なり、という劇的なフィナーレです。
最終日のG戦は2鞍のみ。第3レースと第4レースですが、先ずここから行きましょう。この日の馬場は4日目と同じ good to soft 。

先ず第3レースのハードウィック・ステークス Hardwicke S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)は、サー・マイケル・スタウトがここ10年では6勝しているお得意レースで、師は今年も2頭を出走させてきました。1頭が取り消して8頭立て、6対4の1番人気はスタウト厩舎、ライアン・ムーアが選んだイクゾスフェア Exosphere 。ギニー開催のニューマーケットでジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)に勝った4歳馬で、コロネーション・カップ参戦も噂されていましたが、予定通りアスコットに照準を合わせてきました。
5番人気(9対1)のアルモドーヴァー Almodovar が逃げ、イクゾスフェアは中団から。4番手を進んだジョイント2番人気(6対1)のハイランド・リール Highland Reel が抜けて一旦先頭に立ちましたが、中団から伸びたのは本命イクゾスフェアではなく、同じスタウト厩舎の6番人気(10対1)ダートマウス Dartmouth 。最後は2頭のマッチレースになりましたが、頭差で外のダートマウスが接戦を制しました。3馬身4分の1差でアルモドーヴァーが3着に逃げ粘り、イクゾスフェアは伸びを欠いて8着敗退。レース後直ぐに審議のサイレンが鳴り関係者をヤキモキさせましたが、結局は入線通りで確定しました。

その関係者とは管理するサー・マイケル・スタウト、フランスから遠征して騎乗したオリヴィエ・ペリエ、そしてオーナーの90歳になられたエリザベス女王陛下。スタウト師はハードウィック10勝目となり、遂にサー・ヘンリー・セシル師の持つロイヤル・アスコット75勝に並びました。気の遠くなるような数字です。
エリザベス女王が自身の所有馬でロイヤル・アスコットで優勝するのは23勝目。いつもは優勝カップのプレゼンターを務める女王、このレースでは受け取る側に回り、ベアトリス王女から杯を受け取りました。ロイヤル開催の最終日で産まれた劇的な瞬間です。
勝ったダートマウスは今期、チェルムスフォードのポリトラックに変更されたジョン・ポーター・ステークス(GⅢ)、チェスターのオーモンド・ステークス(GⅢ)とGⅢ戦を連勝し、これでG戦3連勝。キングジョージでのGⅠ初制覇を検討することになるでしょう。

ロイヤル・アスコット最後のG戦は、ダイアモンド・ジュビリー・ステークス Diamod Jubilee S (GⅠ、4歳上、6ハロン)。1頭が取り消して9頭立てとなりましたが、正に国際レースの雰囲気。地元英国はもちろんのこと、アメリカからは去年の勝馬アンドラフテッド Undrafted が、フランスからはロホー厩舎のサインズ・オブ・ブレッシング Signs Of Blessing がペリエ騎乗で、香港からはゴールド=ファン Gold-Fun がスミオン騎乗で、そしてオーストラリアからは快速馬ホラー Holler が参戦する大混戦。日本からの参戦が無いのは何とも残念です。
そんな中で3対1の1番人気に支持されたのは、英国ヒルズ厩舎、デットーリ騎乗のマジカル・メモリー Magical Memory 。今期アバーナント・ステークス(GⅢ)、デューク・オブ・ヨーク・ステークス(GⅡ)と連勝し、3連勝で頂点GⅠを目指す4歳馬です。

逃げたのはフランスから遠征してきた最低人気(25対1)のサインズ・オブ・ブレッシングでしたが、馬場が合ったのか最後まで末脚は衰えません。そこに前半3番手を進んでいた3番人気(7対2)のトゥワイライト・サン Twilight Son 、先行から伸びる香港の4番人気(7対1)ゴールド=ファン、そして後方からはスタンド側を衝いて本命マジカル・メモリーが襲い掛かり、4頭が一線でゴール。写真判定の結果、スタンドから最も遠いコースを通ったトゥワイライト・サンが、中のゴールド=ファンに首差を付けて激戦を制しました。短頭差でサインズ・オブ・ブレッシングが3着に粘り、本命マジカル・メモリーは4着。
去年の覇者アンドラフテッドは6着、豪州のホラーは7着でした。

勝ったトゥワイライト・サンは、ヘンリー・キャンディー厩舎、ライアン・ムーア騎乗。キャンディー師は1979年以来のロイヤル・アスコット勝利となり、ムーアはこの日の第1レースと第2レースに続いてハット・トリック達成です。
去年のベットフレッド・スプリント・カップ(GⅠ)に勝ち、アスコットのブリティッシュ・チャンピオンズ・スプリント(GⅠ)は2着だったトゥワイライト・サン、今期は前走デューク・オブ・ヨーク・ステークスから始動して5着でしたが、見事にマジカル・メモリーに雪辱を果たしてのGⅠ戦2勝目となりました。

以上が最終日のG戦ですが、前後に行われた4鞍も簡単に。
第1レースの13頭立てで行われたチェシャム・ステークス(リステッド、2歳、7ハロン)は、オブライエン/ムーアのチャーチル Churchill が8対11の1番人気に応えて優勝。ムーアは開催リーディング争いでデットーリと並びます。
第2レースはウルファートン・ハンデ(リステッド、4歳上、1マイル2ハロン)。15頭立てでしたが、これもオブライエン/ムーアの4番人気(7対1)サー・アイザック・ニュートン Sir Isaac Newton が優勝し、4対1の本命ベスト・オブ・タイムズ Best Of Times は6着。

第5レースがワーキンガム・ステークス(ハンデ、3歳上、6ハロン)。28頭立てで、優勝は4番人気(10対1)、カウエル厩舎・ハーレー騎乗のアウトバック・トラヴェラ― Outback Traveller 。ジョイント1番人気(7対1)の2頭、ブランド Brando は2着、ザ・ハッピー・プリンス The Happy Prince (オブライエン/ムーア)は15着と夫々敗退。
最後のクィーン・アレキサンドラ・ステークス(条件戦、4歳上、2マイル5ハロン159ヤード)も18頭立て。ジョイント1番人気の2頭が共に敗れ、勝ったのは6番人気(12対1)のコミッションド Commisioned でした。エリオット厩舎、カービー騎乗。初日・2日目とGⅠ戦に連勝したアダム・カービーは、今年の記念すべきロイヤル・アスコットを有終の美で飾りました。

以上の結果、リーディング・ジョッキー争いは6勝のライアン・ムーアに軍配。最終日の3勝が勝利を決定的にしました。ムーア騎手はこのタイトル6度目。
一方、リーディング・トレーナーは、文句無くエイダン・オブライエン師。初日1勝、二日目ゼロと低調なスタートでしたが、3日目から5日目まで連日のダブルで、通算7勝。2年連続7度目のタイトル獲得です。2008年の6勝を上回り、7勝は自己最高も更新しました。

 

 

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