クァルテット・エクセルシオのベートーヴェン・サイクルⅤ

例年より1週間長い今年のサントリーホール、チェンバー・ミュージック・ガーデン。アジアに焦点を当てた2016年の目玉は、6月5日からスタートしたクァルテット・エクセルシオのベートーヴェン・サイクルです。
それも昨夜、6月18日に無事グランド・フィナーレを迎えました。中3日乃至4日のペースで続けられてきたベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会、最終回は残る3曲でした。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第3番ニ長調作品18-3
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2「ラズモフスキー第2番」
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132

毎回初期・中期・後期からバランスよく選曲し、調関係にも配慮を巡らせたエク版のツィクルス、最後はシャープ2つの第3番、シャープ一つのラズモ第2を前半。後半はシャープでもフラットでも無いイ短調の15番で全体を締め括ります。3曲の5度関係は明らかでしょう。
最初にプログラム全部を眺め、作品132が最後に置かれていることに真っ先に納得しました。そう、ベートーヴェンが腸カタルに苦しんだ時期を挟み、「病癒えし者の神への聖なる感謝の歌」と第3楽章冒頭に書き付けられた言葉は、ご存知の様に9か月の療養を終えたファースト西野にとっても我が事と感じられたはず。
恐らくエクが最初に全体のプログラムを検討した際、132で終えようと決意したことは間違いありません。

最終日、ということで客席にはエクを敬愛するファンが集結、冒頭の3番から偉業達成を見守る暖かい目が舞台に集中。ここまで来ればゴールは間近、これまでのスタイルを信念を以て貫き、一音一音シッカリと弾いていく4人の姿がありました。
もちろん疲れもあったでしょう。それを聴き手には感じさせないまま、ラズモ2番に突入。得意の曲目で常設クァルテットの力量を十二分に発揮します。

後半は愈々第15番。特にあの第3楽章の集中感は、初めてクァルテット・エクセルシオを聴いた耳にも感動を以て受け入れられたはず。最大の山場を終え、後はフィナーレに向かって突っ走るだけ。マーチ風の第4楽章の最後では西野の全身全霊が籠められたソロ、そしてアレグロ・アパッショナートの第5楽章も惜しまれつつ終結を迎えました。

全曲を終え、満面笑みの4人には偉業を労う大歓声と盛大な拍手、スタンディング・オヴェーション。遂には滅多にない4人の抱き合う姿、手を繋いで客席に応えるパフォーマンスも。流石のエクもここでは羽目を外し、感極まったのではないでしょうか。
ファースト/西野ゆか、セカンド/山田百子、ヴィオラ/吉田由紀子、チェロ/大友肇に改めて賛辞と、感謝を捧げましょう。

演奏終了後は、特別にホワイエに設けられたセットでのサイン会。更には別途慰労会なども行われたようですが、ここでは触れますまい。
2017年の2月から8月に改修に入るサントリーホール、来年のチェンバー・ミュージック・ガーデンは9月に10日間、例年より短い開催となる由。現時点で詳しいスケジュールは発表されていないようですが、ベートーヴェン・サイクルは行われるのでしょうか。
少なくとも6月サントリーホールでのベートーヴェンはありませんが、そこはそれ、鶴見のサルビアホールがしっかりとベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏を企画してくれています。担当はロータス・カルテット、6月8・9・12・13・14日の5日間、ほぼ時系列での演奏になる予定。室内楽ファンは今からカレンダーをチェックしておくように。

そしてエクはガーデンが終わると、直ぐにドイツ。こちらも終了後、ゆるゆるとレポートして行く予定です。
最後にベートーヴェン全曲マラソンを完聴した皆様、お疲れ様でした。加えて合間を縫いながら鶴見のショスタコーヴィチ全曲にも通ったファンは、小生も含めてクタクタでしょう。こんな無茶、二度としないように!

 

 

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